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景気後退と即断できず
米国野村証券主任エコノミスト デビッド・レスラー氏
エコノミストは、将来の経済活動の予測に役立つ指標を見分けるのが商売である。民間の調査機関、カンファレンス・ボードが開発した総合指数は景気循環の転換点を見きわめるのに役立つ。消費需要、労働需給、生産・在庫、金融市場の状況などを示す十種類の先行指標を合成したものである。
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一回の景気循環の間に金利は変動するため、短期金利と長期金利の関係を示すいわゆるイールドカーブは形状が変化する。この変化は景気循環のプロセスを通じて予測可能なので、イールドカーブの形から将来を予測することができる。金融市場の状況を測る三種類の物差しの一つがイールドカーブだと言われるのは、このためだ。
例えば短期金利が循環的な最低水準に達し先行き上昇が見込まれるときは、イールドカーブは右肩上がりになる。長短それぞれの金利水準が接近し、その状態が続くと予想されるときは、イールドカーブは平たん化する。
しかし短期金利の上昇がピークに近づいたときに、長期金利を上回ることがある。この段階では、イールドカーブは左肩が上がった状態、いわゆる逆イールドになる。景気が落ち込んでくると金利は下がるのが普通で、過去の景気後退局面の前には必ずイールドカーブの傾きが逆転している。
イールドカーブから将来が予測できるのは、カーブの形状から長短金利の関係が読みとれるからだ。景気後退局面の前に起きるこうした逆転は、まず満期までの期間が長い債券に起き、短い債券がそのすぐあとに続く。中でも十年物国債と二―十年未満の国債の逆転は、景気循環を占うよい指標とされている。
米国の十年物国債と二年物国債のイールド・スプレッドは、二〇〇三年七月に二・七〇%のピークをつけ、その後徐々に下がって一月にはマイナスになった。長期にわたって逆イールドとなれば、景気後退の前触れだ。
このため、最近になって起きた逆イールド現象を受けて一部からは将来に対する懸念の声が上がっている。だが今回の逆転には、過去の逆転時の特徴が見当たらない。たとえば過去の景気後退の前に現れた逆イールドは、傾きが大きく長期にわたって続いた。
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今回の逆転は傾きも小さくさほど長続きしているわけでもないので、リスクが高いとは言えない。さらに重要なのは、現時点では短期金利が長期金利を上回っているとは言え、実質金利全体は、前回の景気後退時の水準よりかなり低いことである。一部の予想によれば、現在の実質金利は今回の景気循環中の平均より低いという。これは通常であれば健全な経済成長を促す条件だが、今回は実質金利の「均衡水準」が以前より下がっている可能性がある。
これに関してベン・バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が重要なことを示している。世界的に貯蓄が過剰気味のため、ほとんどの国で長期金利が低めになっているというのだ。この状況で新たな均衡が成り立つなら、堅実な経済成長に伴う金利はこれまでより低くなる。金利がこの均衡水準を上回れば景気はやはり下降し始めるが、そのときの金利は、前回の景気循環時より低いと感じられるだろう。
世界の貯蓄過剰がどの程度続くのかはっきりせず、その長期的な影響も不明な現状では、逆イールドから読みとれる景気循環の兆候を無視すべきではない。傾きの大きい逆イールドが大きく数カ月にわたって続くようなら警戒すべきだし、ほかにも経済活動が鈍る兆しがみられる場合は、特に要注意である。