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2006年1月12日
■大株主なら、何でも要求できる?
■かつての持ち合い時代が懐しい?
■むさぼり食った強欲の果てに
■金の卵を産むニワトリは大事に育てよう
■大株主なら、何でも要求できる?
最近、株主資本主義という言葉にしばしば出くわす。上場企業の株式を大量に取得して、大株主の立場で会社に経営方針の変更など、いろいろな要求をぶつけてくる様をいう。
内部留保の厚い会社とみれば、「現金をムダに積み上げておくよりは、配当金として株主に還元すべき」と迫る。たしかに積極的な拡大投資をすることなく、大きな現金を長年月ただ寝かせておいたのでは、資本効率の観点からも経営陣の怠慢を指摘されても仕方ない。
あるいは、「大株主である我が社と事業提携して、より大きなビジネス拡大を狙おうじゃないか」と提案する。現経営陣としてみれば「余分なちょっかい出してくれるな」と一蹴してしまいたいところ。しかし、大量の株式を保有している大株主の意向を無視はできない。それどころか、いつ議決権行使という実力行動に出てくるか知れたものではない。
そういった中で、突如として眼前に現れた大株主の横車に振りまわされていては経営にならないと、上場をやめてしまう会社も出てきた。株式を非公開にすれば、知らない間に株式を買い集められることもなく、経営に集中できる。
はたまた、買い占め防止や議決権行使をブロックしようと、いろいろな制度を導入する企業も多い。「毒を制するには、毒をもってする」といった論法だ。
こういった流れを追いかけていると、「資本の横暴には歯止めをかけるべし」といった議論も出てきかねない。残念ながら、株式を公開している以上は誰が株を買おうと、株主がどのような要求を出そうと、それは自由。それが上場企業というものである。
では、昔の持ち合いに戻る?気心知った企業や金融機関がお互いの株式を持ち合って、安定株主としてどっしり構えてくれた方が落ち着いた経営ができる?短期の利益拡大要求に追いまわされなくて済む?
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■かつての持ち合い時代が懐しい?
1960年代後半から段階的に進められた資本の自由化を機に、企業間あるいは金融機関をからませた株式持ち合いは徐々に、後には急速に進展した。強大な資本を背景とした外資に呑み込まれまいと、お互いがそれぞれの安定株主になろうとしたわけだ。
いざ株式の持ち合いをはじめてみると、思いもよらなかった経済効果が次々と表面化してきた。外資に対する乗っ取り防止だけではない。いろいろなメリットに味をしめた各企業は持ち合いをどんどん積極化した。
ビジネス展開においては、大株主の立場を背景になんだかんだと商売上の有利な条件を引き出すことができる。また、株式保有を通して経営状況を把握しているから、相手先の信用リスクに対する不安感なしに迅速な意思決定ができる。
銀行サイドも、大株主として相手企業の財務を常時チェックできるから、思い切った大型融資にも踏み切れる。もちろん、企業の資金決済から余剰資金の管理まで、あらゆる金融関連サービスの仕事を手中に収めることができる。
生損保各社も株式の政策保有や持ち合いを進めることで、自社の保険を有利に販売できる。年金の運用受託も有利になる。資金運用の一環として株式保有しているだけなのに、自社ビジネスの拡大につながってしまうのだから悪い話ではない。
経理上のメリットも大きい。株式持ち合いをしている同志だ、「お互いに配当金は形だけにしようや」といった暗黙の了解で、内部留保を思い切り高めることができる。配当金の支払い額を少なくすれば、それだけ利益計上額を低く抑えられるし、節税にもなる。配当金や税金といった資金流出を必要最小限にした分、社内留保をぶ厚くできる。
これだけ数多く持ち合いのメリットを実感すれば、各企業や金融機関は「もっともっと株式保有を進めよう」となって当然のこと。日本企業や銀行それに生損保が競って積極的な株式買い増しを進めたことで、日本株市場はものすごい右肩上がり相場を展開した。
株価上昇が続くと必ず資産効果を生み、個人消費や企業の投資を活発化させるから、経済全体にとっても大いにプラスとなる。80年代に、「21世紀は日本の世紀」と世界中が信じて疑わなかったほどの繁栄をもたらした背景の一つがここにある。
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■むさぼり食った強欲の果てに
全発行株数の54%を占めるに至った持ち合いや政策保有に、年金や投信など機関投資家を加えると法人保有は72%に達した。(1988年3月末、大和総研調べ)
買い増しの一途で決して売ることのない法人投資家が岩盤となった株価上昇の勢いは、そのまま加速して80年代後半のあの狂乱相場とバブル破裂を演出してしまった。膨大な含み益を持つに至った企業や銀行の多くが自制心を失い、高株価を背景に次から次へと大型ファイナンスに走ったのだ。
どんなに良いことも、強欲でむさぼり食ったら終り。せっかく持ち合いで市場に流通する株式を吸い上げて高株価の旨味を満喫してきたのに、多くの日本企業や金融機関が自分で自分の首を絞める愚を犯した。メチャクチャに大量の株式発行と我先の売り逃げで、株式市場の需給バランスを根底からガタガタに崩し、株価全般を1982年の水準にまで叩き潰してしまった。
日本株市場の大半を押え、彼らに代る買い手など世の中に存在しないといったことなど考えず、やみくもに持ち合い解消の売りを急いだ。結果、つるべ落としの株価下落による資産デフレで、日本経済を長期不況とデフレの泥沼に追い落としてしまった。
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■金の卵を産むニワトリは大事に育てよう
経済活動も市場動向も、すべては需要と供給のバランスの上に成り立っている。買いエネルギーが強ければ、価格は上がり売りを誘う。売られすぎて安くなれば、買いが入りやすくなる。
ありとあらゆる目的や利害や価値観が流れ込んできて、時々刻々と移り変わる需要と供給をバランスさせるところが市場である。
自由主義経済では、資本の論理や自己の利益を好きに追求できる。持ち合いや株主資本主義に走るのも、すべて当事者の自由。しかし、節度を越えた強欲の行きつくところには、市場の需給バランスの崩れという陥し穴が待ち構えている。
市場をメチャメチャに荒したり、企業をしゃぶり尽すのは、金の卵を産むニワトリを殺してしまうようなもので、結局は自滅する。
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さわかみ投信株式会社 澤上 篤人
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