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http://www.bund.org/culture/20060725-2.htm
職場から
小泉改革ですすむ労働強化
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財政削減が生みだす「介護」の貧困
後藤喜一
介護保険は2006年の4月から5年ぶりに改定された。改定の最大の理由としては財源の行き詰まりが挙げられている。介護保険の給付費は2000年度で3兆9535億円だったのが、2003年度で5兆6795億円と、3年間で約1・5倍に増加した。給付額は今後は8兆円規模に膨れ上がると予想されている。
そのため、今回の介護保険改定の最大の目的は、いかに給付費を抑えるかだった。「施設から在宅へ」という国の方針は、自立支援ではなく予算削減から提起された。
当初介護保険導入の理念は「在宅から施設へ」だった。この国の方針にそって、施設利用者や在宅でのヘルパー業務など、さまざまなサービスが急増した。これらは給付費の増加を生み出したが、地域で介護を行う可能性も広げてきただろう。
私は介護の仕事をしているが、介護報酬の一方的引き下げはとても心配だ。私は月4〜5回の夜勤手当も含めて手取り15万円〜16万円で、これ以上下げられるのは正直苦しい。ボーナスも支給された日に、いきなり「全職員20%カット」といわれた。パート職員は5万円ほどのボーナスが全員支給されなくなった。
今後介護の仕事を男性が続ける道はとても狭く感じてしまう。いくら介護の仕事を続けたくても、経済的な理由で転職する以外ないからである。
介護報酬の削減を国は一方的に行おうとするが、介護を受ける人が増加すれば、介護を提供する人が増加することは当然なことだ。これからの高齢化社会で「安い給料や待遇に何一つ文句を言わず、自己犠牲的にボランティア精神で働く介護職」を、一方的に求められても現実は難しい。
福祉や介護を仕事とするには自己犠牲が前提とされるような社会が、安心できる高齢化社会を迎えられるとはとても思えない。私は国に対して「私たち介護職も労働者なんだ」という気持ちを強く持っている。
石川県のグループホームで起きた事件
経費削減が行われる中で、働く職員への負担は増加している。2005年2月13日、石川県の認知症高齢者グループホームで、20代の介護職員が入居者(84歳)に暴行を加え殺害した事件がある。職員は夜勤専門のパート職員で週3回夜勤を担当していた。一人で12人の入居者のおむつ交換、歩行介助などをしていたのだ。だが経費が削減され、夜勤専門職員の彼は待遇に不満を持ち、介護ストレスから殺人をおこなってしまった。厚生労働省の調査(2004年10月)では、グループホームの一人夜勤体制の事業所は3222カ所もあるのだ。
私はこのニュースを聞いたときに他人事とは思えなかった。介護ストレスにさらされていない人などいない。不満や不平が許されない状況で、常に優しくあろうとすることはとても難しい。いくら「仕事なんだから」と割り切ろうとしても、私たちが働いている労働環境は、あまりにも厳しい。
今や、スタッフのパート化は増加し、人材、経費、労力などは全て施設負担になっている。例えば何かの行事に出るときも手当がつかないので、自分の有給休暇を使ってこなしている。仕事の一環としてのミーティングに休日出勤しても手当てはでない。残業代など初めからもらえるという期待もないから、無償労働を多くの職員が当然のように行っている。
スタッフの献身的な犠牲の上にしか成り立たないような環境が、果たして利用者にとって理想的な介護の場になりうるのだろうか。スタッフが追いつめられれば燃え尽き症候群や、入居者に向かえば、簡単に虐待に向かうだろう。
2006年長崎での火災
火災や災害にあったときの対応も(特に夜間)負担が大きい。2006年1月8日の夜間に起きた長崎県大村市内にある認知症高齢者グループホーム「やすらぎの里さくら館」の火災では、施設が全焼、死者7名、負傷者3名を出した。
「家庭的な共同住宅」の理念を謳っているために、普通の一戸建てを使用しているホームや、30人以下の小規模な施設で消防法の規制がほとんど無い所が多いのだ。夜間の職員配置が一人であるホームなど、十分な防火管理体制がない現状もある。しかもひとたび火災が発生すれば、入居者は自力で避難することが困難な場合が多い。
そうした中で、消防庁はグループホームにスプリンクラーの設置を義務化しようとしている。最も安いもので約300万円の費用がかかる。多くのホームには財政的に難しい問題だ。
