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村上ファンドの事件は、わが国のファンド(投資事業組合)税制のあり方にも大きな問題を投げかける。日銀総裁の購入したファンドは、我々が金融機関の窓口で購入できる投資信託等とは異なり、関係者が資金を出資して共同事業を営む合意をすることにより成立する。そしてその課税方式は、組合そのものには何ら課税されず、共同事業者である出資者に直接課税されることになる。これを、パススルー課税という。
したがって、事業で収益が出た場合には、そのつど投資家に直接帰属することになり、投資家がファンドの性格に応じ株式譲渡益・配当所得・雑所得等として税務申告をする義務を負う。
問題は、そのような税が適切に申告・執行されているかどうか担保する制度が十分ではないことである。組合の一種である有限責任事業組合(日本版LLP)については、組合自身に計算書の提出義務があるのでファンドの投資家情報も把握できるが、任意組合・匿名組合を通じた投資にはそのような義務が課せられておらず、税務当局にとってはブラックボックスである。
米国では、同様な制度としてパートナーシップがあるが、これに対しては所得や財産の状況、構成員の氏名等を内容とした資料情報制度が整備されている。税務調査はパートナーシップ段階でも行われる。本人確認を効率的・効果的に行う納税者番号制度が導入され、パートナー(組合員)をフォローしていく仕組みが完備している。この様な制度が完備しているのは、組合形成を活用し、減価償却や利子控除を組み合わせ、損失を人為的に作り出す租税回避が多いことによる。
情報申告義務を課すとファンドは海外に逃避してしまうという反対がある。しかし、わが国に投資機会がある以上、わが国への投資は変わらないはずだ。海外に移ったファンドに対しては、わが国でファンドを管理・運営する者(弁護士事務所等)に義務を課せばよい。最近では外国法人による組合を活用した国際的租税回避に対抗するため、利益配分に源泉徴収を課す税制改正も行われている。
リスクマネーを供給するファンドの機能は経済活性化に必要不可欠で、むやみな規制によりつぶしてはならないが、税金だけはきちんと負担してもらいたいものである。