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□米メキシコ湾のハリケーンが決める日本経済 [ゲンダイ]
http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=26567
【金子勝の天下の逆襲】
2006年5月30日掲載
米メキシコ湾のハリケーンが決める日本経済
5月中旬から世界同時株安が起きている。
これは、米国のFFレートが5%に達するなど、金利の引き上げ基調が強まっていることがひとつの要因だ。もうひとつが、いよいよ原油高が切実な問題になり始めたことである。原油高が消費者物価を押し上げ、金利を押し上げる懸念が強まっている。
前々回、このコラムで指摘したように、04年、05年の原油価格(ニューヨークWTI)の動向は、6、7月から上がり始めて9、10月にピークに達している。今年も同じ構図になる可能性がある。
恐らく、今後の世界の景気を決めるのは、米メキシコ湾のハリケーンの数と、そのルートだ。どうも今年も水温が高く、大型ハリケーンが発生しかねない。大型ハリケーンが、米国の石油の4分の1近くを供給しているメキシコ湾の石油関連施設を直撃したら、原油が再び上昇し、1バレル=80ドル台になることが予想される。1バレル=80ドル台まで原油が上昇したら、物価上昇と金利上昇懸念が相当に強まるはずだ。
問題はそれで日本経済がどうなるかである。
まず日本も消費者物価が上がるだろう。家計の最終消費支出をとったGDPデフレーターは、これまでマイナスを続けてきた。この先、この両者は乖離(かいり)しながらも、プラスに転じていく可能性がある。ただ、それは需要が盛り上がっているからではなく、供給側のコスト増によって物価が上がっていくパターンだ。デフレ脱出どころか、スタグフレーションに突入するシナリオである。
物価の上昇は、7月とも9月ともいわれている日銀のゼロ金利解除を後押しすることになる。そうなれば、「国債費」の増加を招いて財政悪化が表面化し、日本型不動産投資「リート」のミニバブルもはじける恐れがある。それは、国債とリートに巨額の資金を投入している、中小の金融機関を直撃しかねない。
最悪なのは、そこに対米、対中輸出の悪化が重なることだ。日本経済は輸出主導で企業収益が増加し、設備投資が増加するという循環でなんとか回復してきた。日本経済が、米国の「過剰消費」と中国の「過剰投資」という不思議な不安定なバランスの上に成り立っているということは以前から指摘されてきたことだ。
すでに米国の住宅バブルは危険な状況である。と同時に、原油高と米国市場の不振が、中国経済に波及するのは必至だ。中国政府は北京五輪までは、内需喚起で景気をもたせようとするだろうが、為替圧力が加わっているので減速する可能性がある。そうなれば、輸出主導でやってきた日本経済が大きな打撃を受けるのは確実だろう。
ハリケーンが米国を直撃しないことを祈るしかない。【金子勝・慶大教授】