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http://www.nikkei.co.jp/neteye5/tamura/index.html
不良債権解消に「第三の勢力」――ブッシュ・小泉連携の副産物(5/8)
小泉改革路線が築いた日本の姿を代表するのは不良債権処理であり、それはブッシュ・小泉の連携プレーの産物である。
都心の青空駐車場の再開発急ピッチ
連休に東京の都心をぶらりと散策すると、風景が一変していた。各所でいつの間にか雑居ビルが壊され、飲食店やゲーム・センターなどが立ち退き、数千平方メートル単位の用地に統合されて再開発が進んでいる。権利関係が輻輳して虫食い状態になっていたり、一部が青空駐車場になっていた地区が区画としてまとまり瀟洒なオフィス・ショッピングセンターに生まれ変わりつつある。
いわば休眠状態にあるか、あるいは場所にふさわしい価値を生めなかった土地が効率のよい資産になる。新しい需要と雇用の場を作り出し、投資家はこのセンターを保有する外資系投資ファンドに投資し、収益を確保する。東京ではこれまで汐留、丸ノ内などもともとまとまっていた用地に集中していた都心ビル建設ラッシュが銀行不良債権関連用地に及んできた。この波は関西など他の大都市圏にまで広がる勢いのようだ。
ブッシュ大統領の投じた「決め球」とは
2002年2月19日、来日したブッシュ米大統領は日本の国会で演説し、小泉首相を「アメリカの新しいベースボールスター、イチロー」にたとえ、「投げられた球をすべて打ち返すことができる」と持ち上げた。このときブッシュ大統領が小泉首相に投げた決め球とは自衛隊のイラク派遣のことではなかった。アメリカは過去に「不良債権を市場に出して、新たな投資を可能にした」とし、小泉首相の改革で日本経済に関しても同じ事が起こるだろう、と励ました。
ブッシュ大統領は来日前に小泉首相に親書を送り、不良債権の市場での処理促進を強く求めていた。銀行の不良債権が帳簿上での処理にとどまり、不動産や事業など企業の不稼働資産が処理されていない状況に苛立ちを隠さず、「早期に市場に売却されないことに、強く懸念している」とかなり具体的、直接に問題解決を促していた。
以来、小泉政権は金融機関の不良債権処理を加速させてきた。ことし1月の国会での施政方針演説で小泉首相は「揺らぐことなく改革の方針を貫いてきた結果、日本経済は、不良債権の処理目標を達成し、政府の財政出動に頼ることなく、民間主導の景気回復の道を歩んでいます」「主要銀行の不良債権残高はこの3年半で20兆円減少し、金融システムの安定化が実現した」と胸を張った。
冒頭で挙げたような風景はまさしく「小泉改革」の戦果である。だがどうやってこの不良債権再生のビジネス・モデルが実現したのだろうか。第一に、大手の日本の金融機関は不良債権の最終処理(売却などによる処分)に手間取り、不動産融資を本格的に再開するゆとりがない。在来の大手不動産業者も手が出せない。該当地区の一部は裏社会がらみの利権がからんでいる。暴力団を使った荒技による「地上げ」は企業のイメージをそこなう。つまり、バブル期のような不動産開発のビジネス・モデルは通用しない。
台頭しているのは、第三の勢力である。資金を持ち、地上げをやり遂げる組織力もある。ノンバンク系金融サービス、IT(情報技術)ネットのサービスなど新興企業への出資や経営により、キャッシュが手元にふんだんに入ってくるので、銀行融資に頼らなくてもよい。最終的には外資系などの投資ファンドに資産を売却して、投資を回収する。第三の勢力と外資をつなぐ全体のとりまとめを日本の有力な企業グループが引き受けると、このビジネス・モデルは完成し、表向きには第三の勢力の介在が目立たない。
「米軍の上陸戦略」まで動員したビジネススタイル
前回のコラムでも指摘したが、ブッシュ政権は2001年の発足当時、日本の不良債権問題が深刻なのは不良債権になった不動産など資産の多くが組織暴力団系にからんで流動化できなくなっていることを調べ上げていた。米国系の投資ファンドはバブル崩壊により急落した日本の不動産への投資を強化していたが、裏社会の関与が障害になっていることに苛立っていた。
不良債権の市場処理については、民間金融機関と情報機関、軍関係者までが緊密に連絡し合っていた。大手の米系投資銀行は日本の資産買いに際し、米軍の上陸戦略、占領手法を活用している。参謀格に米軍出身者を据え、情報収集、危機管理を迅速にこなす。これらの元軍人の多くは日本駐留の経験もあって日本の事情に通じているうえに、法律家の資格も持っている。不良資産を買い取り、優良資産に仕立て上げる過程ではさまざまなトラブルが発生する。米側関係者の居場所や電話番号などの連絡先から脅迫や誘拐対策まで完ぺきな危機管理マニュアルを備えている。
「まるで対日再占領のようですね」と、米政府筋に水を向けても動じない。「われわれは直接投資により日本企業の改革や経営陣の世代交代を促し、日本経済を強くしたいのだ」と言っていたのを思い出す。
改革を後押しする「政治的余地」の根源
だが、ここへきて、第三の勢力の台頭で不良債権のもつれがときほぐされ、外資系としてみずから裏社会と直に関与したり取引する必要もなく、投資できるビジネス・スキームが整った。日本経済は活性化し、虫食いになっていた都心の一等地も見事に再開発される。銀行は不良債権をめでたく最終処理できる。
ブッシュ政権は共和党系のサーベラスやカーライルを含む米系投資ファンドによる対日投資機会の拡大を評価し、小泉首相は不良債権処理と日本再生の成果を誇る。日本の金融関係者などの間では、第三の勢力の一部はもとはと言えばいわゆる舎弟企業または、「表」のビジネス社会に参入・浸透しているとも言われる組織暴力団系企業との見方も根強い。
それでも、結果よければすべてよし、ということか。経済学の教科書風に解釈すれば市場メカニズムによる資源の適正配分、つまり資本主義の合理性を実現するわけだが、きれい事だけでは現実の経済は理論通りの方向には動かない。そこに日本の首相が米国の大統領に背中を押される形でリードする政治的余地がある。
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