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選挙にらみの批判も
シンガポールで二〇〇六年度(〇六年四月―〇七年三月)の予算が十六日、国会を通過した。政府が打ち出したのは二十九億シンガポールドル(一シンガポールドル=約七二円)の赤字予算。事前の予想を上回る拡大財政となった。一般国民向けの現金支給など分配金が二十六億シンガポールドルに膨らんだ。野党からは選挙対策だとの批判や、財政赤字を懸念する声が出た。
「経済成長の成果を国民と分かち合うことにした」――。リー・シェンロン首相兼財務相は二月、〇六年度予算案の一部として「プログレス(進歩)・パッケージ」と称した分配金計画を発表した。〇五年の経済成長は六・四%と好調で、財政に余裕が出たためだ。成人国民全員に収入・資産に応じて二百―八百シンガポールドルを支給。大人なら誰でも、五月には一万四千―五万八千円が銀行に振り込まれる計算だ。
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さらに四十歳以上の低所得者に百五十―千二百シンガポールドルを支給する「勤労ボーナス」、高齢者向けの年金積み増しなども発表。所得の低い人や高齢者が経済成長に取り残されないようにとの配慮を示した。分配金は総額二十六億シンガポールドルに上る。
「前例のない気前の良さ」と与党議員も舌を巻いた“寛大”予算だが、野党からは国会討論で「選挙対策」「票集めのためのばらまき」だと批判も相次いだ。
シンガポールは年内に総選挙が実施される見通し。時期は未発表だが早ければ一―二カ月内と見られている。国会の八十四議席中、与党が八十二席と圧倒的優位を占め、与党の圧勝は確実と見られる。とはいえ、リー首相が〇四年八月に就任して以来、初の信任を問う選挙だけに一議席の増減にも関心が高い。
慎重な財政運営が自慢のシンガポールで、近年で最大の赤字予算になることに懸念の声も出た。歳入三百十三億シンガポールドルに対し、歳出は三百四十二億シンガポールドル。二十九億シンガポールドルの赤字の大部分は分配金だ。「政府は『景気低迷時の赤字は仕方ないが、好景気下では節約する』と言ったはずだ」。野党労働党のロー・ティアキャン議員は国会で迫った。
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ただ市場ではシンガポールの財政状況は健全との見方が優勢。センテニアル・グループのアジア・リサーチ・ヘッド、マヌ・バスカラン氏は「事実上の歳入は数字より多い」と指摘する。
シンガポールは政府機関の収入や土地売却益を歳入に含めない。予算では経済成長率を低めに見る傾向もある。このため過去の財政黒字の蓄積である準備金を取り崩す必要はないという。
分配金ばかりに関心が集中したものの、産業界に影響のある対策も打ち出した。情報通信、研究開発、海運など国の将来を支える重要分野の育成策が中心だ。
金融分野もその一つ。投資信託の税制の簡易化や不動産投資信託(REIT)の免税枠の拡大、イスラム金融への税制恩典の対象拡大など、長期的な戦略部門に焦点を絞って税制改正を盛り込んだ。市場は「金融関係者に使い勝手がよくなる」と評価している。
高齢化の進むシンガポールは医療や生活保障の支出が膨らむことが確実。一方、競争力強化のため、税率は引き下げる傾向。財政の悪化がわかっているだけに、分配のような“ばらまき”は一時的で、シンガポール伝統の堅実財政は変わらないとの見方が多い。
(シンガポール=谷繭子)