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日本農業帝国主義のすすめ 【中宮 崇】
http://www.asyura2.com/0601/hasan46/msg/532.html
投稿者 hou 日時 2006 年 5 月 31 日 00:13:16: HWYlsG4gs5FRk
 


http://www.interq.or.jp/world/mado/genshiji/970707/NTEIKOKU.HTM

専業化支援と補助政策によって、日本農業を世界の表舞台に!


 以前大前研一が、自分の番組の中で、こう言ったことがあります。


   日本が農業保護のためにかけている予算を持ってすれば、
   穀物メジャーを全部買い占められる。


 穀物メジャーというのは、世界の穀物市場を支配している巨大商社のことで、有名どころではカーギル社、コンチネンタル・グレイン社、ブンゲ社、ルイ・ドレフュス社、アンドレ社等が挙げられます。

 彼等は、穀物の国際市場に多大な影響力を与えており、穀物取り引きだけではなく、その集荷や生産等のプロセス、そして穀物業界以外にも銀行業や運輸業等にも広く進出しており、世界の食料市場はまさに、彼等の手の内にあると言っても過言ではありません。

 日本が毎年農業保護のために支出する膨大な金を持ってすれば、そういった穀物市場の「影の実力者達」をそっくり支配下に収める事ができるというのです。日本は毎年、それほど巨額の支出をしながら、未だに食料の分野では世界から後れを取っているのです。これほど無駄な事があるでしょうか?

 農業は保護すべきです。決して、工業製品などと同じように考えるべきではありません。国土保全機能や(いざという場合の)技術継承機能等、保護すべき理由はたくさんあります。

 しかし、今の日本の農政は果たして、本当の意味で農業を保護するように働いているでしょうか?また、現在の農業が、国土保全機能を果たしているでしょうか?

 多かれ少なかれ、農業を保護すべきだという点は間違いありませんし、現に世界の国々のほとんどはそうしていますが、そのことは、現在の農政をそのまま続けて行って良いという事を意味しません。むしろ今のままでは、農業が国土を破壊し、農政が農業を滅ぼすでしょう。

 日本の農業は、極端に兼業化が進んでいます。工場や工事現場に働きに行く片手間に農業をやっているという農家が極めて多い。また、農業の担い手自身も、老人が占める割合が多くなっています。これでは、「専門的知識を利用した高度な農業」など望むべくもありません。ただでさえ、諸外国に比べてコスト的に絶望的なのに、その上前時代的で経営感覚に欠けるやり方をいつまでも続けていては、農業保護は巨大なブラックホールと化してしまいます。

 日本の農業の兼業化は、現在の我が国における農業衰退の諸悪の根元と言えます。先ほども申しましたように、兼業化は、専門知識の外部への依存度を増します。農薬は、何をいつ、どれだけ撒くべきか?作物の販路はどうするか?それどころか、そもそもどういった作物を作付けするかといったことまで、日本の農家のほとんどは外部に依存しています。この場合の「外部」とは、農協の事です。

 日本で農家の兼業化が問題にされる場合、ほとんどの場合はその規模の小ささによる経営の非効率化が批判の対象となっていますが、私はそれももちろん問題であるとは思いますが、それよりも、専門知識やノウハウの外部への依存の方がよっぽど問題であると思います。

 日本の農政は、主に農協のために行われていると言っても過言ではありません。決して農家のためではありません。予算で優遇し、法律で甘やかし、そのあげく最近も、住専問題などでは多額の損失を生み、さらに国民へ多額の付けを回しています。

 そんな農協がいつまでも残されている理由は、「兼業農家を始めとする零細農家への農業指導」なのです。つまり逆に言うと、農家が独自の知識を蓄積していれば、農協など必要ないのです。

 兼業化は、専門知識やノウハウの外部依存体質を生み、それが農協の存在理由とされ、多額の税金が農協の保護のために毎年無駄に費やされています。それだけではなく、今問題となっている、日本農業の農薬漬け体質も、兼業化が大きな原因となっているのです。

 農家から専門知識の提供を求められる農協は、当然、その提供した知識についてクレームが来る事を恐れます。例えば農薬の散布量について農家に指導を行う場合、「農協の言った通りの量を撒いたのに、作物に虫害が出た!」などと文句が来ては、農協の威信に関わるのです。勢い、農薬散布量を過大に指導するという事になってしまいます。そうすれば、クレームが来る事もないし、農薬会社も儲かるし、農薬販売手数料で農協も儲かるしと、まさにバンバンザイなのです。こういうシステムが、日本農業の農薬漬け世界一体制を生んでいるのです。

