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【経済面】2006年06月19日(月曜日)付
(世界経済リポート)中国企業、元高で転機に 「薄利大量輸出」難しく
生活雑貨や衣類などの薄利多売で成長してきた中国企業が経営改革を迫られている。ドルに対して人民元がわずかだが強くなり、「薄利」を海外への大量輸出による「多売」でカバーすることが難しくなっているためだ。危機感を抱いて、付加価値の高い製品を作り出したり、品質管理を強めたりする企業などが出てきた。70年代、ドル安円高の大波のなかで構造転換を進めた日本企業と重なる動きだ。(上海・山口博敬)
浙江省義烏市の卸売市場に陳列されているぬいぐるみ。1個5元から大きいものでも40元。海外からバイヤーが大量買い付けに来る
人民元基準値の最近の推移
●「2%」で利益吹き飛ぶ
上海近郊の江蘇省常熟市。犬の首輪や散歩ひもを製造している「常熟昌順ペット用品」の張常勝・総務部長は、田んぼに囲まれた従業員40人という小工場の一角で試作品をチェックしていた。
「『子犬』では勝てない。猛犬か馬で勝負だ」と檄(げき)を飛ばし、馬の手綱と大型犬用のひもの開発を進めている。いまの主力商品は単価1元前後の子犬用ひもだ。
新商品開発を決意させたのが昨年7月の人民元の対ドル2%切り上げだった。
同社の製品のほとんどは米ウォルマートや日本の百円ショップ最大手の大創産業など欧米や日本向けに輸出されている。05年は子犬用のひもを中心に500万個を作って800万元を売り上げたものの、1個あたりの利益は0・2〜0・4元。わずか2%の切り上げでも、薄い利益は吹き飛んでしまう。
そこで、米国で需要が高まっていて、単価25元、1元以上の利益を確保できる馬の手綱などに目を付けた。今年は単価5〜8元の大型犬用と馬用を主力に切り替え1千万個をつくる予定だ。
上海から南に300キロ、アクセサリーや文房具、ゲームセンター向けの人形などの小物メーカーが集積する浙江省義烏(イーウー)市。鏡や絵画のフレームメーカー、華鴻集団の〓(「龍」の下に「共」)品忠・董事長(会長)は「コスト改革を急がないと会社はつぶれる」と危機感をあらわにする。
ほぼ全商品が米欧や日本向けで決済は米ドル。昨年の元切り上げで、契約済み商品の出荷額は、人民元では契約金額より280万元(3900万円)目減りした。
創業は98年。薄利多売の商法で工場は10倍の10万平方メートルに、従業員も10倍の3千人になった。これからは、従業員には品質管理と納期の徹底を求め、汎用の部品や素材は関連会社以外の会社からも仕入れる。小規模の子会社は売却し、価格決定にかかわれない相手先ブランドの生産(OEM)もやめる。
〓(「龍」の下に「共」)董事長は「量で利益を求める時代は終わった。品質とサービスにこだわる。2年は改革の手を緩めない」と言い切った。
●高付加価値品に活路
人民元の為替相場は14日、約1カ月ぶりに1ドル=8元を突破。翌15日には中国人民銀行が毎朝決める基準値でも7元台をつけた。地元金融機関は「政府が7元台を容認する姿勢か」と浮足立っている。
中国は外資の投資が加速した90年代半ばから「世界の工場」と言われ、安い労働コストと豊富な労働力を武器にのし上がった。白物家電の「ハイアール」など世界ブランドの企業も出てきた。が、輸出企業のほとんどは独自技術やブランド力がない薄利多売タイプ。国営新華社通信によると、約8千ある中国の玩具メーカーが世界の玩具の75%のシェアを支えているが、その約9割は中小企業で独自の開発能力がなく、商品の7割は委託生産だという。
産業構造を調整し、経済成長パターンを転換させることが差し迫った課題−温家宝(ウェンチアパオ)首相は3月、「政府活動報告」でこう述べた。人民銀も「輸出企業はまだリスク意識が薄く、人材の育成と国際競争力の向上が待たれる」と発破をかける。
衣類や鉄鋼、テレビなどを大量に米国に輸出した結果、巨額の貿易黒字を抱える。貿易摩擦が起きて通貨切り上げを迫られ、構造改革へ背中を押される、というのは日本がたどった道でもある。日本の中小企業のように研究開発に力を注いで、付加価値の高い製品を生み出せるか、中国企業は胸突き八丁に差し掛かっている。
義烏市で装飾品を製造している新光飾品の製品は東京の百貨店で数千〜1万数千円で売られている。周暁光・董事長は「多少値上げしても消費者が受け入れるもの作りを目指すしかない。元高で中国の輸出企業の3割は倒産するだろうが、残り7割の底力で雇用と競争力は十分支えられる」と言う。
http://www.asahi.com/paper/business.html