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我が国の対外直接投資残高(823億SDR)の約3倍の対外直接投資残高をもつアメリカの多国籍企業活動を見る。  
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投稿者 hou 日時 2006 年 5 月 13 日 21:16:51: HWYlsG4gs5FRk
 

(回答先: より長期の上昇相場継続=より大きなバブル:マーク=ファーバーがFRBによる人為的バブル形成を激しく非難!! 投稿者 愛国心を主張する者ほど売国奴 日時 2006 年 5 月 13 日 19:14:22)

第6節 世界の直接投資構造の変化と我が国企業の国際的事業展開

1.世界の直接投資の新しい流れ(貿易から投資へ)
国家間の経済活動の交流として財・サービスの移動(貿易)と資本の移動(投資)
が重要である。従来から貿易は世界経済において重要な役割を果たしてきたが,投資の役割の重要性は近年著しく高まっている。特に直接投資は,単なる資本移動ではなく,技節や経営手法の移転を伴ったものであることから,投資国及び投資先国経済に好影響を与えるものであり,特に重要である。

直接投資の重要性の高まりを理解するため,世界の直接投資を他の経済活動(貿易)や経済活動全体(経済成長)と比較して,その伸び率や大きさをみることとする。まず,伸び率で見ると77年以降は世界の直接投資残高は実質貿易伸び率や実質経済成長率を上回りながら上昇した。1988年の世界の実質GNP伸び率4.4%,実質貿易伸び率8.7%に対し,直接投資残高の伸び率は13.8%となっている(第3 -6-1図)。

直接投資フローの規模についても,直接投資フローの貿易に対する比率(名目ベース)は80年代の後半にかけて急速に上昇しており,85年に2.6%であったものが88年には4.9%と過去最高の高い水準に達している。このように, 80年代に入りこれまで世界経済活動の主流であった貿易活動に加えて,直接投資活動が大きな役割を担うようになっており,現在では,世界経済全体の動きを理解するためには,直接投資の動向を把握しておくことが必要不可欠である。以下,世界の直接投資連関の構造を分析する。

(世界の直接投資の大きな流れ)
世界の直接税資は70年代から80年代にかけて急速に拡大し,1988年の世界の直接投資の残高は,8,753億SDR(1兆1,763億ドル)で1960年残高677億SDRの約13 倍に達している(第3-6-2図:1SDRは1990年平均で196.45円,1.37ドル)。

直接投資残高の推移を直接投資の出し手の側面から見ると,1960年にはアメリカが全体の47.1%,ヨーロッパが45.2%を占めていたが,1988年ではヨーロッパが52.6%と一番の出し手となり,それに次ぐアメリカが28.4%とシェアを下げている。ヨーロッパの対外直接投資の拡大が顕著である。一方,直接投資残高を受入れ側から見ると1988年ではヨーロッパが35.0%,次いでアメリカが 27.9%を占めているが,発展途上国の割合も23.0%と大きい。

途上国の中でも特にアジア,ラテンアメリカの割合が大きく,アジアについては1967年に全体の4.9%であったものが,1988年には7.2%に増大している。このように,世界の直接投資の流れは70年代から80年代にかけて,先進国ではヨーロッパの対外及び対内投資の拡大,発展途上国ではアジアの対内投資の増加が顕著である。

また,直接投資のフローを出し手の側から見ると,1980年代の我が国直接投資の急速な増加,ヨーロッパの堅調な拡大,アメリカの急速な縮小が特徴的である。直接投資フローを受入れ側から見ると,フローべ−スでは年毎に大きく変動があるが,傾向としてはヨーロッパへの直接投資の増加,発展途上国への投資の減少が顕著である。
(1980年代の世界の直接投資構造変化の特徴)

