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芸術とマーケット
ダイアモンド、金などは、ベルギーを中心に国際マーケットが確立しており、需給のバランスをコントロールする国際機関があるとされます。絵画の価格は、それこそピンから切りまでですが、ひとかどの名画ともなれば、相当高額なものがあります。バブル期の東京で、ゴッホの『ひまわり』の価格が50億円を超えたと記憶します。ともあれ美術作品の背後には、巨大な国際マーケットが存在することは事実です。
絵画とは美術品には違いないのですが、背後にこのような巨大市場があることは語られる機会が、非常に少ないと思えます。ある高名画家が直接筆者に語った事ですが「芸術といったって、カスミ食ってるわけじゃないから、そうきれいなものじゃないですよ・・・」とのお言葉が亡くなったあとも鮮明に記憶に残っています。大成した方の言葉でですから説得力があります。ご自分の作品であっても、どこかで基準価格より安価に取引された事実が判明すると、ご自分で買い戻すそうです。また高名な画家であれば、それが常識との事でした。実際の作業は専門家として画商が行うのでしょうが、損益は本人負担ということらしいのです。「そうしないと、価格が維持できないんですよ・・・」といわれ、特に亡くなった画家の作品価格維持は、大変に困難である事を述べられておりました。そのときはナルホド、と想っただけでしたが、ゆっくり考えてみると、国際機関のザザビーズにしても、クリスチィーヌしても、価格維持という点では常に情報を収集して分析を加えているとされます。
もし、美術品を金融市場と考えると、美術品マーケットの本質が見えてくると思えます。美術界があるから美術市場があるのではなく、現実は、美術市場があるから、美術界があると考えたほうが現実的なようです。これは大人としての素直な印象からでもおなじ結論になるでしょう。株券なり、証券などの有価証券を手渡す代わりに一枚の絵画を渡す。当然ながら換金性が保証されねばならなりません。すると、世界金融市場で、つねに通用するものが必用となります。誰でも知っている名画の換金性はかなり安全でしょう。また、戦乱や動乱、革命などに際しても、危険が回避されなければならないでしょう。相当に緻密かつ高度なシステムが要求されることでしょう。このあたりは、ユダヤ人が得意分野で、世界の一流画商はほとんどユダヤ人といわれます。ダイアモンドの世界と同じとされます。
美術といえば、芸術作品としての価値にだけ目が行く傾向が多いのですが、その背後に、当然ながら金融市場が機能し、さまざまな危険を回避しています。多くのコレクターは絵画の評価に加え、投下資本への見返りをも期待するのが当然でしょう。絵画作品とこれら市場との関係について、より、現実的・科学的な研究が進んでもいいのではないでしょうか。マーケットの研究が進んだとしても、美術作品の価値は全く変わりません。作品の価格は常に変化するでしょうが、作品の価値は、歴史という長い時間のフィルターがかかる結果、それほどの影響はないと予想できます。絵画作品を語るとき、作品の精神性だけを語ることが上品であって、投資としての魅力を語るのは下品といった誤解は、現実的ではありません。単に現実を見ないようにしているだけと思えてなりません。
さて、日本画の世界にもそのような価格維持、つまり一種の金融市場ができているはずですが、余り見えてはきません。金融専門家と、美術専門家との共同研究がもっとなされていいと思えますがいかがでしょうか。合理性を追求しない市場は衰退してゆきます。フランスは国家戦略として、多くの画家に保護を与え、その代わりに作品を独占し、美術をビジネス化して多大な利益をあげています。日本もおなじ事を検討してみる価値はありそうに思えます。美術の価値は芸術・文化だけではなく、そこに大きな産業の可能性と雇用の可能性があれば、いっそうの発展を現実的に考える事が必要ではないでしょうか。美術の背後に巨大マーケットが存在する現実を最大に利用したほうが得策かと思えます。
写真の場合、このようなマーケットの確立はまだまだです。たとえば絵画のオリジナルといえば、案外、簡単に「これだ!」と断定できますが、その他の場合は、技術の進歩などにより、オリジナル判定は、次第に困難になっています。
たとえば、優れた映画があったとして、この映画のオリジナルはどれか、特定する事は困難であり、特定したところで無意味ではないでしょうか。現実には複製が簡単に作れます。それを前提にさまざまな活動と分化が成立しています。したがって、近代の作品価値は、著作権法という法律で財産権を守られています。優れた写真家が、営業的に成立しないといった問題をかかえた現状は、知恵と工夫でマーケットの拡充をはかり、それと同時に、投資家の利益をも守るシステムの考案が、非常に重要と思えます。写真関係者だけでなく、金融専門家などの知恵を借りた、共同研究による新しいシステムの立ち上げが役立つかもしれません。韓国では、映画産業が投資の対象として認知され始め、結果として非常に質の高い映画作品が生まれています。狭い社会に閉じこもっているだけでは何も変化しないでしょう。広く商業といえば合理性だけです。そして、合理性がないところに発展は決して望めないといっていいでしょう。優れた才能を持つ写真家の生活が守れないようでは、少々困る事になります。かっての朝鮮半島では、行きすぎた朱子学の影響で、ついには貨幣までもを廃止した失敗があります。日本でも、かって商人を蔑視した武士階級が、結局、現実が見えなくて、商人の前に壊滅した事を教訓とすべきではないでしょうか。
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