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http://www.f6.dion.ne.jp/~suzukiap/china.htm
2.中国の不動産制度
(1)不動産の基本的概念
不動産の基礎概念
『地産』:土地を意味する。財産・資産としてのいわゆる物理的な土地を示す場合とともに土地の財産権利(所有権)概念を示す場合とがある。
『房産』:建物を意味する。住宅、デパート、工場のみならず、附属設備や塀などの構築物も含まれる。
『房地産』:土地・建物の総称で、「土地」、「建物」、「土地と建物一体」を示す単語である。一般に中国の不動産鑑定評価の対象はこの房地産である。
『不動産』:不動産は房地産より広い意味をもち、各種の移転・移動できない財産も含めたものを示す。例えば、道路、橋、木などをも含んでいる。
不動産の財産権概念
『所有権』:法律の範囲内で所有物に対する全面的な支配の権利をいう。占有、使用、収益、処分する権利を全て包括する。
『使用権』:他人の所有物に対して一定の範囲内で占有、使用収益を行う権利をいう。
『他項権』:その他の権利。他人の所有する土地又は他人が有する土地使用権の上でなんらかの利益を享受する権利をいう。具体例では役権、空中権、地上権、地下権、賃借権、抵当権などがある。役権は日本の地役権に該当し、他人の土地(または土地使用権)上に自分の家までの進入路を設定する権利などがある。
(2)中国の土地制度
土地所有権
中国では、土地は社会主義公有制を前提としており、土地所有権は全民所有の名のもとで国家に帰属する場合と、農村地方団体経済組織に帰属する場合の2種類が存在する。中国の憲法の規定では、都市部の土地は国家が所有し、農村部の土地(農地と農業従事者の住居地)は農村地方団体経済組織が所有している。
国有土地の所有権はいかなるかたちでも取り引きは許されておらず、法律違反となる。
農村地方団体経済組織の土地所有は、法律によって当該組織が土地を占有・使用収益し、処分権をも有しているが、社会主義的性格を強くもっており、所有権移転は同類の地方団体に対してのみ行われる(個人に譲渡されることはない)。
土地使用権
法律が許す範囲内で、国家または地方団体が所有している土地を占有・使用・収益ができる権利である。土地使用権は譲渡等のかたちで民間人・民間企業に取得させることができ、土地使用権は譲渡(転譲)、賃貸、抵当が可能である(1988年の憲法改正により正式に土地使用権の譲渡が認められた)。
土地使用権の最長期間は用途によって以下のように異なる。
居住用
70年
工業用
50年
商業・娯楽・観光用地
40年
教育・科学技術・文化・体育用地
50年
また、1994年施行の「不動産管理法」第21条によれば、「土地使用権について、公共の用に供さない限り、更新されるべく」とされているため、合法的に継続使用手続きを取れば、事実上、土地使用権を永久的に所有することも可能と解釈される。
<譲渡(『出譲・転譲』)>
国家等が民間へ土地使用権を譲渡することは、中国語では『出譲』という単語が使われている。すなわち土地使用権を「出譲する」とは「払い下げをする」という解釈でよい。
民間人が、国等から出譲をうけた土地使用権を改めて民間人へ譲渡することを『転譲』という。転譲される場合には、契約締結、転譲価格、土地占有の時間などを明確にし、必ず登記をすることとなっている。
なお中国では土地(土地使用権)と建物は不可分一体であり、転譲される場合には両者が同時に譲渡されることとなる。
<抵当『抵押』>
土地使用権は担保対象となり、抵当に供することができる。中国語では抵当権のことを『抵押権』という単語を使って表現している。
中国では、土地使用権が抵当対象となれば、自動的に地上建物にも抵当対象が及ぶこととされている。これは土地使用権と建物が不可分であることを貫徹するためのものであり、従って法定地上権の発生は起こらない。
抵当権は必ず登記をしなければならない。
<賃貸『租賃』>
土地使用権は賃貸に供することが可能である。中国語では賃貸のことを『租賃』、賃貸人のことを『出租人』、賃借人のことを『承租人』という単語を使って表現している。
