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M&A慣行に影響 旧UFJ訴訟、住信敗訴
住友信託銀行が旧UFJホールディングスを、「信託部門を売却する基本合意を一方的に破棄した」と訴えていた訴訟で、住信側の損害賠償請求が棄却された。この裁判は企業合併・買収(M&A)が急増するなかで契約のあり方やその有効性を巡って注目された。第1ラウンドは被告側に軍配が上がったものの、判決は安易な契約破棄を戒めた。裁判は高裁に進む見通しで、その行方が日本のM&A慣行にも影響を与えそうだ。
判決後の住信側の記者会見で、敗因を尋ねられた升永英俊弁護士は、1分間の沈黙の後に「我々の力不足」と絞り出すように答えた。
住信側は、04年7月に旧UFJが信託売却を白紙撤回して旧三菱東京フィナンシャル・グループとの経営統合の交渉入りを公表した直後に、東京地裁に交渉中止の仮処分を申請。地裁で認められたが、高裁、最高裁では認められなかった。
その後、三菱東京とUFJの統合交渉を横目に本訴に移り、「約束を破った側が一方的に得をするのはおかしい」との論理で法廷闘争を継続。05年10月の三菱、UFJ両信託銀の統合後に請求を損害賠償に絞ったときも「統合できた場合に見込めた利益」の賠償を求め続け、破棄の責任を正面から追及する姿勢を維持してきた。
判決はその主張を全面的に退けた。旧UFJ側に独占交渉義務違反による損害を賠償する義務はあるとしたものの、その損害賠償については「住信側が主張しなかった」としてUFJに支払いは一円も命じなかった。
住信の業績は順調に回復しており、損害賠償が認められなくても財務面でのダメージはほとんどない。それでもここまで精力をつぎ込んできただけに、判決結果には落胆したようだ。
三菱UFJ側もこれで安心はしていられない。判決では「一方的な白紙撤回の通告などでは独占交渉義務が消滅したとは言えない」とも指摘され、統合直前で基本合意をほごにするという契約意識の甘さに警鐘を鳴らされた。住信側が控訴審でそこを突いてくれば一部賠償をめぐり和解交渉に転じる可能性もある。
97年の北海道拓殖銀行と北海道銀行、00年の三和、東海両行とあさひ銀行など、金融界でも統合や合併を発表しながら、延期や破談になることは珍しくない。ただ、住信のように提訴することはなく、「裁判ざたにまでするものではない」(金融関係者)というのが業界共通の意識だった。
現実に破談を巡る訴訟が起きたことで、今後は統合・合併交渉での厳密な契約書づくりが求められる。M&Aに詳しい弁護士によると、最近の契約では、一方的に破棄した場合の違約金条項や、逆に交渉過程でより有利な合併相手が見つかった場合は独占交渉権を無効にできる条項を設ける例があるという。
ただ、違約金額や条項の書き方をどう定めればトラブルを予防できるかのノウハウは未成熟だ。訴訟でも基本合意書の条文の中身や交渉がどこまで進展していたのかは守秘義務を理由に明らかにされず、今後のモデルケースにされにくいのが実情だ。
◇ ◇
◆判決の要旨
旧UFJホールディングスの信託部門の売却基本合意を巡る訴訟で、東京地裁が言い渡した判決理由の要旨は次の通り。
UFJが住友信託銀行との間で結んだ協働事業化に関する基本合意は、交渉の比較的初期段階に締結されたもので、最終契約を締結する義務を負っていたとはいえない。
住信は最終契約が締結されれば得られたであろう利益を主張するが、契約成立が確実であったとはいえず、契約内容も確定していなかったので損害賠償は認められない。
基本合意書は独占交渉義務と誠実協議義務を規定している。UFJは住信に対し、協働事業化を白紙撤回するに至った原因ないし理由を具体的に説明せず、一方的な撤回の通告をしており、独占交渉義務違反と誠実協議義務違反による債務不履行責任を負う。ただ住信はこの損害については何ら主張立証もしていないから、この点でも損害賠償は認められない。
◇ ◇
◆住友信託と旧UFJをめぐる動き
04年5月21日 住友信託への旧UFJ信託の売却を発表
7月14日 旧UFJが住友信託に旧UFJ信託売却の白紙撤回を正式に申し入れ
16日 旧UFJが旧三菱東京との経営統合の交渉入りを発表
住友信託が旧UFJと旧三菱東京の交渉中止求め東京地裁に仮処分申請
27日 東京地裁が交渉中止の仮処分を決定
28日 旧UFJが東京地裁に異議申し立て
8月 4日 東京地裁が異議を却下、旧UFJが交渉再開のため東京高裁に抗告
11日 東京高裁が旧UFJの抗告を認め、旧UFJが旧三菱東京との交渉を再開
住友信託が最高裁に特別抗告と許可抗告
12日 旧UFJが旧三菱東京と経営統合の基本合意を締結
17日 東京高裁が住友信託の許可抗告を決定
30日 最高裁が住友信託の特別抗告と許可抗告を棄却
10月28日 住友信託が旧UFJと旧三菱東京との統合交渉差し止め求め提訴
05年2月18日 旧UFJと旧三菱東京が統合契約を締結
3月 7日 住友信託が損害賠償1000億円を請求に追加
10月 1日 旧UFJと旧三菱東京が統合し、三菱UFJフィナンシャル・グループが誕生
11月 7日 住友信託が統合差し止め請求の取り下げを表明、請求を損害賠償に一本化
06年1月 1日 三菱UFJ傘下のUFJ、東京三菱の両銀行が合併、グループ統合が完了
2月13日 東京地裁判決、住友信託の損害賠償請求を棄却
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