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王子敗北宣言
損得くっきり買収劇
北越製紙に敵対的な株式公開買い付け(TOB)を仕掛けている王子製紙は、九月四日のTOB期限を待たず、事実上の「敗北宣言」に追い込まれた。日本の大企業で初めて−と注目された王子の敵対的TOBは、三菱商事や日本製紙グループ本社が北越の防衛に途中参戦し、波乱の展開をたどった。王子が北越の買収を表明してから一カ月余。関係者の損得勘定はくっきりと分かれた。 (経済部・丸山秀人、桐山純平)
■アンチ王子
「北越が“アンチ王子”になってしまったのは残念で不本意だが、結果は甘受せざるを得ない」−。東京都内で二十九日、記者会見した王子の篠田和久社長は、苦悩に満ちた表情で語った。
北越との統合には、高い生産効率を誇る北越の新潟工場の最新設備を手中に収めたうえで、王子の老朽化した設備の廃棄を進める狙いがあった。
王子はそこで七月三日に北越に経営統合をひそかに提案。同二十三日には北越に対するTOBの実施を表明。八月二日にはTOBを開始した。
ところがここで大きな誤算が生じた。三菱商事とともに日本製紙がTOB阻止に動き、「北越買収は独占禁止法に違反する」と大王製紙が公正取引委員会に上申書を提出するなど、王子は業界内で孤立した。特に、北越を日本製紙の側に追いやってしまったのは将来、大きな痛手になりそうだ。
手っ取り早く生産効率を上げるためのTOBの失敗で王子は逆に時間をロスし、早急に古い製造機械を自力で最新鋭機械に置き換えざるを得ないはめに陥った。設備更新の遅れは今後の競争力に直結しかねない。
半面、情報技術(IT)など新興企業の専売特許でもあった敵対的TOBに老舗企業が踏み切ったことは、市場関係者を中心に評価を受けている。一連の報道で知名度を高めたのも確かだ。
■独立性は低下
「九月四日まで気が抜けない。簡単にあきらめるとは思えない」。北越経営陣の一部では、王子の撤退宣言をにわかには信じられないものの、とりあえずは目の前の敵を振り払い、安堵(あんど)感に包まれている。
だが、王子の経営統合案を退けても北越が目指した「自主独立経営」の維持は逆に難しくなったとの見方もある。
買収防衛のため三菱商事や日本製紙を安定株主として迎え入れたことで、北越は大きな「借り」をつくる結果になったためだ。
三菱商事と日本製紙は今後、北越との間で本格的な提携協議に入る。特に、三菱商事は市場価格より安い六百七円で北越株(24・44%)を購入した上に製紙ビジネス拡大のチャンスで「買収劇で最も得をした」(大和総研の安藤祐介シニアアナリスト)とみられる。
■抱えるリスク
一方、日本製紙は北越との提携で王子との差を縮めたいところ。ただし、日本製紙の北越株(8・85%)の平均取得価格は、王子のTOB価格八百円より高い八百十三円。TOB表明前の六百円台まで北越株が下がれば多額の含み損を抱える。
こうしたリスクをはらんでいるため、日本製紙が北越に見返りのプレッシャーを強める可能性もある。「(日本製紙は)外資系証券をアドバイザーにつけた。タダでは終わらないだろう」と北越内でもすでにささやかれている。
「敵(王子)の敵(日本製紙)が北越の味方になったが、今度は敵になるかもしれない」とある証券アナリストは指摘する。北越争奪戦の第一幕は終わりを告げつつあるが、すでに第二幕の様相を呈し始めている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060830/mng_____kakushin000.shtml