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(検証・ライブドアショック)東証、取引なぜ全面停止
綱渡りの東京証券取引所システム増強
●株式分割、落とし穴
ライブドア株の売買注文が急激に膨れあがったことをきっかけに、異例の取引停止に追い込まれた東京証券取引所。市場の動揺はおさまりつつあるが取引時間の制限は当面続く見通しで、この事態を招いた東証への批判が高まっている。注文の急増は予見できなかったのか。システム増強はなぜ後手に回ったのか。(高野弦)
「これだけの急激な約定数の増加はまったく予期していなかった」
ライブドア・ショックが市場を襲った1月18日、東証の西室泰三社長兼会長は取引時間中に緊急記者会見を開いて、そう話した。それから1時間後、約定件数が400万件を超え、東証は「株取引の全面停止」という異例の措置をとらざるを得なくなった。
●400万件の想定も
01年9月。東証は「アクション・プログラム」を発表し、上場企業に株の投資単位を50万円未満にするよう求めた。当時、IT(情報技術)企業の株価が軒並み急上昇し、ヤフー株にいたっては1億円以上に高騰した。
個人投資家の参入を促すために最低取引価格を引き下げる必要性に迫られていた。
「この時点で大幅な能力増強をしておくべきだった」と野村資本市場研究所の大崎貞和研究主幹は指摘する。
00年当時の1日平均の売買代金は1兆円強。仮に全銘柄で1単位あたり50万円で取引されたら、約定件数は200万件になる計算で、売買代金がかさむピーク時を考慮すれば、最大400万件に達することも想定された。
ところが、当時の処理能力は160万件程度。システムの改良を重ねても450万件に増強するのが精いっぱいだった。新システム導入には2、3年はかかる。このとき新システムを決断していれば、今回の事態は防げたことになる。
01年10月施行の改正商法で、株の1売買単位あたりの会社の純資産が「5万円以上」とされていた規制が撤廃された。これで企業は株式分割がかなり自由にできるようになった。
東証は政府の法制審議会などを通じて、この法改正に積極的にかかわった。にもかかわらず十分な受け皿を用意しなかったことに、大手証券関係者は「ポンプを用意しないままマッチで火をつけたようなもの」と批判する。
●過剰投資を警戒
東証にも言い分はある。長年、システムの処理能力の目安を「実際の約定件数の2倍」としてきたが、当時の約定件数は1日平均約60万件。「実需がないのに過度な投資をしても過剰投資になる」(売買システム部)との考えがあった。
当時の東証役員は「すでに株価はITバブルが崩壊して下落局面にあった。今日の相場の急騰とデイトレーダーの増加を予想できなかった」と振り返る。
ただ、海外の証券取引所の対応と比べると東証の見通しの甘さが目立つ。ニューヨーク証券取引所でもここ数年、やはりインターネット投資家が台頭し、05年の1日平均の約定件数は約483万件。98年の9倍に膨らんだ。それでもシステム不安に直面することはなかった。
ライブドアの株式分割が異常なペースだったのも確かだ。03年8月からの1年間に1万倍に分割し、現在の発行済み株式数は10億株。1株から売買が可能なので、理論的には最大10億件の約定がありうる。こちらの規制はできなかったのか。
ライブドアが03年11月に100分割を発表した際、東証は同社に見解を問いただしている。ただ「違法行為ではない」という弁護士の意見書を突きつけられ、東証は引き下がった。「やめさせれば訴訟になるリスクがあった」(上場部)
こういう場合、幹事証券会社が「待った」をかけることもある。が、「分割は証券会社に相談なく進められた」(大手証券)という。
●食い違う言い分
東証が全上場企業に行きすぎた分割を自粛するように求めたのはそれから1年4カ月後の05年3月。その間、新興市場を中心に異常な株式分割を実施する企業が相次ぎ、なかには分割後に破綻(はたん)した企業もあった。
対応が後手に回ったことについて、東証は「事実上、法律に制限を加えることに行政が反発し、調整に手間取った」と説明する。
ところが金融庁側は「こちらの指示が出るまで東証は動かなかった」と反論する。責任を巡って双方の言い分は食い違っている。
http://www.asahi.com/paper/business.html