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【経済面】2006年06月12日(月曜日)付
(世界経済リポート)航空熱高まる、湾岸諸国
中東のペルシャ湾岸諸国で、空港の拡張や航空会社の新設競争が続いている。世界で多くの航空会社が原油高にあえいでいるが、産油国は原油高のおかげで地域経済が盛り上がり、航空業界の追い風となっている。なかでもアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ、アブダビの2首長国とカタールは、都市や国家の威信向上を目指して、三国志さながらの競争を繰り広げている。(ドーハ=貫洞欣寛)
昨年11月のドバイ航空ショーでエアバス社の展示に見入る人々。湾岸地域に対する航空機業界の視線も熱い
湾岸諸国
●新空港完成待てず拡張 カタール
カタールの首都ドーハ。40度を超える熱気の下で、ドーハ空港拡張工事のクレーンが動く。その数キロ先で、新空港用地の埋め立て作業も進む。
来年完成する予定の現空港の拡張(予算2億ドル)と、09年開港の新空港の建設(55億ドル)を、同時に行っているのだ。
新空港は4千メートル級滑走路2本で、旅客の処理能力は最大年5千万人。人口約80万人の国が、成田を上回る規模の空港を持つことになる。
現空港は、新空港ができれば取り壊される。それでも拡張を進めるカタール民間航空庁のヌアイミ長官は「需要が増えすぎて新空港の完成を待てない。すぐ2億ドルが無駄になる? 国全体が成長するチャンスを逃す方が痛い」と笑みを浮かべる。
高い自治権を持つ七つの首長国でなるUAE。そのひとつ、ドバイ首長国のドバイ空港では、処理能力を年7千万人に増やす拡張工事が年内の完成を目指して進む。
昨年の乗降客は約2400万人で、国際線で世界11位。ドバイ航空当局は、25年に1億人に達すると予測する。約40キロ離れた地域に滑走路6本を持つ新空港も計画中だ。
首都があるアブダビ首長国のアブダビ空港では、昨年新ターミナルが完成。今年の乗降客は前年比19%増の670万人を見込み、勢いに乗る。10年までに年間乗降客2千万人を目指し、さらに拡張する予定だ。
湾岸地域では、こうした空港の拡張・新設計画が目白押しだ。後押ししているのが原油や天然ガスの価格の高騰だ。
02年には平均1バレル=20ドル台だった原油はいま70ドル前後。日本エネルギー経済研究所中東研究センターによると、この水準が続くと、UAEでは今年の石油輸出収入は前年比25%増の約570億ドルにのぼる。4年間で約3倍に膨らむ計算だ。
懐が豊かになり、空港投資も重荷ではない。好景気が世界中から人と企業を引き寄せ、それがさらに景気を押し上げ、空港拡張を促している。
国際航空運送協会によると、昨年の中東の旅客輸送量は前年比13・1%増で世界最高の伸び。09年までの予測では、中東―アジア太平洋路線の乗客は6・7%増え、アジア域内路線に次ぎ世界2位の増加率になるという。
●すでに中東の物流拠点 ドバイ
ドバイ、アブダビ、カタールは、「空路強化」でもしのぎを削る。目指すは中東の「経済首都」の座だ。
一歩リードしているのが、石油の枯渇に備え金融や貿易、観光の振興を進めてきたドバイ。85年にエミレーツ航空を創設。高レベルのサービスと、アジアと欧州の中間という地理条件を生かし、「世界のハブ」として売り込んだのが当たった。
中東の一大物流拠点となり、各国の企業が集中。日本からも約150社が進出している。
●イメージ向上へ新会社 アブダビ
石油や天然ガス資源が豊かなアブダビとカタールは、経済力ではドバイと肩を並べる。が、企業・商業集積や観光客誘致で後れを取り、「資源だけの国」という印象をぬぐいきれない。
そこで、ドバイと同様に自前の航空会社を新設し、イメージ向上と経済の多角化を図ろうとしている。
バーレーンなどと「ガルフ航空」を共同運航してきたアブダビは、03年に独自のイティハド航空を立ち上げ、「毎月、新路線を開設」を目標に31路線を開いた。
ブラウン広報部長は「首都にぜひフラッグキャリア(国を代表する航空会社)を、と創業した」と語り、商都・ドバイへの対抗意識をにじませる。
カタールは97年、「出稼ぎ労働者の帰宅便」(ヌアイミ長官)だったカタール航空の経営を刷新。「五つ星サービス」を掲げてビジネス客を引きつけ、ドーハを湾岸のハブ空港とすることを目指す。乗客は例年3〜4割増え、昨年は630万人となった。
ヌアイミ長官は「新鋭機ぞろいのカタール航空が各国に飛ぶことで、我が国のイメージは大きく向上した。ドーハは単なる『ガス田』ではなく、ビジネスと科学技術のハブを目指す」と語る。
http://www.asahi.com/paper/business.html