1967年のEC成立(6か国)以後,第1次石油危機(73年),第2次石油危機(79年),プラザ合意(85年)を節目ととらえ,その間を第T期(67〜73),第U期(73 〜80),第V期(80〜84),第W期(84〜88)として世界の直接投資構造の連関を直接投資残高(受入れベース)を指標として分析する(第3-6-3図)。
ここでは,ドルレートの変動が世界の直接投資の評価に与える影響が大きいことからSDRを使用することにした。
1980年代を中心に1967年以降の直接投資構造の連関を見ると,次の3点が特徴的である。
ーロッパ経済が好調な上に,92年のEC市場統合を目前に控え,世界の企業がその市場としての有望性に注目し,イギリス,ドイツ,オランダを中心としたヨーロッパ(東欧を除く)への直接投資が急速に進展した。世界の直接投資残高の伸び率は84年から88年の第W期で9.2%であったが,ヨーロッパの受入れの寄与度では第W期の4.0%,寄与率では43.5%に達している。80年から84年の寄与度が4.5%,寄与率が36.3%であった。80年代後半は,直接投資の受入れの主役はヨーロッパに移っていることが特徴的である。
資の投資国を見ると,域内投資が活発化し,全ヨーロッパ投資に占める域内から
の投資割合は約5割に達した。これは,EC市場統合への対応策として,M&A,ジョイントベンチャーの設立などの形態で,ヨーロッパにおける相互投資交流が活発化したことによるものである(なお,第4章第1節参照)。
ある。対アジア投資は,85年にやや停滞したものの,外資規制の緩和政策や構造調整の進展により80年代後半に回復した。アジアへの投資国も第1V期と第W期で変化をみせている。第V期で全アジア投資の中で大きな割合を占めていたアメリカのアジアへの投資が横ばいで推移する一方,我が国のアジアヘの投資が円高を背景に急拡大している。さらに,アジア域内においては NIESが賃金の高騰,自国通貨の対ドル切り上げを背景にASEANに対する投資を積極的に行った。その結果,全アジア投資受入れに占める我が国を含めたアジアの域内投資の割合は約4割に達した。
(世界の直接投資構造の推移)
以上,第W期における変化をみてきたが,以下期別に第V期までの世界の直接投資の動向を追ってみることとする。
@ 第T期(1967〜73)
ヨーロッパヘの直接投資が増加しているのが特徴的である。これには,1967 年のEC成立(6か国)後のアメリカ多国籍企業の進出の寄与が大きい。その背景のひとつに,ヨーロッパの地域主義的な動きに対する懸念があったと考えられる。ヨーロッパ各国のうち増加がめだって高いのはイギリスとドイツであるが,イギリスにおいては73年のEC加盟により,米国多国籍企業を中心として直接投資が急増した。ドイツにおいては高成長を背景として,アメリカ,ECからの直接投資が増加している。
一方,途上国ではラテンアメリカヘの投資の増加が顕著である。ラテンアメリカへの投資については50年代では石油を中心とする資源部門の比重が大きかったが,60年代以降は輸送機械,電気機械,化学製品,食料品等の製造業への傾斜が著しい。例えば,1971年現在,メキシコの保税加工区で操業する米国企業数をとりあげると,電子,繊維,雑貨関係など150社ほどに及んでいる。他方,アジアにおいては,石油関係の投資が依然として中心を占めている(第3-6-4図)。
A 第U期(1973〜80)
この期間の世界経済の環境は,先進国における1975年,80年の不況,イン・フレの持続という状況から,投資交流拡大には決して望ましいものではなかったが,先進国間においては直接投資の順調な拡大がみられた。先進国において特に顕著なのは,対米投資の寄与度の上昇である。対米投資のうちヨーロッパが約4分の3を占めており,なかでも歴史的に対米投資に大きなシェアを占めるイギリス,オランダの割合が高い。いずれの国の場合も,石油業・金融業における収益再投資,製造業における企業買収などが顕著である。また,対ヨーロッパ投資については,特に既進出外資系企業の利益再投資が活発だったイギリス,労働生産性の高さや努使関係の安定性において優れているドイツに対する直接投資の増加寄(図表のみ)
与度が高い。
一方,発展途上国では,韓国,台湾,シンガポール,ブラジルなど,当時のいわゆる「中進国」においては,外資導入による工業化を推進し,「特恵制度」を活用して急成長を図ったため,それらの国に対する直接投資力増大した。メキシコ,ブラジルなどのラテンアメリカにおいては,アメリカ,ヨーロッパからの投資が主流であったのに対して,アジア特に韓国,シンガポール,マレイシアにおいては,日本からの投資が欧米を上回った点が注目される(第3-6-4図)。
B 第V期(1980〜84)
この時期,米国経済は82年の不況ののち,景気は急速に回復し,84年には50年代初頭以来の高い成長率を記録している。また,金融引き締めにより2桁インフレは収束したが,金利は10%を超える水準で推移した。このような経済環境の下,1980年の諸外国の対米直接投資は初めてアメリカの対外直接投資を上回り,アメリカは直接投資で流入超過国になった。特にヨーロッパ,日本からの対米投資が急増し,以後この傾向が定着する。対米投資急増の要因としては,高金利を背景とした在米外国子会社への親会社の貸付,企業買収ブームの発生等が考えられる。一方,ヨーロッパ経済は,低成長,高インフレ,失業率上昇,企業収益の悪化の状況が続き「ユーロ・ペシミズム」が広まっていた。このような経済環境を反映して,この時期のヨーロッパに対する直接投資の増加寄与度は小さい。ドイツにおいてさえ,米国系石油会社の事業規模縮小など,投資の縮小,撤退がなされた。
発展途上国ではアジアの増大が顕著であり,70年代を通して日本のプレゼンスの高かったアジア市場に米国の多国籍企業が注目し,着実に対アジア投資を伸ばしたことが特徴的である。例えば,シンガポールには米国エレクトロニクスメーカーが40社以上進出した。一方,ラテンアメリカは総じてアジアと対照的に景気は低迷し,インフレは上昇するなど投資環境は悪化した。84年になって米国の景気拡大,外資規制の緩和等によりメキシコへの投資が急速に回復したのが注目される(第3-6-4図)。
(グローバル化する企業活動)
世界の直接投資残高の増加の背景には,企業活動のグローバル化の進展がある。通商産業省の「海外事業活動基本調査」によると,世界総輸入に占める我が国多国籍企業関連輸入の割合が増加し,89年度には3%になるとともに,日本の輸出入に占める我が国海外子会社の対日輸出入の割合も増加している。世界貿易や我が国の輸出入に占める我が国多国籍企業のウェイトは大きくなっており,我が国企業のグローバル化が進展していることを示している。また,世界輸入に占める企業内取引(本国企業,海外子会社の相互の輸入計)の割合も増加傾向にあり,86年度に0.7%であったものが,89年度には1.3%に上昇している。これは,多国籍企業が世界的な地域分業構造を構築しつつあることを表している(第3-6-5図)。
一方,我が国の対外直接投資残高(823億SDR)の約3倍の対外直接投資残高をもつアメリカの多国籍企業活動を見ると,世界輸出に占める米国多国籍企業関連輸出の割合及び米国輸出入に占める海外子会社の対米輸出入の割合はそれぞれ約2割,また世界輸出に占める企業内取引(本国企業,海外子会社間の相互の輸出計)の割合は約1割であり,我が国多国籍企業のそれと比して大きく,アメリカ多国籍企業のグローバル化の進展度が大きいことが理解できる。


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