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□企業のメタボリックシンドローム [ゲンダイ]
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【江上剛の経済・世相を斬る2】
2006年5月29日掲載
企業のメタボリックシンドローム
原油、金利、為替の「3高」に慄いていないか
メタボリックシンドロームという言葉が、中高年を悩ませている。
肥満に高脂血症、高血圧、高血糖が重なり、生活習慣病に進行する危険性の高い内臓脂肪症候群のことだ。40代以上では男性の2人に1人、女性では5人に1人が、この病気にかかっているか、予備軍だというデータが厚生労働省から発表された。
このような恐るべきデータが公表された目的は、高齢化社会に向けて医療費の増大による健康保険財政の破綻を心配する政府の陰謀だ。自分の健康は自分で守り、将来、国のお世話にならないようにしてくれというのだろう。そのため今やスポーツジムには中高年男女があふれていて、運動に明け暮れている。中には、運動のやりすぎで体を痛める人が出る始末だ。
ところでわが国の経済も不良債権、雇用、在庫の3つの過大という経済のメタボリックシンドロームというべき症状を今やなんとか克服したように見える。3月決算では多くの企業が、過去最高益を更新し、6大金融・銀行グループはなんと3兆円を超える収益を上げるまでになった。記者会見で銀行トップたちは「儲け過ぎ批判」の質問に苦虫を噛みつぶしたような表情で受け答えしながらも微笑がもれるのを禁じえないように見えた。
企業や銀行は本当にメタボリックシンドロームを克服したのだろうか。今度は原油、金利、為替の「3高」の恐怖に慄(おのの)き、ひたすらに自己の収益拡大にのみ邁進しているようだ。この姿は、健康神話に取り憑かれてランニングマシンで走り続ける中高年に似ている。あまり肉体を酷使し過ぎると結果は健康を害することになる。
かの経営の神様松下幸之助翁が最後に言った言葉は「従業員は楽しく働いているか」だったという(「企業倫理とはなにか」平田雅彦著・PHP新書)。この言葉を今の経営者は噛み締めて、会社の収益は従業員、そして社会のおかげだと感謝して大いに還元して欲しい。
▼江上剛(えがみ・ごう) 作家。1954年兵庫県生まれ。「非情銀行」でデビュー。「異端王道」「腐蝕の王国」「座礁 巨大銀行が震えた日」など多数。4月末、経済サスペンス「大罪」(徳間書店)を上梓。