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ロシアの金融資本市場近代化への道(中)製造業への融資増える。
長期資金不足に不満強く
「銀行の貸し渋りなんて企業側の言い訳。事業が有望で経営が透明な会社なら銀行は競って貸す」。スドストロイーチェリヌィ銀行のパンテレーエフ副頭取は中小企業の主張を一蹴(いっしゅう)した。
「ロシアの銀行は石油・ガスや金属資源などの輸出型大企業しか相手にしない。内需に依存し外国で資金調達ができない中小の製造業者は頼る先がない」との不満は根強い。これに対し同行は製造業に積極的に融資する銀行として知られる。
パンテレーエフ副頭取は「採算性や事業への取り組み方、返済能力を独自にきちんと判断すれば、輸出企業より優れた会社は実際にある」と断言する。
同行の貸付残高は二億八千万ドル。一社当たりの平均融資額は百万ドル弱で最大三百万ドル、最小は十万ドルという。融資先の多様化を進めており、最近は印刷や小売りチェーン、漁業関連の食品加工、不動産デベロッパーなどの開拓に力を入れている。今後は航空機リースを強化する。融資先を絞るよりも逆に広げる方がリスクヘッジになるとの判断があるようだ。
融資期間は最大五年まで長期化してきた。「二年前には考えられなかった長さだ」(同副頭取)。「年一二%という金利は一見高く見えるがロシアには十分採算の合う会社がたくさんあるし、市場の状況に応じてさらに下げていく。融資高も増やす」。パンテレーエフ氏は強調する。
同行に限らず製造業に融資する銀行は増えている。銀行界全体の企業向け貸付残高は二〇〇五年十二月一日現在で千三百八十七億ドル(ドル換算)と、約三年間で二・八倍に増えた。国内総生産(GDP)比では二〇・八%に高まった。
「九〇年代の銀行の多くは為替、国債の売買が収入源。単なる予算の経由手段だった銀行もあり本物とは言えなかった」。世界経済国際関係研究所のシュビドコ主任研究員はこう総括したうえで、「二〇〇〇年代に入って初めて『銀行』が登場した。まだ経験が浅く、難しい事業環境の割には機能している」と評価する。
それでもなお中小企業に不満が強いのは、銀行の体力が依然乏しく融資規模が小さいことと、長期資金が不足していることだ。現在でも銀行数は千四百行前後あり、懸案である再編はなかなか進まない。
中銀は一時、銀行に義務づける最低資本金を大幅に引き上げて強制的に再編を促そうとしたが現実には実行できなかった。九〇年代初期の設立時の経緯から本当の株主が不透明な銀行が多く、自発的な合併も難しいことも背景にある。中銀が〇四年、資金洗浄行為を理由に何行かの免許を取り上げたところ銀行間市場でミニパニックが生じてしまった。
そこで中銀は現在「極力混乱を避けつつ十―十五年かけて再編を行う」(シュビドコ研究員)つもりのようだ。内務、税務当局と組んで一行一行の不法行為を静かに摘発し、国民が気づきにくい手法を取っている。
一方、長期融資資金の不足の裏には長期預金の不足問題がある。九八年の金融危機の記憶はまだ預金者に新しく、一年超の預金を望む人は多くない。ユーロ債など国外から長期資金を取得する手段を持たない多くの銀行はALM(資産負債管理)の観点から融資期間を長くできない。
いずれも構造的な問題であり改善には時間がかかる。銀行部門の拡大は国民全体の企業文化と金融文化の発展と並行して「ゆっくりと進んでいく」(ワシリエフ上院議員)とみられる。
(モスクワ=栢俊彦)
【図・写真】スドストロイーチェリヌィ銀行本店はナポレオン戦争でも焼失しなかった有名な建物(モスクワ中心部)顔写真はパンテレーエフ副頭取