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ヘッジファンド 進む競争・淘汰 割安商品減り高利益難しく
世界中から巨額の資金を集め、綿密な投資戦略で高い利回りを目指すヘッジファンド。その投資成果の優秀さから、保守的な機関投資家も出資するようになり、規模が急拡大している。運用のウエートも“高利回り”から“安定性”にシフトし、日本の個人投資家らの資金流入も増えてきた。ただ、資金規模の急拡大で逆に利益を上げにくくなってきたとの指摘もあり、ヘッジファンド同士の競争激化、淘汰（とうた）が進むとの指摘も出てきた。（粂博之）
≪急成長≫
「ヘッジファンドが仕掛けた」。東京株式市場で相場が大きく動くと、市場関係者からこんな言葉が聞かれる。先の先を読み、巨額の資金を動かすヘッジファンドの動向は市場でも注目される。
民間のヘッジファンド調査機関などによると、現在、全世界に約八千六百のヘッジファンドがあり、運用資産総額は約百十兆円。最近十五年で規模は二十倍になった。二〇一〇年には三百兆−四百兆円に達するとの見方もある。
成長を続けるヘッジファンドが、投資先として最も注目しているのが日本などアジアだ。
日本でヘッジファンドを運営するＧＣＩキャピタルの山内英貴社長は「欧米市場には飽和感がある。高い投資利益を確保するには、日本市場や、中国、インドの成長力を取り込むことが欠かせない」と話し、世界の投資マネーの相当の割合が日本市場で運用されているとみる。
≪安定性≫
ここ数年のヘッジファンドの急成長を支えたのが、年金基金や大学基金、生損保といった機関投資家からの資金だ。
それまでヘッジファンドは、主に超富裕層の個人投資家らの資産を預かって運用していた。高度な金融工学を駆使し、相場の上昇、下落にかかわらず年１０％前後の利回りを実現。世界的な低金利で運用難の機関投資家からも、注目を集めるようになったのだ。
米エール大は〇五年、基金約百五十億ドルのうち２５％をヘッジファンドに投じ、ノーベル財団が今春、ヘッジファンドの活用を始めた。
こうした保守的ともいえる投資マネーの流入で「長期に安定的に利益を上げることが、強く求められるようになった」（山内氏）。
≪分散投資≫
個人投資家向けにヘッジファンドを組み合わせた投資信託も販売されるようになり、ヘッジファンドのセールスポイントとして、安定性は欠かせないものになっている。
このため、規模が大きくなった既存のヘッジファンドでは、複数の有望な新興ヘッジファンドに分散投資するのが主流になっている。ただ、世界最大級のヘッジファンド運用会社、英マン・インベストメンツの日本法人の森居誠司社長は「あまりに高い利益を目指す、新興ファンドは信用できないので採用しない」と話す。
世界的に金融引き締めが進むなか、株式や債券、商品先物などで割安なものは減っており、ヘッジファンドの増加やＩＴ（情報技術）の発達もあって、他に先んじて利益をあげることが難しくなっているからだ。
森居氏は「長期で安定的な利益を出すために、個々のヘッジファンド同士の競争は激しさを増すだろう。今後二年は過当競争から、淘汰が進む」とみている。
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【用語解説】ヘッジファンド
投資ファンドの一種で、１９４９年に米国のＡ・Ｗジョーンズが考案したとされるリスク回避（ヘッジ）型の投資手法。主に私募で資金を集め、株式、債券、外国為替取引や、それらに関する金融派生商品を組み合わせ、相場に左右されずに、利益を出すことを目指す。アクティビスト（もの言う株主）として投資先の価値を高め、売却益を上げる手法を駆使するファンドもある。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/27kei001.htm
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