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JMM [Japan Mail Media]  財政が破綻すると何が起こるか
http://www.asyura2.com/0601/hasan45/msg/951.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 4 月 18 日 02:43:32: ogcGl0q1DMbpk
 

                              2006年4月17日発行
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JMM [Japan Mail Media]                 No.371 Monday Edition
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                        http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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▼INDEX▼


■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』【メール編:第371回】

   □真壁昭夫  :信州大学経済学部教授
   □菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
   □津田栄   :経済評論家
   □山崎元   :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
   □金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務

 ■ 『編集長から(寄稿家のみなさんへ)』


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 ■ 先週号の『編集長から(寄稿家のみなさんへ)』
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 Q:705への回答ありがとうございました。情報への対価ということでは、わた
しも作品の取材で情報提供者に謝礼を支払うことがあります。『半島を出よ』や現在
執筆中の『歌うクジラ』などの作品は、いろいろな意味でかなりきわどい情報を必要
とすることが多く、提供者の中には情報源の秘匿を条件にしながらかなり高額の謝礼
を要求してくる人もいます。しかし、1000万円というような対価はあり得ません。

国内はもちろん、アメリカ、欧州、東アジアなど、どのような国・地域でも、またど
んなに希少性・秘匿性の高い情報でも、その対価が日本円にして10万円を超えるこ
とは極めて稀です。

 民主党が1000万円の対価を用意することも考えたという記事を読んで、目眩が
しました。「情報の対価とリスク」はあらゆる問題に通じる普遍的で象徴的なテーマ
ですが、あまりに浅はかな民主党の認識と、その閉鎖性に愕然としました。「政治家
というのはよく愚かなことをするが、いくら何でもそれほど愚かではないだろうと
思ったときに限って、裏切られて愕然とする」というような意味のことを『半島を出
よ』のある登場人物の台詞として書きましたが、まさにそういう事態を目の当たりに
した感じでした

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■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』【メール編:第371回目】
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====質問:村上龍============================================================

Q:706
 政府は「財政再建の工程表」を6月に発表するようです。もし財政再建に失敗し、
日本の国家財政が破綻するという事態を想定すると、具体的にどういったことが起こ
るのでしょうか。

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※JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・
組織の意見・方針ではありません。
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 ■ 真壁昭夫  :信州大学経済学部教授

 財政が破綻するということは、具体的には、発行済みの国の借金である国債の利払
いや、元本の償還が出来なくなることと考えればよいと思います。一般的に、こうし
た事態が発生する可能性が高まると、誰も国債を買わなくなるので、国は、事実上、
新たに国債を発行することが出来なくなります。それは、国にとっては大変なことで
す。現在のわが国の予算を見ると、税収だけでは歳出を賄うことができず、国債の発
行によって補填していますから、実際上、予算を組むことが難しくなります。

 ただし、現在のわが国の状況を考えると、国内の資金は潤沢にあり、しかも、国民
は国を信用して国債を買っています。従って、国が多額の国債=借金を抱えているか
らと言って、直ぐに国が破綻することはありません。

 しかし、今後、財政破綻が現実味を帯びるケースとして、国が信用力を失って、国
民が国債を買わず、海外資産に逃避してしまうことが考えられます。その場合には、
国は信用力を回復するか、信用力に見合った、相対的に高い利回りをつけなくてはな
りません。また、中・長期的に見て、少子高齢化などの進展により、国民の貯蓄率が
低下して、国債を購入する余裕がなくなってしまうケースが想定されます。この場合
に、国が多額の国債発行を続けるためには、国債の消化を海外投資家に頼ることにな
ります。海外投資家に、わが国の国債を買ってもらうためには、利回りを上げて期待
収益率を引き上げる必要があるでしょう。

 ロシアやアルゼンチンなど、財政が破綻状態になった例を考えてみます。いずれの
ケースでも、財政が破綻状態になったからと言って、国がなくなったわけではありま
せん。いずれも、今は、しっかり立ち直っています。しかし、財政状況に極度の不安
が発生する場合、一時的に、経済に大きな混乱が生じることは避けられないでしょう。

