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http://www.spshimbun.com.br/content.cfm?DA_N_ID=14&DO_N_ID=11064
ルーラ大統領の旗印『飢餓ゼロ』 選挙に強いが『仕事ゼロ』
雑誌「ベージャ」その他から
すでに実施されてから３年、ルーラ政権の政策中、最も成功したのは『生活扶助』政策。『飢餓ゼロ』を選挙の旗印に掲げたルーラ大統領は大規模な貧民層への生活扶助システムを導入、現在、政府からこの恩典を受け取る者は８８０万人、全国民の２０％に近い貧困層、この政策による所得移転は年間８３億レアル、ＧＤＰの０・４３％である。詳細に説明すれば、扶助金システムは家族一人当りＲ＄１２０以下の家庭を対象としたもの、該当する家族は市役所へ申請、ただし、決定権は連邦にある。扶助金の種類は児童奨学金、食品カード、食品扶助金、ガス補助金の４種。
児童奨学金は就学適齢期の子供一人当りＲ＄１５、最高は家族当りＲ＄４５まで。また、他の扶助金、家族当りの最高限度は合計Ｒ＄１２０を限度とし、家族一人当りの収入がＲ＄６０以上、Ｒ＄１２０までの場合はその差額を支給する。児童奨学金とは６才から１５才の子供を対象としたもので、条件は月間８５％の出席率。また、これらの扶助金支給には保健所による子供に対する予防注射の実行、体重の測定、妊婦に対する諸注意事項などが義務付けられ、不履行の場合は除外されるとなっているが、除外が実施された話は聞かれない。
《国民の２０％に生活扶助》
本年３月の時点でこのシステムで扶助金を支給されているのは３月１２日付けのフォーリャＳＰ紙に記載された政府発表の数字は１１２０万家族、全国民の２１・６％、家族当り月Ｒ＄１０７。５月３日のベージャ誌によれば８８０万家族、３３００万人、月収家族一人当りＲ＄１２０以下の１１１０万家族の７８％。ブラジルの全家族数は５１８０万家族、従って、生活扶助金を受け取るのは全家族の１７％である。支給方式は連邦貯蓄金庫の磁気カード、全国１・４万ヶ所に支給ポストがあり、カード使用は殆どの場合、主婦が担当している。
《米ニューディールでは世界一の高層ビル》
貧困対策は失業対策と同時に行なわれるのが普通であり、扶助金支給は例えば身体障害者、老人福祉などの特殊な場合のみに無償で支出される。しかし、ルーラ政府の貧困対策は健康な成人を含めて、貧困者であれば無償支給、すなわち、納税者の懐から支出され、しかも、国内全家族の１７％と極めて大規模なもの。ＧＤＰの０・４３％に相当し、これだけ、追加徴税すれば、高税に対する不満がさらに上昇するのは当然である。
今、キングコングの映画が上映されている。この映画は３３年に製作された同名の映画の焼き直し版。キングコングが最後を遂げるエンパイアステートビルは、２９年１１月に始まる大恐慌の対策として、ルーズベルト米国大統領のニューディール政策により建設され、本年７５周年を迎えるビル。当然の話ながら、失業者が町に溢れようと無償で金銭を恵むことはなく、仕事を与えた。
《伯は『労働ゼロ、飢餓ゼロ』方式》
これに対しルーラ大統領の貧困対策は『仕事ゼロ、飢餓ゼロ』方式。昨年１２月に発表された訪問調査によれば、勤労所得収入の低下が上位階級と下位階級の双方で目立った。勤労所得の占める割合は上位者の場合は８３％から７７％へ下ったが、下位者では８９％から４８％へ急激な低下を示した。上位者の場合、勤労以外の収入として高金利政策による資金運用益の増加で考えられる。だが、下位者の場合は勤労によらない収入の増加は何かと考察すれば、大統領自慢の貧困対策、『飢餓ゼロ』政策の影響が浮かび上がる。この自慢の扶助金支出政策の根本的な欠陥は低所得階級の勤労収入低下に現われている。何も働かなくても得られる収入があるなら、勤労意欲を失うのが当然、これが低所得階級における勤労所得の低下に繋がっている。
《低収入階級ほど強いルーラ支持》
経済政策、社会政策として無償で生活扶助金配布の効果があったか否かは別として、選挙運動としては非常に優れていることだけは確かである。ベージャ誌に掲載された調査の結果では、最低給料の１０倍の収入がある有権者７００万人の中でルーラ支持は２３％の１７０万人、最低給の５倍から１０倍までの有権者１５００万人中、ルーラ支持３５％の５３０万人、最低給の５倍までの有権者１・０１億人ではルーラ支持は４２％と下層ほどルーラ大統領支持が増加。特に扶助金を受領して家族の４８％はルーラ氏へ投票するという結果が出た。合法的な投票購入システムといえる。
《『飢餓ゼロ』発祥地グアリーバスの風景》
ピアウイ州のグアリーバス市は３年前に現政府が『飢えゼロ』を発祥させた市、ブラジルで人間開発指数ＩＤＨが最低から３番目の町であった。この日から１１００日が経過した。３キロ離れた泉から水を引く水道が３年後には完成、町中の者が踊り上がって喜んだ。しかし仕事はない。町で最大の雇い主は市役所、小学校の先生を含め１３０人を雇っている。住民の収入の殆どが生活補助金、勤労収入といえば小学校教師のような官庁関係の仕事で、他に目ぼしい経済活動は無く、住民の大部分は僅かな面積にフェイジョン、トウモロコシ、マンジョカを植え、自家用の余りを換金する程度。無いと分かっている職を探す者はおらず、従って失業者はいないが、仕事をしている者は殆ど見当たらない。
餓えた者はいなくなり、『飢餓ゼロ』の目標は達成した。しかし、政府の補助、税金から支払われる納税者の負担によるもので、カードにより最低の生活が保障され、現在のカード使用数は家族カード６６５枚、食品カード１７０枚、その他のカード３８４枚、合計１２１９枚、３・９人に１枚の生活必需品となった。仕事はなく殆どの者は働いておらず、カードだけが頼みの綱、何時までも続くのを祈っている。
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