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日銀の政策に関心が寄せられている。本年の経済政策上の最大の焦点が金融政策であることを筆者は昨年来述べてきている。量的金融緩和政策の解除、ゼロ金利政策の解除などである。
3月3日に発表された1月全国消費者物価指数は前年比0.5%の高い伸びを示した。これで3ヶ月連続の前年比プラス数値の発表となった。量的金融緩和政策解除の条件は基本的に整った。
量的金融緩和政策解除は完全に秒読み態勢に入った。今週、8、9日に行なわれる金融政策決定会合での緩和解除決定があるのかどうかに関心が寄せられている。2月23日付本コラムでも執筆したように、緩和解除実施は4月の可能性が高い。
量的緩和解除反対派の竹中総務相、中川秀直自民党政調会長などの発言が大きく修正された。筆者は外野席からの適切でない発言は「百害あって一利なし」と述べてきたが、筆者の声が届いたのか、両名の発言が大きく修正された。量的金融緩和解除の地ならしはほぼ完了しつつある。
だが、3月実施にはいくつかのリスクがある。3月末決算を控え、債券価格や株価の大幅変動が生じれば、多大な影響が発生する。経済が順調に推移し、株価や債券価格も堅調に推移しているが、日本の金融政策変更の影響で市場に波乱が生じるリスクをあえて取りにゆく必然性は低い。
米国の金融市場は、政策当局がインフレに対していかに厳格に対応するかに最大の関心を払っており、したがって、グリーンスパン議長もバーナンキ議長も、政策を厳しい方向に誘導してきている。インフレ抑制の明確な政策スタンスが示されることで、長期金利の上昇が抑制されてきている。
これに対して、日本では、依然として日銀の金融引締め措置を単純に長期金利上昇要因と捉える傾向が強い。債券市場のトレーダーは大手金融機関のサラリーマントレーダーが大半で、金利上昇要因と認識されている事象が発生すれば、「債券は売られる」との予想が生じ、横並びで各トレーダーが一斉に債券を売る行動に出る傾向が強い。日本の債券市場では政策転換の局面でしばしば大幅な価格変動が観察されてきた。
日銀の福井総裁は歴代総裁のなかでは、市場との間合いの取り方が非常に巧みな総裁である。量的金融緩和解除、ゼロ金利政策解除の基本方針について、発言がぶれず、明確なスタンスが示されてきたが、一方で、政治との会話、タイミングの計り方においては、極めて高い柔軟性を示してきている。
こうした状況を踏まえると、3月8、9日の政策会合では、量的緩和解除の基本方針を決定しても、即日実施とはしない可能性が高い。量的緩和解除後の政策運営の指針等を十分に検討したうえで、4月に実施する可能性が高いように思われる。
日銀としては、こうした国内金融市場の波乱に対して配慮することが求められると同時に、国際マネーフローにも配慮しなければならない。この点については、『金利・為替・株価特報2006年3月16日号』033号に詳論する予定だが、日本の金融引締め・為替市場の変化・米国の金融市場の連関を十分に吟味しなければならないのだ。
しかし、日本の量的金融緩和解除、ゼロ金利政策解除は日本経済正常化プロセスのなかで避けて通ることのできるものではない。内外の情勢を的確に把握し、いかにタイミングをはずさずに適切に対応できるかがポイントとなる。
物価情勢、経済情勢、海外金融、為替市場をにらみながら判断してゆくこととなる。日本の量的金融緩和政策解除については、海外の関心も高く、日銀としては、日銀の政策が海外市場に与える影響についても十分に考慮して政策決定しなければならない。
こうしたことから、日銀としては、日本の金融政策運営の変更について情報が明確に世界市場に伝わり、政策変更を織り込んでからアクションを起こした方がリスクが低いと考えるのではないか。
3月8、9日まで、市場は模様眺めの様相を強めると考えられるが、仮に量的金融緩和実施を先送りするなら、市場には安心感が広がることになりそうである。
3月9日(木)の午後3時30分から福井日銀総裁の記者会見が開かれる。市場の関心は日銀総裁のコメントに集中するだろう。10日(金)には1月機械受注が発表される。設備投資の強さは確認済みだが、月次統計であるので、前月比でマイナス数値の発表も考えられる。
米国では、10日(金)の雇用統計に関心が集まる。雇用者の増加数については、各予測機関の予測数値が相次いで上方修正されている。ロイター発表の予測数値は21万人増であるが、28万人増の予想も出されており、やや強めの指標の発表が見込まれている。雇用者増加数が25万人以上になると、金融引締め強化予想が生じて、長期金利上昇、株価下落の反応が生まれやすくなる。
また、9日(木)に1月貿易収支が発表される。米国貿易赤字の変化方向に関心が寄せられる。
また、FRB関係者の発言予定としては、7日(火)にモスコウ・シカゴ連銀総裁講演、8日(水)にプール・セントルイス連銀総裁講演、バーナンキFRB議長講演、9日(木)にモスコウ・シカゴ連銀総裁講演、ガイトナー・NY連銀総裁講演が予定されている。
日本の政治情勢においては、民主党がメール問題で大失策を演じて、小泉政権に対するけん制力が完全に消滅してしまった。民主党が党勢を回復するには、人事の刷新が不可欠である。小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏、菅直人氏、横路孝弘氏が協議して次期民主党代表を挙党一致で選出することが求められる。前原体制を惰性で維持しても、政治の緊張感が一段と低下するだけであろう。民主党の刷新が国民的視点から強く求められる。
2006年3月7日
植草 一秀
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