 このように農家の兼業化は、保護予算は余計にかかるし、国土は農薬で汚染されるしと、いいことは何もありません。農業保護もいいですが、その場合、「兼業農家保護」ではなく「専業農家保護」にすべきです。この前提を採らない限り、日本の農業保護はやがて、国土を汚染し尽くすだけではなく、農業そのものさえ壊滅させてしまうでしょう。そして後に残るのは、「農協」とは名ばかりの無能な銀行屋兼商社だけです。

 農家の専業化を進めていけば、現在山積している多くの問題が解決するでしょう。農協はいらなくなり、国家予算の無駄使いが減ります。農薬使用量は減り、真の国土保全機能を果たす事ができるようになるとともに、農業のコストも減ります。

 また専業化は、必然的に経営の大規模化を伴う事になるでしょうから、農業にかかるコストは更に減る事になるでしょう。また、中には流通や販売の分野にまで進出するような所も出てくるでしょうから、農産物の価格はさらに下がる事が期待されます。

 そしてさらに重要なのは、専業化が「食料安保」のための重要な一ステップになるという事です。高度な専門知識やノウハウを蓄積した専業農家の中にはそのうち、海外への進出を図る所が出てくるはずです。つまり、米などを国内だけで作るのではなく、アジアや場合によってはアメリカにさえ進出して、現地で農業を行うような農家も出てくるだろうという事です。ただ農業を行うだけではなく、中には、現地の農家に日本式農業の指導を行うような農家も出てくるでしょう。

 米などにしても、日本国内だけで作っていては、凶作などの被害が出た場合の影響は甚大なものになります。「平成米騒動」などは良い例です。あの時は、米の備蓄制度さえ、価格の安定のためには何の役にも立ちませんでした。しかも、そのあまり役に立たなかった備蓄のためにも、毎年巨額の税金が投入されているのです。

 もし米を、日本国内だけではなく、海外にも日本農民が進出して、それこそ世界各地で作っていれば、たとえ日本国内で冷害が発生したとしてもほとんど影響はないでしょう。「リスクは分散すべき」という、社会における一般常識は、なぜか農業の分野では無視されているようです。

 専業農家を作り出すために、農業の企業化を許し、新規参入者への支援制度を確立し、小作制度保護のために作られたような今は規模拡大の邪魔なだけの古い法律を改正し、その経営に補助金を与え、農作物の価格補助金も与える。これだけでも、日本の農業は十分に守れると思います。今までの兼業農家保護政策の継承では、後継者不足のことだけを考えても、日本農業は自然消滅します。大体、兼業化が進めば、コストは削減されて補助金の額も少なくて済むし、農協のために巨額の税金を使う必要もないしと、良い事ずくめのように思えます。

 また、海外進出を図る農家への支援制度も創設すべきです。まあ、支援と引き換えに日本国内への優先的食料供給義務を課すのも良いでしょうが、あまり意味はないでしょう。平成米騒動の時の事を考えても、食い物というものは一番高い金を払ってくれる人のところに流れて行くものです。あの時も、食管制度などほとんど何の役にも立たず、米はどんどん、闇ルートに流れていってしまっていました。

 いずれにせよこれによって、世界各地に日本の農業が普及し、リスク分散になるだけではなく、もし海外の農家にも日本式農業が普及すれば、スケールメリットによる農機具や農薬等のコストの削減にもつながるでしょう。トラクターにしたって、日本国内でしか買ってもらえないよりは、世界中の農民が買ってくれた方がずっと安く売れるようになりますしね。

 「食料安保」を唱える人たちは、「国内農業保護」や「備蓄強化」のことしか言いませんが、平成米騒動を経験した上でまだそんな事を言っているようでは、ただの馬鹿です。真の「食料安保」のためにはむしろ、日本農業の国際化の方がよっぽど有力な手段であると思います。

 今現在無駄に使われている補助金を、以上見てきたような目的のために使って、日本の農業を世界に広める。それだけではなく、あわよくば日本の高品質の農産物を世界中の人々に味わってもらう。現に林檎などの分野では既に、これは成功している事です。

 世間では農業問題に関しては、以下のような固定観念があります。


   「食料安保派」=「国内農業保護」

   「食料安保否定派」=「完全自由化(国際化)」


しかし、私はここに、新たなる立場を提案したいと思います。すなわち、「農業への積極的補助政策による国際化推進と、真の食料安保の確保」。私はこの立場を、「日本農業帝国主義」と呼びます(笑)。どんどん補助金を与えて農家を世界に進出させ、穀物メジャーを買い占めて、生産も流通も日本の手にしてしまえば、何も恐いものはありません。

 日本農業を国内に閉じ込めて甘やかすというような小さい了見ではなく、日本式農業で世界を席巻してしまおうというぐらいの大きな夢を持ちましょうよ!

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