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http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html
【米経済コラム】グリーンスパン議長批判、大半は的外れ-J・ベリー
1月30日(ブルームバーグ):グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が31日に退任するに当たり、議長の功罪を語る者が続々登場している。このうち議長の批判については、ほとんどが的外れだ。批評家たちは軽率に、後顧の憂いをなくすためにも、過去15年間の厳しい経済局面に対応する際に別の政策選択の余地があったはずだと主張する。その多くは、金融政策上の重要な局面で議長らが直面した実際の状況を考慮に入れていない。
批評家が列挙するリスクのなかでトップに挙げられるのは住宅「バブル」で、不必要な低金利政策によって形成されたというものだ。批評家らはひとたびバブルが崩壊すれば、借金漬けの消費者が支出を切り詰め、リセッション(景気後退)入りしかねないと主張する。同様に危険なのは、巨大で持続不可能な経常赤字だと彼らは指摘。経常赤字は議長が主導した過度に緩和気味の金融政策によるところが大きいとしている。
もちろん、住宅価格の急速な上昇には若干リスクがあるが、過熱した一部市場では反転の兆しが多く見られている。同時に、国内総生産(GDP)の7%に接近しつつある経常赤字は、際限なく拡大を続けることはできない。避けられない調整が生じた場合、巨大な貿易赤字を抑制するため個人消費に強いブレーキをかけなければならず、数年にわたり痛みを伴うことになろう。調整はもっと深刻となる可能性もある。
株式バブル
金融当局がより良い政策を提示すれば、こうしたリスクは回避できただろうか。その可能性はある。しかし、1月14日号でグリーンスパン議長批判を展開した英エコノミスト誌を含め、批評家は誰一人として納得できるような議論を示していない。批評家は一般に、議長は1990年代後半に株式バブルを回避、あるいはその規模の縮小に向けて十分な利上げを拒んだ過ちを犯したとの前提に立って批判を始める。論理の鎖は次のように進む。バブルがはじけリセッションの引き金となり、やがて議長はデフレ回避に向け過度に政策金利を引き下げる道をたどる。その結果、住宅市場でバブルが形成され、住宅金融を通じた過度の消費につながった。輸入は拡大し、経常収支赤字は持続不能な水準に膨れ上がり、家計は返済不能な借金を抱えることとなった−−。
ハイテク株バブルの動向が問題を起こしたのは確かだ。ただ、1997、98、 99年に金利が大幅に引き上げられていたら、ほかにどんなことが起こり得たか想起すべきだ。97年はアジア金融危機があり、中南米を含む多くの開発途上国が影響を受け、米国もその余波を受けかねない状況だった。98年夏は、米国はまさに利上げを行うタイミングにあったが、ロシア国債のデフォルト(債務不履行)が全世界の債券市場を揺るがせた。これに対応し当局は、国内経済は良好で株価は上昇していたにもかかわらず、政策金利を引き下げた。
グリーンスパン議長は2004年1月の講演で、「可能性は低いものの、ロシアのデフォルトが国内外の金融市場に深刻な混乱を生じさせ、米経済に極めて大きな悪影響を与えるというリスクを懸念し、金融緩和に動いた」と説明した。米プリンストン大学のポール・クルーグマン教授が後に著書の中で感嘆したように、この小幅な利下げが世界の債券市場を落ち着かせることに効果を発揮した。グリーンスパン議長は「ロシアのデフォルトから想定し得る結果を考えれば、例外的な金融政策がもたらすコストよりも恩恵の方が大きいと判断された」と語った。
もし金融当局が株式市場に注目していたら、利上げしていただろう。その場合どうなっただろう。もちろん、誰にも分からない。反事実的条件文を掲げるときは、その質問にも対応しなければならないが、グリーンスパン批評家たちの間でその労を引き受ける者は、いたとしても少数だ。同様に99年の株式市場は、コンピューター2000年問題に備えるため投資が急増するとの見通しを背景に、ハイテク企業の高成長見通しに催眠術をかけられていた。急増した投資は2000年に大幅に減少、投資主導の01年のリセッション入りの主因となった。
いずれにしても、金融当局は景気過熱を懸念し、99年半ばから利上げを開始した。株式市場はこれに注意を払わず、ハイテクバブルの6割は利上げ開始後に形成された。金融当局は成長抑制に向け金融引き締めを行う必要があった。批評家はしかし、小幅な利上げで間に合ったはずだと主張する。では、当局がリセッションの規模を最小限にするため積極的に利下げするのはどうか。コアインフレ率が1%未満に低下しそうな状況で、当局はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1%とし、住宅ローン金利はかつてないほど低水準となり、住宅価格急騰への道筋を形成した。
デフレリスク
グリーンスパン議長をはじめ金融当局者は常に、米経済に深刻な打撃を与え得るデフレに陥る公算は極めて低いと考えてきた。日本の例を考慮すると、起こる確率は低いが、ひとたび起これば高コストとなるデフレは望まなかった。金融当局は間違っていただろうか。ここでも批評家たちは、当局が異なった政策をとっていた場合についてきちんと答えてはいない。
現実社会の難しさは、完璧な結果が得られる可能性は皆無で、不完全な結果を選択せざるを得ないことが時としてあることだ。グリーンスパン議長率いた金融当局が賢明でない選択を行ったことを示す具体的な証拠はない。さらに、より引き締め気味の金融政策がとられていた場合に比べ、雇用と所得が伸びたことは疑いの余地がない。
多くの批評家たちが言うように、グリーンスパン議長の評価が定まるには何年もかかろう。だがそれがいつになろうと、物価安定の達成や幅広い成果、そして危険回避について、すべてが勘案されなければならない。(ジョン・ベリー)
(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Greenspan Critics Are Off Base on His Legacy: John M. Berry(抜粋) {NXTW NSN ITW43407NBB5 更新日時 : 2006/01/30 14:32 JST