夜間勤務を1人体制から2人体制にした方が様々な状況にも対応できるが、これも財政的に難しい。私のホームは2フロアで、1人ずつ職員がいるが、仮眠時間は労働条件にはあるが実際にはとれない。パートの職員も3時間の休憩時間分も働いて、手当ては支給されない。「二人夜勤体制の実現」や、スプリンクラーの設置、災害用の物資の費用などに、政府からの財政的な補助は必要だ。
地域住民の認知症の理解や入居者との交流、災害時の避難施設の選定、食料品や防災用品をそろえることなど、見た目ではわかりにくい認知症高齢者を、在宅の方も含めてどのように社会が保護するのか。私は米軍への思いやり予算で米兵1人あたり1400万円も支出するより、高齢者、障害者、介護職員などへの支援のほうが重要だと思う。
高齢化社会になるほど災害弱者が集中する福祉施設や地域は多くなる。国策としても、それに対処することは絶対に必要だろう。
(グループホーム職員)
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公務員の新給与制度が始まったが
池永博士
この四月から、いよいよ公務員の新給与制度が始まった。1年に3ヶ月ごと4回ある定期昇給の機会を、年1回1月にまとめ、今までの給料表の号俸を4つに細分化するというものである。3月31日時点での旧号級を、新しい表に当てはめて新号給に切り替える。わたしの場合、今まで6級15号であったのが4級52号に切り替えられた。新しい表では月給はダウンする。
4月の給料日に恐る恐る給与明細をみた。だが、支給される月額は変わっていなかった。「現給保障」による。「現給保障」は新制度における支給額が前支給額を上回るまで行われる。それに従うと07年1月から08年1月の昇級期まで「保障」されることになる。しかしこれで喜んではいられない。県教委が行った説明会の資料を良く読むと、あと2年間以上定期昇級しても、号級が上がるだけで支給額は変わらないのである。50歳台を超えるベテランの職員となると、退職するまで賃金が上がらないと言う場合もあるくらいだ。
現在は実施されていないが、これに成績査定が入ったらどういうことになるのか。とりあえず来年の1月には全員4号ずつは上がる。しかし成績主義が導入されれば、特に優秀と査定された人だけが4号上がることが出来る。がんばって優秀な成果を上げた人でさえ、従来の人並みの給与しかもらえないと言うことなのである。これでは、がんばれば人より多くの給与や処遇が与えられる「成果主義」の、良い面すら実現されないということではないか。
これが、ほぼ全国で始まってしまった。公務員制度は大きな曲がり角へハンドルを切ったのだ。よく公務員は「休みが多いし5時で終われていいな」といわれる。実際はそう簡単ではない。例えば夜の8時や9時に最寄りの県庁や市役所に行ってみれば、灯りがこうこうと点いているのがわかるだろう。これさえも地球温暖化防止に反すると批判の的になっているが。
給与の切り替えを行うためには、無論コンピューターを使うが一人一人のデータの入力を手作業で行う。ほぼ毎年、人事異動の時期になると、事務局の人事給与担当職員は1週間泊まり込みの作業となる。彼らはこれを「合宿」と呼んでいる。
人事委員会から送られてきたリストに従って、各学校ごとに異動した教職員のデータを、一人一人入れ替えるのだ。毎日平均午前2時3時まで行われ、夜がどんなに遅くなっても、翌朝はまた8時15分から仕事が始まる。このように現場の教職員以上に、事務局職員は過酷な労働を強いられているのだ。
土日にもサービス出勤
私の場合も、やはり年度末・年度始めにはそれに近い状況になる。夜の10時過ぎまで学校に一人で残ったり、土日にもサービス出勤せざるを得ない。
みなさんは、01年4月6日に厚生労働省から出された『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について』という通知をご存じだろうか。働き過ぎやサービス残業などを是正するために、共産党などの働きかけによって出されたものだ。これによると使用者は、労働者の始業や終業時間を適切かつ客観的に記録し、それを最低3年間保存、時間外労働時間の上限(つまり足きり)をもうけたりしないことを、使用者に求めている。
この通知は文科省から各県教委に通知されたが、学校現場にはなかなか下ろされなかった。組合の要求の結果、04年度の末になってようやく県内小中学校にも配られた。しかし、それについて何の説明もなく、文書棚にしばらく置き忘れられていた。