先ず、国債の償還などが出来なくなるわけですから、一部国債のデフォルトや、ロー
ルオーバー(期限延長)などが発生します。

 それによって、金利水準が上昇することが想定されます。そうなると、国内の資金
循環が上手く行かなくなることが考えられます。一般企業の資金調達にも支障が出る
可能性が高くなるでしょう。資金調達が、思うように出来なくなると、企業の経済活
動に大きな制約が出ます。それによって、経済全体の活動が落ち込むことが考えられ
ます。経済活動がシュリンクすると、私たちの給料が下がったり、失業が増えたりす
るかもしれません。国民生活にも大きな影響を与えることになります。

 また、財政状況が悪化するわけですから、短期的に、国は歳出を絞ることになる
でしょう。国の歳出を絞る場合には、具体的には、増税を行ったり、社会保障費の国
庫負担分を減らしたり、失業保険を減額することが予想されます。これもまた、国民
生活に大きな影響を及ぼす要因と考えられます。中・長期的にも、国は、国民に対す
るベネフィットの提供を縮小して、財政の建て直しを図ることになりますから、国民
は国から受けるベネフィットが縮小することを覚悟することが必要でしょう。

 いずれにしても、財政状況が極端に悪化した後は、どこの国でも、一時的な経済混
乱は避けられないと思います。しかし、歳出を絞ったり、国民負担率を引き上げる等
して財政の建て直しを図り、それが上手くいった後は、しっかりした経済基盤を再生
している国は多いと思います。財政の問題について、過大に悲観的になる必要は無い
でしょう。

                       信州大学経済学部教授:真壁昭夫

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 ■ 菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト

 9月の自民党総裁選で誰が小泉首相の後継になろうとも、次期政権の政策優先項目
は財政再建になると思われます。日本はデフレや不良債権など様々な構造問題を解決
してきましたが、財政赤字と少子高齢化問題が未解決です。人口は昨年から既に減少
に転じ、少子高齢化が進展するほど、財政が悪化するため、両者はひとつの問題とも
いえます。日銀の利上げ観測も寄与していますが、最近、国債利回りは急上昇しまし
た。2007年には小渕政権が発行した大量国債の償還を迎えるなど、国債管理政策
の観点からも財政再建が必要となっています。

 財務省も財政再建の重要性を説くキャンペーンをしています。財務省のホームペー
ジをみると、左下に「財政問題に関する特集」「ご存知ですか?国の家計簿の現状、
国の借金」など、よく動くため目立つバナーがあります。「財政再建に失敗したら、
具体的にどういったことが起こるか?」というご質問に対する標準的な答えは、全て
このサイトに書いてあります。

 財政赤字の膨張の問題点としては、(1)財政の硬直化→効率的な資源配分の阻害、

(2)国債に対する信任低下→将来不安からの消費減少や金利上昇による投資抑制を
通じて景気低迷が起り、また(3)世代間の不公平拡大などを通じて、活力ある経済
・社会の実現の妨げになると書かれています。これらは理論的には全て正しいでしょ
うが、実現するかどうかは、その他要因に依存すると思われます。例えば、不況時に
財政再建を断行すれば、不況を加速し、さらに財政赤字が拡大します。日本のように
財政赤字を国内でファイナンスできる国は財政赤字でも問題ないという考え方もあり
ます。世代間の不公平拡大についても、将来世代も便益を享受できる社会インフラな
どに財政赤字が費やされるならば、財政赤字は問題ないともいわれます。

