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利上げでEU資金が落ち着くまで市場に近づけない。
ECBは、EUの生産性を「非常に非常に重要」とコメントを発表している。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20060509/101966/?cd=overture
2006年5月10日 水曜日 服部 哲郎
利上げ 欧州中央銀行 ECB
主要国の金融政策が注目される中で欧州中央銀行(ECB)の利上げが近づいている。5月4日の定例理事会では政策金利(短期オペ最低応札金利)を2.5%に据え置いたが、直後の記者会見でトリシェECB総裁が利上げを示唆したことから市場では昨年12月、今年の3月に続く追加利上げが6月に実施されるとの見方が強まっている。
ECBが利上げを継続する要因は以下の3点である。
第1に、ECBは企業動向調査の好転やユーロ圏の失業率低下からユーロ圏経済が回復の度合いを速めているとの認識を強めている。第2に、消費者物価(HICP)上昇率が当面前年比2%台で推移することが見込まれ、さらに原油価格の上昇から消費者物価の上振れリスクが高まっているとECBは判断している。第3に、活発な企業のM&Aや強含みの住宅ローン需要から民間部門向け銀行貸出の伸びが2カ月連続で前年比2ケタ台と加速している(図参照)。そのため、マネーサプライのインフレへの中長期的な影響を重視するECBには見過ごせない状況になっている。図に示したように2000年の金融引き締め局面ではレポ金利を4.75%まで引き上げた結果、景気を引き締めしすぎたが、現局面ではそのリスクは低いであろう。
欧州金利の中立水準は4〜5%
今後の注目点はECBの金融引き締めがどの程度まで進むかだろう。ECBは中立金利の水準に言及することを避けているが、かつてユーロ圏の中立的な実質短期金利は2〜3%の水準であるとの推定を示したことがある(ECB月報2004年5月号)。
インフレ率を2%と仮定すると、中立的な水準は4〜5%の範囲となり、現在は2003年以来の低金利政策の是正過程と言える。ただ、今回の金融引き締めは中立水準を大幅に下回るレベルで打ち止めになると思われる。理由は3つある。
まず、ユーロ圏の景気回復に不透明感が強い。たしかにドイツの代表的な景気指標である「Ifo景況感指数」などは改善中で企業の景況感は好調だ。しかし、輸出増加が設備投資を刺激し、雇用改善や賃金上昇を通じて内需拡大に結びつくという過去の回復パターンを、グローバル化が弱めている。
ドイツ企業などの投資は東欧諸国などのユーロ圏域外に流出する傾向が強く、一部の企業を除くと雇用を増やす動きは見られない。ドイツでは小売売上の不振が続き、消費低迷が深まっている。ECBの景気に対する強気の見方に修正が入る可能性がある。
次に、原油や銅などの市況は高水準で推移しているが、人件費の上昇に結びつきにくい状況が続いている。低コスト生産国であるハンガリー、ポーランドなどは工場労働者の人件費がその3分の1程度であるルーマニアなどと直接投資を巡る競争に直面しつつあり、賃金上昇圧力は弱い。
6月の追加利上げ後の上げ幅は限定的
ドイツでは有力労組IGメタルが3%の賃上げを勝ち取ったが、労働生産性の伸びの高い同国では十分に吸収可能で、インフレ圧力を高める形にはならない。グローバル化に伴う賃金抑制圧力は継続していると言える。
最後に、住宅ローン需要の沈静化である。スペインなどの住宅ブームは長期金利の上昇から次第に落ち着きを取り戻すと予想される。スペインの住宅価格は2005年第4四半期に前年同期比12.8%増と高い伸びを示したが、2004年第4四半期をピークに徐々に減速中。最近、スペインの建設、高速道路運営会社などが英国、イタリアなどの企業買収を活発化しているが、これは国内経済の成熟化を見越した動きにほかならない。
要は、ECBは低金利政策の修正を急いでおり、6月に追加利上げを実施する可能性は高い。しかし、最近のユーロ高進行もあり、追加利上げ後は状況に応じた金融政策の舵取りを迫られ、利上げは限定的なものにとどまる、ということになる。