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職場から  「下流社会」で「下流会社」が生まれている  【戸坂零一 】
http://www.asyura2.com/0601/hasan44/msg/787.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 1 月 27 日 21:33:03: ogcGl0q1DMbpk
 

職場から

高齢化と格差の社会に生きる

http://www.bund.org/culture/20060205-2.htm


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「下流社会」で「下流会社」が生まれている

戸坂零一

 私は現在、自動車部品製造の仕事をしている。最近、転職してきた。はじめ、あきらかに東南アジア系の顔をした若者が2名ほどいたので、外国人もいるんだ位に思った。他にも若者が何人かいたが、何故かジャニーズ系の彫りの深い人が多い。もしかしてと思っていたら、彼らは昼休みになると礼拝を始めた。皆、インドネシアから来た労働者だった。

 金型に金具を差し込むという単純作業なので、言葉のあまり通じない外国人でもすぐに仕事ができる。彼らは正確には労働者ではなく「研修生」なのである。「研修生」なので、給料は私たち日本の労働者より安い。正社員である私は、彼らと同じような仕事をしているが、彼らより多く給料を貰っている。

 彼らの賃金が安く抑えられているお陰で、私のような正社員はある程度の月給を維持できている。このまえ買った3個で100円の安い石鹸がインドネシア製だった。私の生活費も、インドネシアと日本の経済格差によって安く済ますことが出来ているんだなと思った。

 石鹸に限らず、店に行けばアジア製の安いモノが出回っている。新植民地主義支配ナンセンスと言いたいところだが、結局そのような安いモノを私のような金のない労働者が買う。

 「研修生」以外の非正規雇用としては、お年を召した方が働いている。高齢者を雇用すると、行政から助成金が貰えるので雇っているらしい。それに既に退職した人のタイムカードが未だにある。もういない人の分の助成金も貰っているらしい。彼らはパートとして働いてるが、パートといっても残業がないだけで、勤務時間も仕事の内容も正社員の私と同じだ。それなのに私より賃金が低い。私はいろいろ仕事を覚えて、将来的にはいろいろな事をやらなくてはならないだろうと思う。しかし、現在の私の生活は「研修生」や、パートのお爺さんによってまかなわれている。

 「研修生」自身は、国に帰れば家が建つほど豊かになれるという。日本で働いて豊かになってやろうと、彼らはとてもイキイキしているように見える。それに引き換え、「研修生」よりは豊かな生活をしているはずの日本の労働者には活気がない。自動車産業は景気が回復しているはずなのに、どんどん仕事が減っている。今後の所得の上昇は期待できない。そのような状況の中、別に贅沢しなければ生きてはいけるから、このまま毎日をやり過ごせばいいやという考え方になってしまう。そして、そういうふうに考えているうちに、「贅沢しなければ生きていける」レベルを、自ら少しずつ下げているような気がする。

300円の仕出し弁当

 今、職場では300円の仕出し弁当を取っている。前の職場では400円だったが、それでもかなりヒドかった。400円でもヒドイんだから、どうせヒドイんなら安いほうがいいと思っていた。でもヒドイものにもちゃんとレベルがあった。質がさらに落ちていた。冷凍食品を揚げたものが多いし、サラダのつもりだろうが、パスタやジャガイモなど炭水化物をマヨネーズで和えたものなど、ボリューム感を出すための工夫が多い。一応栄養のバランスを考えているのか、毎日必ずキャベツの千切が少し入っている。でも生野菜はそれだけである。

 弁当を作ってきたり、買ってきてもいいのだが、安いしどうせ職場で食うものだからいいやとなっている。私だけでなく多くの人が不味いと言いながら取っている。そういえば『下流社会』(三浦展・光文社新書)の「下流度」チェック項目に、「食べることが面倒くさいと思うことがある」というのがあった。当方も昼メシなんてどうでもいいと思っているわけで、私を含め会社の多くの人が下流的な考え方になっているのかもしれない。

 「下流」とは単に所得が低いということではないそうだ。300円の仕出し弁当を取るのも別に経済的理由からではない。その証拠に社長もこの300円の弁当を食べている。社長なんだから、もうちょっといいものを食べればいいのにと思う。

 三浦展によれば「下流」は働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲が低いということらしい。社長を含めてそういう考え方になっているのではないか。

 弁当を家から持ってきて300円の弁当は食べていない人の中の一人は、昼食後は歯を磨き、その後は昼休み中読書をしている。性格も外交的で身なりもきちっとした好青年である。私とは行動様式や考え方が違ってきているのかもしれない。

 そもそも私がこの会社を選んだ理由も、給料は安いけど楽だからいいやという理由であった。まさに「下流」の考え方である。毎日、機械のように単純作業を繰り返していれば給料が貰える楽な仕事をしている。というか、私の隣で、似たような作業を機械がやっているのだ。機械で代用できる仕事なのである。責任を負う範囲も、その単純作業についてだけだ。ミスを犯しても甚大な損害を会社に与えるわけではなく気楽である。疎外された労働だが、疎外されているからこそ責任も少なく楽なのだ。