 小泉首相の任期満了を9月に控えて、次期首相候補とそれを応援する政治家間では、

財政再建と経済成長のどちらを優先するかで、経済論争と権力闘争が始まっています。

中川政調会長を中心とする自民党財政改革研究会は4月3日に「活力ある経済・財政
一体改革の設計図」を発表し、「2011年度に実質成長率2−3%、名目成長率4
%の達成を目指し、基礎的財政収支を黒字化する」と主張しました。中川政調会長と
タッグを組む竹中総務相も「名目経済成長率と税の自然増収を高めることで、消費税
引き上げ幅は3%で済む」と主張しました。一方、経済財政諮問会議は4月7日に
「歳出・歳入一体改革中間とりまとめ」を発表しましたが、経済成長率と長期金利の
前提で意見集約できずに、9通りもの組み合わせを発表しました。名目成長率2%と
長期金利4%が前提の場合、財政健全化を達成するためには2%以上の基礎的財政収
支GDP比の黒字が必要という計算になります。経済財政諮問会議のメンバーの1人
である吉川東大教授は「長期金利は成長率より高くなるのが正常な姿」と述べました。

近年は長期金利が成長率より高いことが多かったのは事実です。石政府税調会長も
「日本の経済成長と少子高齢化を考えると、消費税引き上げ幅が3%にとどまること
はあり得ない」と述べました。

 次期首相候補の最有力と見られる安倍官房長官は、最有力であるがゆえ、実際に政
権を就いた場合に揚げ足をとられないようにするためか、経済政策に関する発言を慎
重にしている感があります。麻生外相は「安倍さんから経済の話を聞いたことがない」

と述べました。一方、谷垣財務相は消費税引き上げの必要性を積極的に説いています。

有力候補との差別化戦略の1つと見なされます。9月の自民党総裁選に向けた経済論
争の行方が注目されます

               メリルリンチ日本証券 ストラテジスト:菊地正俊

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 ■ 津田栄  :経済評論家

 日本の国家財政が破綻するという事態は、想像しがたい面はありますが、現実に、
財政再建に失敗し、このまま政府債務の増加が続けば、財政破綻が起きないという保
証はありません。ただ、ある日突然起きるわけではなく、その予兆なり、いくつかの
出来事が起きながら、少し時間をかけて、最終的に財政破綻が起きるということにな
るのではないかと思います。

 現在の政府債務は、国債発行残高だけでも05年度末で約540兆円弱、また地方
を含めた長期債務で約770兆円、短期も含めた中央・地方政府債務は1000兆円
を越えるものとなっています。こうした政府債務の現状から、政府の歳出削減はもち
ろんのこと、同時に増税をすべきかどうかで政府内で争われています。個人的には、
数字だけで言えば、増税も必要でしょう。ただ実際には、増税が時によっては景気下
落時になされると、個人消費などの国民の行動が萎縮し、消費が伸び悩みます。それ
が需要減となって企業の設備投資の停滞となり、企業収益の減少、リストラを通じて
の個人の所得減となってスパイラル的に経済が悪化します。その結果、想定よりも税
収の伸びず、政府債務が増大する可能性すらありえます。

 もし、政府が描く財政再建のシナリオが崩れて、国家財政が破綻するという事態が
来る時は、まず景気が悪化して、歳出削減を上回って、予想以上に税収が落ち込み、
国債の発行が急増するということから始まります。今でさえ、国債発行残高は、GD
Pを超えています。そして、今後も利払費と償還国債が増大するにつれ借換債の発行
が増え、国債残高の増加が予想されています。それも景気が堅調に推移して、税収が
着実に伸びるという前提ですから、その景気の前提が崩れれば、そうした楽観的な予
想(それだけでも厳しい状況なのですが)は絵に描いた餅になります。

 現在の日本経済が戦後最長の「いざなぎ景気」を抜くのではといわれていますが、
それも何とか世界経済が大きな紛争もなく堅調に推移してきたおかげです。ただ、今
後もそれが保証されているわけではないことを考えると、世界経済の循環から言って
もここ数年で景気がピークを打って、低迷する時期が来ることもありえます。その時
は、景気低迷により税収が落ち込み、もし増税によりさらに景気悪化、税収減が加速
してしまうと、政府の国債残高は急増し、政府債務が膨張することになります。