賃貸に供されても、国等と土地使用権者との法的関係は変化しない。
その他以下の条件を満たす必要がある。
・土地使用権は国からの出譲により得られたものでなければならない。
・賃貸借期間は、土地使用権の残存期間内におさまらなければならない。
・地上建物等も同時に賃貸に供さなければならない。
<不動産市場の種類>
一級市場:国が出譲する市場、すなわち国→民間への市場を示す。
二級市場:民間同士で転譲する市場を示す。中古複合不動産など、買い主がエンドユーザーの市場を三級市場と言う場合もある(この場合、企業間売買等が二級市場)。いずれも土地使用権や地上建物の価格形成は市場に委ねられて決まる。
(3)中国の登記制度
登記は、「不動産管理法」(房地産管理法1994施行)によって制度が規定されており、県レベル以上の地方人民政府・土地管理局が担当している。
土地使用権の譲渡においては、当該土地管理局に申し込み、登記をすることが義務づけられている。土地管理局は譲渡が適正に行われたかどうか審査し、土地使用権証書(『土地使用権証』)を交付する。
建物についても同様で、建物所有権証書(『房屋所有権証』)が交付される。抵当の場合も、抵当権者には土地他項目権証書(『土地他項権証』)または住宅他項目権証書(『房屋他項権証』)が交付される。
3.中国の不動産市場の現状
中国の社会主義市場経済が活発化した転換期に当たるのは1992年である。これは、ケ小平氏が広東省の著しい発展状況を視察した際に、社会主義市場経済の強い推進と改革開放を呼びかけた、いわゆる「南巡講和」と呼ばれる主張がなされた年であり、不動産などの投資ブームが始まったきっかけとなった。
中国において不動産投資ブームが実現した具体的・特徴的な要因としては、「住宅ローン」と「先払い金」の二つの制度をあげることができると思われる。
住宅ローン
中国では、1980年代中期までは、都市部の個人持ち家比率はほぼゼロに等しかったが、政府は改革開放路線の一環として持ち家を奨励する政策をとることとなった。
供給サイドを見ると、まず国有企業の社宅・寮の処分が認められる。これは国有企業の改革も相俟って、従業員に対して住宅を払い下げるものであるが、多くの中国国民の雇用を支える国有企業の住宅払い下げは、大量の個人住宅を供給する結果となったのである。
需要サイドを見ると、銀行の個人貸出し−いわゆる住宅ローン−が急増したことが、需要を後押しする要因となっている。高成長が続く中国では、沿海部と内陸部との所得格差の拡大といった問題が生じてはいるものの、全体としてみると、国民の所得水準は急速に向上しているが、このような個人所得水準の向上を背景に、住宅ローンを含めた銀行の個人向け貸出が急増している。住宅ローンと住宅ローン以外の貸出を合わせた個人向け貸出残高は、1997年時点ではほとんどゼロに近かったが、2000年に4,280億人民元、2002年には8,000億人民元へと急増した。この個人向け貸出の中での構成比を見ると、住宅ローンは実に約79%を占めている(資料※1)。
先払い金
不動産投資は、巨額の資金が必要であるが、これは開発者の自己資金だけでなく、不動産購入者の「先払い金」によって賄われている。中国では日本のような「青田売り」に対する法規制がなく、予約販売は行政の審査による許可制が一般的であるため、開発業者は予約販売を通じて相当な開発資金を集めることができる。
中国国家統計局の資料によると、1999年の不動産開発の資金源は、自己調達が約28%、国内貸付が約23%であるのに対し、先払い金は実に約30%以上に達する(資料※2)。なお、外国資金は約5%となっている。
中国の不動産市場は、アジア通貨危機などで低迷した時期も断片的にはあったが、規制緩和が続くなかで活況を続けている。森ビルや丸紅などの日本企業も中国の不動産事業に参入した。その結果、上海や北京など都市部の地価(土地使用権価格)の高騰が見られ、中国政府はバブルを懸念して市場抑制政策をもうたいはじめている。
今後も中国の不動産市場からは目が離せない。