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来週の日本株：底ばう、日米政策に不透明感−割安も打診買いの域出ず (ブルームバーグ)
2006年6月9日(金)18時15分
６月９日（ブルームバーグ）：来週（12日−16日）の東京株式相場は、日経
平均株価が１万4000円台後半で底ばう展開となりそうだ。米国の金融政策と景気
に対する不透明感が根強いことに加え、海外投資家による日本株への売り越し姿
勢が警戒される中、日本の構造改革スピードの遅れを懸念する声も出始めた。
５週連続安となった今週の日経平均は、2000年12月以来となる週間の下げ幅
が1000円を超え、一時は小泉純一郎内閣の発足直後に付けた高値１万4529円
（2001年５月７日、終値ベース）を下抜けた。チャートを見ると、それまでの１
万1000円−１万2000円の範囲から昨年８月８日を起点に上放れ、今年４月７日
には５年超ぶりとなる１万7500円台まで上昇。８月８日は郵政民営化法案が参議
院で否決され、小泉首相が衆議院解散に踏み切った日である。その後の上昇相場
のけん引役は海外勢が中心であり、その背後には日本のデフレ脱却に対する評価
や、小泉首相の圧勝を受けて構造改革が一層進むとの期待があったとされる。し
かしこうした側面が、やや揺らいできたようだ。
今週の取引開始前の外資系証券経由の注文状況は、５営業日すべて売り越し
との観測。売り越しはすでに12営業日連続となっている。８日に東京証券取引所
から発表された５月第５週の投資部門別の売買動向では、外国人は予想外の買い
越し。しかしこれも、５月末に実施された世界的な株式指数ＭＳＣＩの銘柄入れ
替えに伴う特殊要因と受け止める声が多かった。
ベアー・スターンズ証券東京支店の倉持宏朗マネージングディレクターは
「海外勢が日本の構造改革の遅れを気にし始めている感がある。通常国会の延長
はなく、ポスト小泉は誰なのかという問題も含め、改革進展への期待が失望に変
わりつつある。実際に、日経平均は小泉政権発足直後の高値を下回った」と話し
ている。
小泉首相は６月18日までの通常国会の会期は延長しない方針を示しており、
教育基本法の改正案や共謀罪を創設する組織犯罪処罰法の改正案、防衛庁の名称
を防衛省に変更する関連法案などの成立は、秋の臨時国会に先送りされる公算が
強まった。
グリーンスパン氏がいてくれたら
日本の政治、構造改革進展に対する楽観論を後退させている海外投資家の根
底には、世界的な政策金利の引き上げ懸念に伴う本国株式市場の下落、リスク許
容度の低下という流れが存在する。米国のダウ工業株30種平均は今週、終値では
３月以来となる１万1000ドルを割り込み、欧州のほかアジアや中南米といった新
興市場の株式相場も不安定な動きを見せた。
トヨタアセットマネジメントの大塚治夫チーフファンドマネジャーは「米利
上げの継続懸念が根底にあり、外国人投資家の売りが継続している。米金利は良
いところに来ているが、オーバーキル（行き過ぎ）するまで止まらないだろう。
米国株が軟調になると、利食い可能な日本株を売り、資金を回収しやすい」と指
摘する。
米国の利上げ継続、景気腰折れに対する不安心理を強めさせるきっかけは、
今週相次いだ米金融当局首脳の発言だった。まずは５日に、バーナンキ米連邦準
備制度理事会（ＦＲＢ）議長が講演で、「予期された景気の穏やかな減速が今や
現実になりつつある」との認識を示す一方、インフレ指標の上昇には「歓迎でき
ない」とし、市場での行き過ぎた利上げへの懸念を誘発した。翌６日にもバイズ
ＦＲＢ理事、カンザスシティー連銀のホーニグ総裁らが“インフレファイター”
ぶりを発揮する。
さすがに市場関係者の間でも、「インフレと景気減速の間で米国経済のコン
トロールが難しく、そのかじを取るのが学者・バーナンキ議長で、金融政策では
『若葉マーク』ということ。グリーンスパン氏（前ＦＲＢ議長）でも難しい局面
だが、『彼なら何とかしてくれるだろう』という安心感を市場は持っていたは
ず」（三菱ＵＦＪ証券・藤戸則弘投資情報部長）との声が上がった。
信用買い残は高水準、５兆割れが目安