 このとき、国債が、1500兆円もある個人資産をもとに国内で消化されている時
はまだいいのですが、いずれ、加速度的に増える国債や地方債その他の債務に、国内
の買い手が買いしぶり始めた時、消化のために金利などで好条件を出して海外を含め
て資金調達に走れば、さらに国家財政状況が悪化していきます。もちろん、この間に
景気が回復してくれば税収がまた増えるでしょうが、長期金利をはじめとする金利全
体が上昇して利払い負担増を招くことになれば、一旦悪化し始めた財政状況を改善し
ていくのは容易ではないと思います。

 そして、国内の資金が、さらに海外に逃避し始めると、金利の上昇が加速し、為替
も円安に大きく振れはじめると想定されます。もちろん、国家財政を重視して2、3
年前に行なったように、地方への交付金の大幅カットを行い、見かけ良くしようとし
ても、地方経済が大きく落ち込み、そこから地方財政が先に破綻し、その破綻の連鎖
が始まるといずれ国にまで達することになります。どちらにしても、今の800兆円
弱の債務情況と悠長な歳出削減シナリオからして、ちょっとの景気回復で税収が伸び
ても、それを上回る金利上昇による負担増から改善はわずかであり、景気が悪化すれ
ば、さらに債務は膨張して手に負えなくなる水準にきてます。

 そうした予兆や出来事を通じて、金融、為替、株式市場がリスク回避から大きく反
応して、政府を追い込んでいくとみられます。また、いち早く海外からの投資が手控
えられ、いずれ撤退が相次ぐことになります。そして、それらの結果として国家財政
が破綻すれば、日本経済は、第一次大戦後の大恐慌期のドイツや直近で起きた中南米
のような景気悪化のなかの超インフレ、そして金利急騰、円の大幅な急落などで日本
円の価値がほとんどないに等しい状況となります。政府は、国債の金利支払不能に加
え償還不能からモラトリアム宣言して、実質的にデフォルトし、国債は売りたくても
値段がつかないくらい下落し、紙くず同然になります。一方、海外も日本の財政破綻
の悪影響をできるだけ回避するために、日本との貿易や金融取引の停止、日本資産の
移動制限・凍結など強行策を採ってくるかもしれません。もちろん、それでも日本経
済の世界における規模からして、戦前の大恐慌ほどの影響を受けて、世界的に経済が
失速することが考えられます。

 当然、国債投資家はまるまる損をします。そして日本企業の発行した債券は、金利
急騰により国債同様ほとんど値がつかなくなります。また、金利上昇、景気悪化によ
るスタッグフレーションから急速に企業収益が悪化、中小企業を中心に倒産が相次ぎ、

いずれ大企業にも波及してきます。もちろん、株式市場も戦前の大恐慌のように暴落
となりましょう。ただ、海外に経営資源を移転している企業ではその傷は国内企業よ
り小さいかもしれません。当然、日本の金融機関は、国債や地方債など国内債券を中
心に運用する一方国内企業に融資していますから、その悪影響をもろに受けて、中小
から破綻していくと見られ、大銀行も経営困難に陥るかもしれません。そして、民営
化を目指す郵便局も例外ではありません。

 そうした結果、企業の倒産から失業者が急増し、一方財政が破綻している政府とし
ては、失業保険など社会保障関連の支出はできなくなりますから、生活に困窮する人
が続出すことが考えられます。もちろん、銀行が倒産していれば、預金もなくなりま
すから、失業してなくても、多くの人の暮らしはかなり急迫します。そして、問題は、

定年退職して年金生活をしている高齢者でしょう。将来の生活のための預金を失い、
年金ももらえなくなった時、現役世代と違い働くこともできず、生活はほとんどでき
なくなるかもしれません。

