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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu115.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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日本の金融の実態を知りたければ「ナニワの金融道」を
見ればわかる。不動産担保金融こそ世界に誇る金融制度だ
2006年3月12日 日曜日
DVD版「ナニワの金融道」より 主人公の中居正広
◆「ナニワの金融道」を読む
http://www5d.biglobe.ne.jp/~Jusl/ChienoWa/Kinyudou.html
(1) この夏は,青木雄二氏の漫画「ナニワ金融道」全19巻(92年に講談社マンガ賞,98年に手塚治賞を受賞)を読んだ。
「ナニワ金融道」は,平成2年から9年にかけて,コミック誌週刊モーニングに掲載され,ビジネスマン等に人気を博し,その後,中居正広主演でテレビドラマにもなったものである。
漫画で全19巻と言えば,簡単に読めると思う人も多いだろうが,セリフが多く,描写も細かく,1冊読むのに1時間近くかかってしまう。
ストーリーは,平成2年以後,バブルがはじけた時代を背景としている。勤め先の印刷会社が倒産し,いわゆるマチ金の「帝国金融」に入社した主人公灰原達之(28歳)が,先輩桑原澄男の指導の下,金貸しと取立ての営業経験を積む中で,とまどいながらも,次第に金融屋としての力をつけ,成長していくという物語である。
こう言ってしまっては話は簡単できれいであるが,この漫画では,マチ金の巧妙な金の貸し方と徹底した追い込み(取立)の仕方,駆け引きがリアルに克明に描かれていて,引きずられるように読み進んでしまう。
(2) 金融屋での営業は,うまく貸付け先を探し取り,連帯保証,担保を確実に取り,一旦不払い,不渡りがあれば,徹底した追い込みをかけ,貸した金はあらゆる手を尽くして回収を図ることである。一度金を借りれば,借りた側は,ハメられたかのように,人として越えてはならない一線まで踏み越えて,転落の末路をたどらされる。借りた身の弱さと哀しみ。そこには人情も慈悲もない。非情の営業論理の貫徹があるのみである。
先輩の桑田は,灰原に言う。「金融とは良心を売って,金を儲ける商売なんや。それを忘れたらアカンで」。
漫画の絵自体は,ゴテゴテしていて決して上手とはいえない。弁護士悪徳栄,地上げ屋肉欲棒太郎などの人物名なども,奇をてらい茶化したような感じのところもある。一部18歳未満には見せられないHな場面もあるが,大阪弁によるコテコテぶり,表現の猥雑さがまた,ゼニに絡む人間の欲とエゴと計算,互いの内面の駆け引き,その場の切迫した状況とエゲツナイやり口とドラマの展開を表現するには効果を得ているとも言える。
テレビドラマ化された「ナニワ金融道」は,ビデオで見ることもできるが,原作と異なる設定,筋書きとなっている部分もあり,公器のテレビでは原作ほどのエゲツナサと迫力は出せない。
(3) この漫画には,印刷屋,土建屋,不動産屋,呉服屋経営の政治家も運送業者も,それぞれの差し迫った事情からマチ金に手を出し,不渡りを出し,追い込められ,夜逃げをする。恋人の連帯保証人として判を押したばかりにソープランドに追いやられる娘の話もある。息子の交通事故に端を発して,タカリ屋に絡まれ,借金を増やす農家の悲劇もある。区役所,社会保険庁に勤める公務員も,餌食にされる。金融屋にとって公務員は上玉とされている。小学校の教頭も,相場に手を出したばかりに,借金をし,さらに相場の深みにはまり(ハメ込められ)借金を膨らまして,やがて退職,離婚,自殺未遂・・・・・と人生の転落の路をたどる様が描かれる。借金のあげくにカードを使って取込み詐欺をする証券会社の社員,マルチ商法にはまった警察官の話もある。広告業者が借金に追われ業者の策略にはめられ計画倒産する話もある。
わずかのきっかけ,その時々のうかつな判断,たった一度の判押しが,次第に,逃れられないアリ地獄へと人を落ち込ませていく。この漫画は,その悲喜劇の顛末をきっちりと見せてくれる。帝国金融社長金畑金三は,灰原をこう叱責する。「国金や信用保証協会の追い込みとはワケが違うんやで! ウチは慈善事業やっとんと違うんや。お前らの給料も賞与も払わなあかんのや! 72回払いとか眠たいこと言わさんと,家売らすなり,退職さすなりして一括返済さすんや!」。金貸しを巡り,追いつめる者(債権者)の冷酷さと追いつめられる者(債務者)の弱さが,これほどリアルに克明に描かれる漫画本も珍しい。
この漫画本は,金融屋の考え方や手口,取立の徹底さ,その方法を描くとともに,その反面では,「ここは注意しないと」という,借金,連帯保証,カードやマルチ商法等に対する啓発や教本の役割も果たしてくれている。それだけに,ビジネスマンが読むのみならず,大学等の教育関係者の中にも学生に薦める人がいたり,裁判所の書記官や裁判官も,これを密かに読んでいるという話も聞く。
(4) ただ,以上の話だけであれば,業界ものの,よくある金に困った人の悲喜劇に止まるかも知れないが,この漫画では,犯罪の手口を紹介するような場面もある。地面師が法務局に行って不動産登記簿を差し替え偽造する手口があったり,収入印紙横流しで退職した元裁判所書記官が海事代理士として登場し,私文書の押捺部分を偽造する手口が詳細に描かれていたりもする。
