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(回答先: 野口英昭17日の行動の謎 − 澤田秀雄は社内調査を公表せよ 【世に倦む日日】 投稿者 愚民党 日時 2006 年 1 月 28 日 23:34:25)
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今週号(1/25)の週刊文春の記事は素晴らしい。取材も文章も文春らしい記事で、「文春文化」の真骨頂が提示されている。今週号のような記事を読むと、やはり朝日新聞だけでなくて週刊文春も必要だなという感慨を持つ。記事には、この時点で日本の大多数が知りたくてたまらない情報が、そのままズバッと正面から掲載されている。まず記事の前にデスクのファインプレーを評価したいが、それは二つの面からである。一つは、権力と癒着した新聞やテレビの怠慢と隠蔽によって疎外された「国民の知る権利」に正しく応えているという意義であり、二つ目は、ライブドア事件に関するあらゆる切り口の中で、野口英昭の「自殺」事件をトップ記事に選んだ戦略とマーケティングのセンスである。ライブドア事件を記事にしようとするならば様々な切り口が可能であり、株と錬金術の話が中心でもいいし、ライブドアの会社内部の暴露話でもいいし、堀江貴文の私生活や女関係のネタでもいい。何をトップにすれば雑誌が一番売れるかはデスクの判断だ。
今回の週刊文春の「ライブドア総力取材」はトップ記事である野口英昭「自殺」事件報道がメインであり、編集部がこの問題を中心にして全体を構成している。ネットの動きを見れば、一般大衆のライブドア事件への関心の軸がどこにあるかよく分かる。週刊文春の今週号は売れるだろう。デスクの感性もいいが、記者が非常にいい。文春らしい取材と記事作りをしている。一週間でよくここまで取材できたものだと感心するが、われわれが知りたかった勘所を外さず押さえていて見事である。この事件を記事にするためには現場である那覇へ飛ばなくてはいけない。われわれは那覇の生の現地情報に飢えていたのだ。だから記事を読みながら、自分が那覇にいるような気分になった。記者は那覇で二泊三日滞在して取材している。そしてカプセルホテルと那覇警察署と現地記者にあたって情報を取っている。この那覇取材が秀逸で、「そうか、やっぱりそうか、よく調べた」と頷くことしきりだった。記事の中には興味深い新事実が数多くあった。
その一つが、ホテルのフロントで現物確認した宿泊カードの記入住所で、そこにはあっと驚く住所が本人の手で記入されていた。詳しくは記事を読んでいただきたいが、これはミステリーである。それから、航空便の半券が財布の中に残っていた事実が紹介され、それによると搭乗機は18日のANA121便(午前10時50分那覇着)だった。さらに遺留品の中にタクシーの領収書があり、18日の朝に汐留から高速で羽田に向かった事実が明らかにされている。18日当日の野口英昭の行動がかなり詳しく明らかになった。午前11時半にホテルにチェックインした後、そこから50メートルほど離れた薬局に行き、そこで睡眠導入剤の「ドリエル」を買って部屋に帰って飲んでいる。また、疑惑を深める謎として、ベッドの脇に血塗れのサッカーシャツが落ちていた事実が指摘されていて、そのシャツは野口英昭の持ち物ではないと断言する夫人の証言も添えられていた。普通に考えれば、シャツは野口英昭を殺害した犯人がその場で脱ぎ捨てたものである。
記者は現場と関係者をよく取材しているが、記事を読んで分かってホッとしたことは、野口英昭の夫人がやはり今回の件を自殺とは思えないという心情を持ち、警察による自殺の断定を疑っていて、週刊文春の取材に対しても協力的に接している気配があったことだ。真相を明らかにしたいという姿勢で、気をしっかり持っている。動転したりとか、怯えたりとか、取材に拒絶的という感じがなかった。こういう場合に、事件の被害者の家族と情報を追う雑誌記者の関係というのは必ずしもうまくいかない場合が多いのではないかと思うが、今回の場合は幸いにもそうではないように見受けられた。事情を聴く方も聴き方が難しいし、取材を受ける側はさらに答え方が難しい。「そっとしておいて下さい」で収まるのが一般的で、今回、ここまでの記事になったのは、夫人と記者との二人の人間関係の幸運を感じさせる。夫人は真実を明らかにしようという意思を持っている。県警の「自殺」説明に納得していない。司法解剖して欲しかったというのが本心だろう。
記事の圧巻は、最後に書かれているカプセルホテル経営者とのやりとりの件で、経営者が警察の判断を覆すような証言はできないから勘弁してくれと言って記者の前で土下座をする。この場面には驚かされたし、記者も読者もさらに疑惑を深めただろう。沖縄県警は、現場を検視して他殺を疑いながら、それを強引に自殺と断定して固めている。そして事件関係者に対して口封じを行っている疑惑がある。沖縄県警が事件を自殺と断定して公表したのが、18日中ではなく19日の朝だという事実も明らかになった。18日の夜中の間、自殺にするかどうかで迷っていたのだ。恐らくこの間、本庁から本部長に指示があり、県警幹部が現場刑事を説得し、組織の論理に折れた刑事が関係先の口封じ(「自殺」の念押し)に動き、カプセルホテル側が地域権力の論理に素直に従ったということなのだろう。週刊文春にはぜひ取材を続けて記事の続編をお願いしたい。記者には現地に再び飛んで、関係者に粘り強く再取材を申し込んで欲しい。ブログが応援する。
久しぶりに面白い記事を読んだ。あまりに印象的な最後の部分を抜粋しよう。
事件当日、119番通報をしたホテル経営者にも再三、事実確認を求めたが、「警察の判断を覆すようなことはできないんです」と言う。それはどういうことかと問いただすと、突然、玄関先で土下座して、「どうかお引き取りください」と懇願された。こちらも正座してなおも取材のお願いをすると、「小さな地域です。私たちが生きていけなくなります。どうかお引取り下さい」。土下座をして頭を床にこすりつけたまま約二十分。その悲壮な姿に押し切られて、記者はその場を去った。ホリエモン逮捕は入り口に過ぎない。解明すべき「闇」はあまりに深いのだ。
週刊文春 2月2号 P.29 「野口”怪死”と堀江の”闇”」
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