 一方、政府の財政破綻は、公務員の給料の支払いも困難になってきます。もちろん
政府機能が全面ストップするほどかどうかは分かりませんが、少なくとも給与の遅配
がおき、公務員のモチベーションは落ち、行政の執行、行政の窓口は滞るでしょう。
これが警察官や自衛隊員にまで広がると、当然職場の放棄、業務の停滞による犯罪の
頻発、海外からの侵入・侵略を許し、治安や国防に相当深刻な状況が生まれるかもし
れません。また、小学校・中学校の公教育も滞り、子どもたちの行き場もなくなるか
もしれません。

 こうして財政破綻から、国内の社会不安は増幅し、多くの国民の生活水準は低下し
落ち込むことが予想されます。もちろん、そうした状況では、都市部で食糧確保さえ
間々ならず、戦前のドイツであった荷車一杯のお札を積んでしか生活できないという
ようなことが起きるかもしれません。そうなったときは、都市部に住んでいた人たち
の一部が地方に流れ、自分で耕作して家族が食べる分だけの食料を確保し、生活する
姿が生まれるかもしれません。つまり、経済構造がこれまでの製造・サービス産業中
心から再び農林水産業などの第一次産業の復活となり、都市と地方における人の偏在
が解消し、格差が緩和するかもしれません。

 しかし、片や、こうした政府の財政破綻のシグナルを早くからキャッチし、資産下
落のリスクを回避するために国内からいち早く海外に資金などを逃避したり、あるい
は事前に国民の生活に必要な食料や衣料品などを買占め、この混乱を利用して大儲け
する人もでてくるかもしれません。その結果、貧富の差は拡大し、個人間の経済格差
は今以上になっているかもしれません。企業においても同じことが言え、企業倒産し
ていくなかにあって市場を独占していく企業も一方で登場し、少数の独占企業と多数
のどうにか経営している企業との間に大きな格差が生まれてくるでしょう。

 もちろん、日本は終戦時においても、政府機能の停滞、ほとんどの産業の壊滅から
一時的な混乱を経験した後、復活してきましたから、こうした状況がいつまでも続く
とは思っていません。あの当時と同様、世銀やIMFの管理下におかれて、金融支援
や政策支援などを受けることになります。そうしたなかにあって、負債をチャラにし、

身軽になった政府は、いずれ政府機能を徐々に回復させてくるはずですし、社会的な
混乱も時間の経過とともに収束し、国民の生活も低水準にありながら落ち着いてくる
といえましょう。そして再度、産業の復活に向けて動き始めるものと思います。ただ
し、少子高齢化が深刻化する日本にとって、そのテンポは終戦時のようなスピーディ
ーなものではなく、ゆっくりとした時間のかかるものになるのではないでしょうか。

 最後に、こうした日本の財政破綻後のシナリオは、最悪を想定したものであり、必
ず起きるともいえませんし、また起きて欲しいものでもありません。しかし、ここま
で膨らみ続けた政府債務を見るにつけ、簡単に解決するものではなく、また楽観論で
解消するものではないので、市場が過剰に反応して思わぬ方向に向かうこともありえ
ます。かといって、大幅増税で、一気に解決できるわけではないのは、感情と欲望を
持つ国民が萎縮してしまい、予想外の最悪の結果を招くことも想定されるからです。
やはり、ここは、大幅な行政改革による徹底した無駄の排除と業務の効率化を図り、
ドラスティックなまでの歳出削減を実現した上で、国民のやる気と責任を引き出しな
がらの財政再建を行なうことが求められるのではないかと思います。
 
                             経済評論家:津田栄

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 ■ 山崎元  :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

 ご質問にお答えするには、先ず、「国家財政の破綻」がどのようなものであるかを
定義しなければなりません。近刊の経済政策の解説書(岩田規久男、飯田泰之『ゼミ
ナール経済政策入門』日本経済新聞社。体系的で且つ読みやすい、素晴らしいテキス
トでした)を繙いてみました。財政破綻に関する定義は(実際には「財政破綻でない
場合」が定義されていますが)、政府にとって、緩めのものと、厳しいものと、二種
類があるようです。