船舶の二重売買でヘタを打ってしまった灰原は,責任を追及され,この海事代理士と組み,国公1種試験合格者で警察から研修派遣された者と一緒になって,裁判所を騙し,不渡り寸前の手形を凍結させることを目論む。これには,居酒屋で裁判官に接近し,その考え方や好みを巧みに聞き出した上,うまく仮処分の決定を得るまでの顛末が描かれている。
この法律制度,裁判官まで愚弄したかのような話の展開をどう考えるかは,人それぞれの受け止め方があろうが,徹底した金融道からみれば,公務組織や裁判官もチョロいと言いたいのかも知れない。法務局も裁判所も,金融道実現装置の1つとみる見方も成立するのかも知れない。
「ナニワ金融道」の展開も,国家組織への挑戦にまで至れば,もはや続編も不要となるのは必至といえようか。作者は,この漫画を最後に,漫画を描くのを辞めたということであり,人気の漫画の突然の終了にいろいろな憶測もあったようであるが,以上の理由を考えれば,「ナニワ金融道」自体の終焉の理由も分からないではない。
(5) この漫画全編の話は,フィクションだとはいえ,フィクションを越えた現実味と真実味が感じ取れる部分が多い。これまで読んだコチ亀,美味しんぼ,スラムダンク,GTO,バガボンド等の読後感とは,また違うものがある。漫画本の中にも,学ぶことの多いものもある。
金銭消費貸借契約に関する法律概説書や判例集を読む前に,読むべきは,「ナニワ金融道」かも知れない。人間がより良く活きるには,トラブルになってからどう解決されるかではなく,トラブルになる前に,現実生活に潜む危険の仕組みを知り,この危険をどう回避するか,その知識と問題解決の方法を心得ていることの方が大事であろう。
これは,何も一般人に対する啓発としてだけでなく,司法書士も弁護士も法務局職員も裁判所職員も裁判官も,そのなりわいが金融道と接点を持つ限り,心しておかなければならないことである。(後略)
DVD版「ナニワの金融道」より 帝国金融の社内
(私のコメント)
レンタルビデオ屋でDVD版の「ナニワの金融道」があったので借りて見ました。テレビの放送でも見たのですが10年も前のテレビドラマだからほとんど忘れていたので、新たに見直してみても大変面白く見ることが出来た。世相も当時もバブルの崩壊後でそれは現在でも変わりがない。
バブルの崩壊で逆に流行りだしたのが街の金融屋で、最近のテレビを見てもサラ金のコマーシャルばかりでいやになる。私が経営するオフィスビルにも街の金融屋が入っているので大変身近な存在なのですが、頭をつるつるに剃った男や体格のいい男が出入りしている。
以前にも広域暴力団系の街金が入って家賃の滞納などがあったので、警察と協力して出て行ってもらった話は以前にしましたが、ビル経営と言っても一つ間違えば闇社会に引きずり込まれる恐い世界だ。しかし街金は必要悪の一つでもあり、銀行が相手にしないような客に金を貸してくれるところは街金しかない。
よく日本の金融は不動産担保金融であり質屋のようなものと批判されていますが、銀行に信用貸しをさせても銀行員には融資先の内容を審査できるような能力は無い。私自身元銀行員だったから間違いはない。銀行員の業界に対する知識と言っても客からの話の受け売りであり、経営のプロではない。
だから金を貸せるかどうかは担保になる不動産があるか、保証人はあるかに限られてしまう。この事は欧米でも大して変わりがないのですが、ベンチャーキャピタルと混同して比べられた面があるようだ。日本においてベンチャーキャピタルみたいなリスキーな融資を担っているのが街の金融屋であり、倒産しかけた町工場のようなところに金を貸してくれるのは街金しかない。
問題なのは債権の回収に厳しい事ですが、日本において問題なのは法律が不備な事でよけいなトラブルを招いている。欧米ではノンリコースローンが常識であり、担保になった物件を引き渡せば債務の弁済は終了するのですが、日本の場合はリコースローンであり担保のみならずその他の資産まで処分して弁済を迫られるから、再起が不能になってしまうことが多い。
「ナニワの金融道」はドラマとしても面白いですが、金融に関する法律知識も分かるから、社会勉強の一つとしても参考になる。第一話では親の保証人になって金が返せなくなってソープ嬢に転落してゆく深津絵里扮するOLが出てきますが、サイン一つで身の破滅になる恐さを警告している。
私自身も億単位の借金を抱えていつ街金の世話になるかもしれない身としては他人事とは思えないドラマですが、日本はいやな世の中になったものだ。従来の日本の金融は不動産担保金融だから、返済が滞っても利息を払い続ければ銀行も猶予してくれて、強引な債権回収はしなかったのですが、アメリカ式の金融を取り入れるようになってからは、債務者を自殺に追い込むまで取り立てるようになった。
銀行にしても街金にしても債務者に自殺されては街中の評判も悪くなり商売が出来なくなる。不動産を担保にしてあれば最終的には債権回収は確実なのだから、返済が滞っても再建を助ける事で期間がかかっても回収して行く方法のほうが日本的やり方であり、小泉改革の外資的なやり方は間違っている。
街金もきちんとした法律制度が整備されればトラブルは少なくなるだろう。破産制度も日本ではまだ未整備であり、一度や二度倒産しても再起が出来るような法律制度に変えてゆくことが必要だ。そうしなければ新しい産業は育たない。それまでは街金は必要悪として存在し続けるだろう。
転落してゆくOL役の深津絵里
帝国金融の社長の緒方拳
故青木雄二のオリジナルのマンガ?