海外勢の弱腰、日本株相場の調整色はこれまでの上昇相場のもう片方のけん
引役だった個人投資家の投資余力も低下させた。東証が６日に発表した５月26日
時点の信用買い残（東京・大阪・名古屋３市場、制度と一般信用の合計）は５兆
2830億円で、急落による処分売りの影響で前の週から4146億円急減したが、なお
高水準にとどまる。ブルームバーグ・プロフェッショナルによると、信用買い残
は昨年８月から増加基調を強め、今年に入って５兆円台で推移し、昨年８月時点
と比較すると約２倍の水準となる。
市場では、「５兆円台割れでひとまず調整一巡感が出る」（丸三証券エクイ
ティ部の小祝寿彦執行役員）との声が多く、相場の流れ次第では持ち高の調整余
地は残っていると言えそうだ。13日には今週９日時点の信用買い残動向が明らか
になるため、大幅に減少していれば、個人の需給悪化懸念は和らぐ可能性がある。
バーゲン・ハンティング
世界的な政策金利引き上げへの懸念は、８日の欧州中央銀行（ＥＣＢ）によ
る利上げ実施で現実化し、今後は６月末の米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）に
焦点が移ってくる。裏返せば、それまでの世界市場は不安感を持ち続けることに
なり、ベアスタ証の倉持氏も「日本株はレベル感では明らかに買いだが、米国金
利の不安はＦＯＭＣまで残る」と見ている。
ただ今週末の相場で、予想以上に良かった機械受注の発表を受けて下落から
急速に反転上昇したことや、2007年３月期も企業業績の伸びが予想される中、年
初来安値水準の日経平均１万5000円、ＴＯＰＩＸ1500ポイントという節目を割り
込んだことを見て、買いの機会と話す声は徐々に増えてきたようだ。
モルガン・スタンレー証券の神山直樹ストラテジストは「４月の下げは３月
までの行き過ぎの修正、５月はリスク・リダクション（縮小）と国内企業業績の
慎重な見通しが偶然重なったことによる」と分析。その上で、「６月は懸念を払
しょくしきれる材料は乏しく、そう簡単に相場は戻れないが、一段と下がるとも
見ていない。７月になれば日銀短観、企業の四半期決算で投資家が冷静になる可
能性があり、その意味で６月はバーゲン・ハンティングのシーズン」（同氏）と
の認識を示している。
同証券では、これまでの急落で銀行、不動産、小売り、製造業には利益の上
方修正期待が強いにもかかわらず、割安になった銘柄があるとして、「バーゲ
ン・ハンターのための注目10銘柄」と題し、みずほフィナンシャルグループ、三
菱地所、昭和電工、ヤマダ電機、伊勢丹、日立ハイテクノロジーズ、ヒロセ電機、
クボタ、合同製鐵、ＮＯＫを挙げた。
米国でインフレ関連指標
来週の日本株相場に影響を与えそうな材料は、国内では12日に５月企業物価
指数と月次消費動向調査、13日に４月の鉱工業生産確報値と月例経済報告が公表
予定。14日から15日は日本銀行が金融政策決定会合を開き、終了後に福井俊彦総
裁が会見する。15日には、４月の第３次産業活動指数、日銀の経済月報の公表な
どもある。
一方、海外では米国で12日に５月の財政収支、13日に５月の生産者物価指数
と小売売上高、14日に５月の消費者物価指数、ベージュブック（地区連銀報告）、
15日に６月のフィラデルフィア連銀景況指数の発表、バーナンキＦＲＢ議長の講
演などが予定されている。
これまでのところ、割安感から日本株を買う動きも打診的な範囲にとどまっ
ており、金融政策や金利情勢に影響を与えそうな指標を受け、米国を中心とした
株式相場が落ち着くことができるかどうかが日本株底打ちのカギを握る。
記事についての記者への問い合わせ先：
東京 常冨 浩太郎 Kotaro Tsunetomi
ktsunetomi@bloomberg
院去 信太郎 Shintaro Inkyo sinkyo@bloomberg.net
http://money.www.infoseek.co.jp/MnJbn/jbntext/?id=09bloomberg11ajYFbuQUA.Qo
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