 緩い方の定義は「政府債務の対GDP比を安定的に推移させながら、現在の財政政
策態度を維持できるとき、財政は持続可能である」(前掲書p339)というもので、

これが満たされる条件は、名目利子率が名目GDP成長率を下回ること(「ドーマー
の条件」)です。ドーマーの条件は、数学的には納得できますが、プライマリーバラ
ンスが赤字の場合は、公債残高の対GDP比は、将来非常に高い水準で収束(例えば
名目GDPの数十倍ということも)することになります。

 厳しい方の定義は、公債残高の増加が止まることが財政破綻回避の条件だ、と考え
るものです。これは、常識的に納得しやすい定義ですが、このための条件は、「公債
残高の対名目GDP比の上昇が大幅であるほどプライマリーバランスを大きく改善さ
せる傾向」があれば、財政は維持可能だ、というものです(「ボーンの条件」と呼ぶ
そうです)。なるほどと思える条件ですが、前掲テキストは、財政収支が悪化するの
は景気が悪い時であり、その時にプライマリーバランスを改善しなければならないと
いうことは、財政を引き締めなければいけないということであり、ボーンの条件の墨
守は景気の不安定化につながりやすいと指摘しています。確かに、この条件の完全な
実行は、政治的には困難かも知れません。

 緩めの定義に従って将来を想像すると、仮に、国債の利回りが名目成長率を下回る
現在のような状況が続くとしても、たとえばGDPの数倍ないし数十倍に及ぶような
残高で計算上公債残高が収束するなら、この状況を日本国債の買い手側(日本に対す
る資金の貸し手側)から見ると、日本という国が数十年先まで政治的な連続性をもっ
て存続して整然と運営されることは、“絶対確実”とはとても思えないので、ここに
至るまでの「どこかの段階」で、国債利回りは日本(政府)に対する信用リスクを上
乗せしたものになり、そうなると、「国債の利回りが名目GDP成長率を上回る」と
いう条件自体が満たされなくなる可能性が大きいように思われます。

 財政赤字について論じる際に、「名目利子率<名目GDP成長率」であれば良いの
だということのみを強調する議論が時々ありますが、この場合、公債残高がいつどの
辺りで収束するのか、という見通しをセットで論ずる必要があるのではないでしょう
か。主観的な判断ではありますが、GDPの数倍という公債残高の場合に、日本とい
う国を信用して、その債務に投資することは難しいように思います。

 つまり、公債残高が数倍に至るまでのどこかの段階で、財政破綻が現実のものにな
ってきますが、この場合には、国債の利回りには信用リスク分のプレミアムが大きく
乗るので実質金利が上昇して生産的な経済活動は停滞するでしょうし、国の赤字のフ
ァイナンスがいよいよ難しくなってくると、国債が日銀によって大量に引き受けられ
て、通貨が大量に市中に出回ることになり、酷いインフレになるのでしょう。もちろ
ん、ここまで来ると、国債をはじめとする金融資産を円建てで持っている人は実質ベ
ースで大損することになるでしょうし、国民一般の物質的な生活レベルも下がる公算
が大きいでしょう。

 このような状況に至らないためには、(1)歳出を削減する、(2)増税する、
(3)早めにインフレにする、の三つの対策が考えられます。(3)は、ある意味で
は奇策ですが、たとえば、日銀が相当量の国債を引き受けるような形で通貨発行益を
財政再建に使うと、当面、国債は市中に出回らず、また現在はデフレ的な期待がまだ
残っているので、国債利回りはそれほど上がらずにすみそうであり、その一方でマネ
ーサプライは増えるので、公債の累積を大きくしてリスクを拡大し過ぎないためには、