05年度の始め、給与の説明会において、わたしたち事務職員の時間外勤務手当について「実績どおり」に請求するようにという説明が口頭でなされた。それに加え「ただし予算の関係もあるので年間○○時間くらいに押さえてください。健康に留意して無理な時間外勤務は見直してください」と、またまた口頭で付け加えられた。通知文の「効果」がこんなところに現れたのである。
改めて振り返ってみると、公務員の週40時間労働・週休2日ということは、じつは「それ以上給料は出しませんよ」ということなのだ。例え土日に仕事をしなければ間に合わないという状況があっても、それは直接命令によらない勤務である。だから休んだって罰則はない。ただしその結果仕事が遅れれば、それは自分の身にかえってくるのだ。
このように公務員の勤務時間と給与は、官僚制度を維持するための枠組みを基準として決められている。時間外や土日は、その基準の外にある。公務員の労働は労働実態とは関係がないのである。
こうした中で給与制度が大幅改正され、成績主義もじき始められる。果たして、働いて成果を上げた分の給料がもらえるようになるのか。その成果の中身とは何なのか。
よくわからないで働いている毎日だ。
(地方公務員)
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今、郵便局は民営化前の退職でとっても人手不足
織笠亜衣
今郵便局は人手不足だ。来年の10月に民営化をひかえ、退職を希望する職員が大量に出ているからだ。私の所属する特定局は、100局前後でひとつのエリアになっている。3月の時点で、退職予定者も含めたら各局1人は欠員という状況だった。大量の欠員を抱えている状況は一昨年からずっとだ。
今年度は新規採用職員を例年に比べて大幅に増やしたという。だが採用辞退者も例年に比べて大量に出てしまい、欠員が埋められるかどうかは危ない。私の局も昨年9月から1人欠員の状況が続いたままで、3月いっぱいでもう1人退職することになった。代わりの人は決まらず4月は2人欠員だった。
何故そんな状況になったのか。異動してくる予定だった人がうつ病になってしまい、しばらく入院することになったからだ。他のエリアにいる友人にこの話をしたら、そこでも同じようにうつ病になってしまった人がいて、異動の話が流れてしまったケースがあったという。
うつ病になったという話を聞いて「わかる」と思ってしまった。今の郵便局は民営化へ向けての準備ということで、いろいろと仕事が細かくなっている。「これをやってはいけない」「あれはああしなさい」「これはこうしなくてはいけません」ばかりだ。
それを郵便局内部だけではなく、お客様にもお願いしなくてはならない。会社からは「民間金融機関ではこうするのは当然」というように言ってくる。お客様からは「銀行ではそんなこと言われたことがない。もう民間なんだから、そんなことしていたらどんどん客が離れていくよ!」と言われる。正に板ばさみだ。
「民営化すれば全てが良くなる」という根拠のないすりこみを小泉首相がした。実際には、さらに規制が厳しくなっているだけなのだが、そのギャップは、すべて職員の対応に任せられているだけだ。
私も毎日のように「もう辞めてやる!」「こんな会社早くつぶれちゃえばいいのに!」と思っている。「つらい、つらい」の愚痴を他の仕事をしている友人にすると、「本当に辞めちゃえば?」といわれる。でも私は「もう少しがんばってみよう」とも思っている。たしかに大変なことばかりなのだが、やってて良かったなということもあるからだ。
お客様に「いつものお姉ちゃんはいる?」といって指名してもらったときや、たまたま自分が休みの時に来たお客様が、次に来た時に「この間いなかったから辞めちゃったのかと思ったよ」と心配してくれる。そうしたときはやはり嬉しい。
この仕事を選んだ理由も、お客様の顔が見える仕事、顔見知りになれる仕事がいいなと思ったからだ。お客様とのつながりが今仕事を続ける一番の支えになっている。
魅力のない会社に勤めながら、自分なりの魅力を見出してがんばるしかないのが現実だ。
私の局は1人欠員だが、補充に時間がかかっているのは、今年は新規採用の職員の基礎訓練に2ヶ月もの時間をかけているからだという。私は2週間だった。これだけ時間をかけて訓練を受けた新規採用の職員が、現場に入った時に失望しないことを祈るしかない。
(郵政公社職員)
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(2006年7月25日発行 『SENKI』 1219号5面から)
http://www.bund.org/culture/20060725-2.htm