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「消耗品戦略」の危機回避 キヤノン逆転勝訴
量販店に並ぶキヤノン製の家庭用プリンターのインクカートリッジ
キヤノンの研究開発費と米国での特許登録件数
家庭用プリンターに使うインクカートリッジのリサイクル品をめぐる知的財産高裁判決でキヤノンが逆転勝訴し、同社の高収益構造を支える「消耗品ビジネス」が揺らぎかねない「危機」を回避した。しかし、判決は同時に「リサイクル品自体は奨励されるべきもの」とも指摘。消耗品ビジネスには「荒稼ぎ批判」も付きまとうだけに、社会のニーズとの接点を探る努力も必要になっている。(土佐茂生)
●本体は安く、後から利益 荒稼ぎ批判も
家庭用インクジェットプリンターや業務用レーザービームプリンターでは、必需品のインクカートリッジを消耗品として何個も売ることで利益が上がっている。インクジェットカートリッジの営業利益率は推定25〜30%。本体を薄利多売し、後から利益を回収するビジネスモデルだ。
カメラメーカーとして出発したキヤノンは「カメラを売っても、もうかるのはフィルムメーカー」という経験から、60年代以降に複写機などに進出。消耗品ビジネスを確立して新規参入を防ぎながら、利益を研究開発に回して高い付加価値の製品を繰り出すことで成長してきた。
05年12月期の連結売上高のうちインクジェットプリンターの国内売上高は推定2%。国内インクカートリッジ市場のリサイクル品のシェアも6%(05年、BCN調べ)に過ぎず、敗訴しても屋台骨が揺らぐわけではなかった。しかし、リサイクル品がお墨付きを得て業務用プリンターやコピー機まで広まれば、影響は軽視できなかった。
キヤノンは訴訟で「リサイクル品は研究開発の動機を奪い、ものづくりの芽を摘む」とも訴えた。売上高の7%以上を研究開発に費やし、米国での特許登録件数は92年から連続でトップ3位以内。ハイテクのカートリッジにも多額の研究開発費がつぎ込まれている。
判決は「特許・発明の実施を独占して利益を得ることは認められる。価格の設定は(独占禁止法などに違反しない限り)特許権者の判断に委ねられる」と指摘した。
知的財産戦略を推進する特許庁は「どういう場合に特許権の侵害となるのかという類型が明示され、企業が戦略を立てやすくなる」と判決を評価。コピー機のトナーカートリッジや使い捨てカメラなど同じ問題をはらむ製品は多いとみており、今回の判決が「ルール」になるのを期待している。
●消費者の理解、課題
「デジタルカメラの映像を美しくプリントするのにインクの質は重要。リサイクル品を使うと機器本体も傷む」「リサイクル品の輸入・販売業者は売るだけで、きちんと回収していない」。キヤノンはこうした主張で、「リサイクル品は環境に優しい」というイメージにも異議を唱える。
訴訟でキヤノンは、普段から積極的にカートリッジの回収を呼び掛け、回収した使用済み品をセメント材料に再利用しているとアピールし、判決も「キヤノンの訴えは環境保全の理念に反しない」と一定の評価を与えた。ただ、回収は小売店に専用箱を置く方式で、完全とは言い切れない。
リサイクル品に過剰反応すれば、法的リスクや消費者の反発を招く恐れもある。03年にはリサイクル業者の参入を妨害した独占禁止法違反の疑いで、公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。業務用プリンターのカートリッジに電子部品を搭載し、リサイクル品が動かなくなったためだ。結局「シロ」と認定されたが、重い教訓になった。
キヤノンは消耗品ビジネスの利益を詳しく開示しておらず、しばしば「荒稼ぎしている」と疑念の目を向けられるのも事実だ。純正品を使う必要性や自社の環境対策について、消費者の理解を得ることは、今後も引き続き課題になる。
http://www.asahi.com/paper/business.html