考えられる方法かも知れません(私のブログにコメントを書き込んで下さったある経
済学者のアイデアを拝借したもので、私が発案したアイデアではありませんが)。

 (1)は(2もですが)、少なくとも短期的には総需要に対してマイナスに働くの
で、(3)を組み合わせて、財政収支に影響の大きな、名目GDPをサポートすると
いう方法は、「あり得る」のかも知れないと、自信は無いながらも考えてみた次第で
す。

 但し、(3)を使う場合には、これによって(1)の徹底が損なわれることが無い
ようにしなければならないことと(政治的にはかなり困難でしょうが)、実質金利が
マイナスの状況続けることになるので資産価格のバブルが相当に進む可能性があり、
これに対する注意が必要なこと、インフレが過剰に進んだ場合には、速やかにこれを
停止してむしろ金融引き締めを急ぐ必要があること等の「劇薬使用上の注意」的な注
意が必要かと思います。

 何れも無視できないリスクですし、特に三番目の点については、どの段階でどの程
度の引き締めが必要になるものか、相当の不確実性がありますが、デフレの感覚がま
だ残っている現在であれば、しばらくの間有効に機能する方策かも知れません。

 この場合には、名目成長率を上げて財政収支を改善することに主眼があるので、
(2)に関してはむしろ慎重であるべきでしょう。特に、「自由で効率的な経済」を
良しとする立場(いわゆる「小さな政府」を良しとする立場)からは、「(1)歳出
の削減」による政府関与の縮小こそが重要であって(国債での調達による財政支出は
どの道納税者の負担になる)、「(2)増税」を安易に認めてしまうと増税自体が政
府による余計な関与の拡大であることと同時に、「(1)歳出の削減」を目指すプレ
ッシャーが減少することにもなりかねません。このように考えると、やはり、財政再
建は(1)を中心に行うことが望ましいと、強調したいと思います。

 尚、現状では、日本国債は大部分が国内で消化されており、政治・経済共に安定し
ているので、前記のような「財政破綻」が差し迫った状態にはないことの認識は重要
だと思います。「日本の財政破綻」への恐怖をダシに使った、海外プライベートバン
クや金投資などの怪しい商売(殆どがばかばかしいくらいに手数料が高く、詐欺的な
ものもあります)が横行しています。JMM読者におかれては、現段階では無用な不
安に駆られて、こうしたものに引っ掛からないよう十分お気をつけ下さい。

              経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員:山崎元
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『ゼミナール経済政策入門』岩田規久男/飯田泰之著/二本経済新聞社
<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532133106/qid=1145189919/sr=8->
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 ■ 金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務

 国家財政における債務問題についても、一般の企業財務と同様に、負債の存在やそ
の規模の大きさだけで問題が発生するというものではありません。国際会計基準では、

企業の負債を「過去の事象から生じる企業の現在の義務であって、その履行が企業か
らの経済的便益を含む資源の流出をもたらすことが予想されるようなもの」と定義し
ており、ここから債務問題には二つの側面があることが分かります。すなわち債務問
題は、本質的には、@負債がもたらす資源の流出と負債に対応した「資産」の生み出
す便益との不均衡、すなわちバランスシート悪化の問題ですが、それに伴う、A現在
における債務の履行が困難となる流動性の問題という側面も持つということです。

 財政赤字の議論においては、企業会計では投資として計上されるべき公共資本への
支出などの投資的支出と一般の費用的支出を区別せず収支を捉えているという限界が
あります。このように投資的支出の把握がされておらず、過去の公共事業などによる
資産の評価も確立していないため、企業会計と同じ意味で「国のバランスシート」と
呼べるものは現状では存在しません。従って、企業が破綻した場合に問題となる債務
超過部分に相当する、不均衡の規模の把握も厳密な意味では不可能です。

 もちろん、国家は企業と異なり、国家財政が破綻しても清算処理されることはあり
ませんし、運営を継続する上での収入である税収を生み出す資産は国家が保有する資
産に限るわけではありませんので、そうした「バランスシート」の把握が現状でそれ
ほど重要と言うわけではありません。

