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【経済面】2006年06月01日(木曜日)付
(揺れる監査 再生策を聞く:1)「企業に厳しく」徹底
老舗(しにせ)企業カネボウの巨額粉飾決算事件に端を発した会計不祥事では、監査を担当した4大監査法人のひとつ中央青山監査法人が、金融庁から業務停止命令を受け、契約先の約2300社に大きな影響が及んでいる。相次ぐ会計不祥事の背景には何があるのか。監査への信頼は取り戻せるのか。業界のリーダーや各界の識者、投資家に「監査再生」への課題を聞く。
監査法人をめぐるチェックの仕組み
●会計士自身が質高める 刑事罰より課徴金有効 日本公認会計士協会長・藤沼亜起氏
――公認会計士の不祥事は、構造的な問題だとの指摘があります。
「会計士には監査と指導という二つの機能がある。日本では指導を重視するのが良い会計士で、監査を徹底的にやるのは副次的という感じがあった。粉飾までいかなくても数字を良く見せたい企業風土があり、結果的に経営者に利用されることがあったかもしれない」
――経営者に意見を言いにくいのですか。
「欧米では社外取締役や監査役が監査人(公認会計士や監査法人)の報酬や契約内容を決める体制が定着してきた。だが、日本では社外取締役を経営中枢に入れることに抵抗感があり、企業の中に味方がいないため会計士の立場が弱い。経営者から報酬をもらいながら第三者として厳しい意見を言えるのか。厳しい監査を評価する風土も残念ながら無かった」
――中央青山への業務停止命令は、従来にない厳しい処分でした。
「破綻(はたん)した山一証券やヤオハンジャパンなど、過去の監査をめぐる不祥事は過失を問われた。カネボウの粉飾決算には(中央青山の)会計士が故意に関与しており、意味合いが全く違う。職業倫理の基本を逸脱する行為で、我々にとっても衝撃的だった」
――2300社の監査に影響が出ました。
「これほど大きな処分とは想像していなかった。5月10日に処分が出たのは、3月期決算の企業の株主総会が6月に集中するため、会計監査人をこのまま(中央青山で)続けるか、新しい監査法人を選ぶのか考えさせるためだろう。だが、4大法人への厳しい処分は影響も甚大だ。行政処分で戒告の次がいきなり業務停止、解散となり、中間がないのは問題だ」
――金融審議会では、監査法人への刑事罰導入が議論されています。
「米大手会計事務所アーサー・アンダーセンは刑事罰で訴えられただけで崩壊した。刑事罰を受けた監査法人を企業が再任するとは考えにくく、監査法人にとって解散命令に等しい」
「数千社もの監査先には、粉飾決算ぎりぎりの会社もあるかもしれない。1社か2社で何かあっただけですべてが崩壊するのでは、監査の提供者がいなくなりかねない。海外のように、問題があった監査法人に課徴金を課す方が合理的だ」
――今後、協会はどう改革に取り組みますか。
「第一に、会員自身が監査の質を向上させなければいけない。協会は厳しく点検し、適正な監査ができない会員は厳正な処分も含めて対処する。理事会に外部の委員を入れるなど、協会自身も透明性を高めたい」
――経営者との関係は変わるのでしょうか。
「監査法人への視線が厳しさを増すなか、指導とか友好第一という考え方はもうあり得ない。監査法人の立場が弱ければ、資本市場そのものの弱さにもつながる。『厳しい』とか『融通がきかなくなった』と企業から言われても、監査の原点に戻りきちっと意見を言うことが社会から求められている」(聞き手・中川仁樹)
◇ ◇
◆キーワード
〈日本公認会計士協会〉 49年発足。公認会計士法に基づく特殊法人で、会計士業務を営むには協会に加入しなければならない。自主規制機関として同法で監査法人の指導・監督権限を認められており、監査業務の向上のため監査法人の品質管理体制のチェックや研修などを行っている。
06年4月末時点の会員は公認会計士1万6538人、監査法人161法人、準会員の会計士補5756人。
◇ ◇
〈藤沼亜起氏(ふじぬま・つぐおき)〉 68年中央大商卒。堀江・森田共同監査事務所などを経て、93年太田昭和(現・新日本)監査法人代表社員。00〜02年日本人初の国際会計士連盟会長。04年7月から日本公認会計士協会長。61歳。
http://www.asahi.com/paper/business.html