 一方、平成17年度予算で見ますと、国債費および地方交付税を含めた一般会計の
歳出総額82兆円に対して、税収は44兆円であり、34兆円を公債金収入によるな
ど、財政の運営は市場からの資金調達に依存しています。この市場からの資金調達に
支障を来たした場合は(いきなりこのような事態を仮定するのは乱暴ですが)、歳出
を直ちに削減するか、あるいは国債の利払い・償還金の支払を停止するかの選択肢の
中で対応せざるを得ないことになります。

 ここで、なぜ国家の債務に限って、後者の選択肢を選ぶ余地があるのでしょうか。
一般の企業の場合、発行する社債の一部で債務不履行が発生しますと、いわゆるクロ
ス・デフォルト条項などが定める「期限の利益の喪失」の適用を受けるため、他の債
務への返済義務も同時に発生することになります。そして、最終的には資産の差し押
さえなどの法的手続きを経て、企業は清算されることになります。一般に、借り手の
信用度は債務を返済する能力と返済する意思によって規定されますが、発行体の返済
する意思を担保するのが、このようなクロス・デフォルト条項であり、資産の差し押
さえなどの法的手続きの存在です。しかし、このような条件は国債には明らかに適用
しません。

 国家は、最高の信用度を持つ借り手であると同時に、その法が及ぶ範囲において最
高の権力を持つ借り手です。「ソブリン=最高の」という意味は、債券の投資家にと
って、好ましい一面と同時に、リスクをも示す言葉です。

 しかし、このように国家が債務不履行の選択肢を選んだ場合、市場からの資金調達
は途絶することになります。その場合、現状のように税収だけでは一般歳出および地
方交付金を賄えない状況では必然的に、公共部門の運営にも支障を来たすことになり
ます。いわゆるプライマリーバランスの達成は、財政問題の均衡化のための必要条件
として注目されていますが、より分かりやすく表現すれば、国家が債務を踏み倒して
も通常通りの運営が可能となる条件という言い方も可能です。

 ところで、このような国家の債務の「利害関係者」については、主権者である国民
が、納税者、補助金等の受益者、債権者、債務者、被出資者、公共用財産の利用者等、

様々な立場となりうるため、その関係は非常に複雑です。

 仮に財政が破綻し国債がデフォルトした場合、国債の保有者は直接の損失を被りま
すが、国債の保有者以外の国民は、その分税負担を逃れることになります。しかし、
国債の保有者については、20%前後の保有シェアを占める銀行をはじめ、約9割近
くが国内の金融機関ないしは公的部門となっています。従って、国債の直接の保有・
非保有に関わらず、多くの国民はこうした金融機関・公共部門の状況に利害を持たざ
るを得ないため、コストとベネフィットを考えれば、財政再建のための増税を受け入
れる選択肢以外にないのではないでしょうか。ただし、世代間の利害では、若い世代
にとっては財政破綻のメリットが大きい、すなわちコストが低いという可能性はある
と思います。

                外資系運用会社 企画・営業部門勤務:金井伸郎

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■■編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■

 Q:706への回答ありがとうございました。17日月曜夜10時から『カンブリ
ア宮殿』という番組がテレビ東京でオンエアされます。第一回目のゲスト、トヨタの
張富士夫副会長との対談はもう済ませました。どうしてトヨタは勝ち続けることがで
きているのか。つまり、いかにして全社的な危機感をキープしているのか、非常に興
味深いお話を伺うことができました。サブアシスタントの小池栄子さんも「いい感
じ」なので、是非ご覧いただければと思います。

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Q:707
 景気という用語は定義されていなくて曖昧なので使いたくないのですが、他に思い
当たらないのでしょうがなく使います。好景気が続いていて、一部にはバブルだとい
う指摘もあります。好景気とバブルはどこがどう違うのでしょうか。

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                                   村上龍

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【編集】 村上龍
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