 作業に慣れてくると、仕事と関係ない事を考えながら作業できるようになる。私の場合は作業中に難解な数学の問題や、難しい哲学的な事などを考えている。晩飯どうしようかなども考えるが、それだとすぐに考えが終わってしまう。難しければ難しい事ほど入り込んで考えられるので、時間が経つのが早く感じられるのだ。

 楽だからいいという下流的な考え方になってしまったのには、それなりの理由がある。前の職場は年収は悪くなかったが、精神的にも肉体的にも大変だった。こんなんだったら金は必要最低限でいいから、楽な仕事がしたいと思うようになったのだ。

勤労意欲の喪失

 これまで中流意識だった労働者が、「上」と「下」に分かれているという。厳しい競争の中で、今までのように普通に働いていたのではリストラされ「下」になってしまう。今までのようにそれなりに意欲的に働いていると、経営者側からはこいつは使える奴だということでどんどん仕事をさせられてしまう。それなりの給料は支払われて「中」を維持したり、場合によっては「上」になることもある。しかし仕事に追われ、場合によっては精神病を患ったり、最悪の場合過労死してしまう。そこまでしないと「中」を維持できないのであれば「下」のほうがいいと思うようになる。

 一人暮しなら最悪フリーターでも暮らしていける。遅くまで残業するよりも、金なんか要らないから早く帰りたいと思うのは自然なことだろう。生物学的自己保存欲求(コナトス)の場合すらありうる。そういう状況がかってあり、その後勤労意欲が無くなり、生きる意欲も無くなっていったのではないかと思う。

 立身出世をどこまで追求するかは人それぞれ違っていいし、幸せの形も人によっていろいろだろう。

 しかし問題は、労働条件や経済的状況の悪化によって、生きる意欲や勤労意欲がいつの間にか変わっていることだ。といろいろ考えるのだが、でも今すぐこれらの状況が解決されるわけでもないので、私としては「下流」的な考え方にならないように、最低限美味いものを食べたいという欲求ぐらいは持ち続け、だらだらしないよう規則正しい生活を維持していこうと思う。      

(工場労働者)


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介護ヘルパーは他人の人生と向き合う

村上千鶴子

 介護ヘルパーとなって早半年となった。それまで一般事務しかやってこなかった私にとって、ヘルパーという仕事は文字通り未知の世界だった。昨年7月に就職し、現在2ヶ所の事業所に登録して介護ヘルパーをやっている。最初は、利用者さん(訪問介護を利用する人)とうまくいくのかどうかとても不安だった。私は社交的な方ではないし、接客業の経験もない。まず挨拶と笑顔を心掛けるようにした。

「お尻を拭かして頂いた」

 訪問介護の仕事の内容は、大きく分けると身体介護と家事援助の2つに分かれる。身体介護は食事・排泄・衣類着脱・通院等、身体に関する介助で、家事援助は調理・洗濯・掃除等、身の回りの介助である。私が担当しているのは家事援助が多いが、それでも身体介護もある。

 初めて、排泄の介助をした時のことは忘れられない。Aさんは87歳のアルツハイマー型認知症だ。トイレの後、自分ではお尻が拭けないので拭いてあげたが、軟便であったためきれいに拭き取れない。前任のヘルパーに教わったように、浴室に誘導しシャワーで流してあげた。

 私はかなり緊張していただろう。そんな私に、Aさんは「悪いな。ありがとな」と言って気遣って下さった。Aさんは自力で立って歩ける方なので、私がしたことは介助レベルから言えばきっとたいしたことではない。しかし、私は子育て経験もなく、兄弟にも小さい弟や妹がいたわけではないので、今まで一度たりとも他人のお尻を拭いたことがなかった。自分でも不思議だが、嫌悪感どころか、「お尻を拭かして頂いた」と感動さえ覚えた。とても有難かった。

 またこんなこともあった。Bさんはペースメーカーを装着している。私は週1回、家事援助で入っている。あるサービスの日に自宅に伺ったら留守だった。早速、責任者へ連絡を取り、指示を待つ。すると、この方は以前にもこういうことがよくあったそうで、とにかく帰りを待って下さいとのこと。

 それから間もなくして、Bさんは手押し車を押しながら帰って来た。息をはぁはぁさせ、汗をかいているようだ。待っている私を見るなり、遅れた理由を一気に喋り出した。聞きながら、なんとか落ち着かせようと「こちらは大丈夫ですから」と伝えるが、彼女はとにかく話し続ける。家に入ってからも、40分くらいえんえんと話しつづけた。それからようやく、ちゃぶ台にあったコップの水を一口飲んだ。

 この件で、私はヒヤリ・はっと報告書を提出した。この「ヒヤリ・はっとシート」とは、介護事故を未然に防ぐため事業所に報告し、何があったのか・どう対応すべきだったのか、関係者と共有をはかるためのものだ。その後の月1回の研修会でも、皆に報告した。Bさんは心筋梗塞の病歴がある。胸痛発作や心臓停止などの緊急事態が起こりうる。そんなBさんに対して、私はとにかく聞いてあげなくちゃと、ひたすら聞くことしかしなかった。汗をかき、息を上がらせ懸命に話し続けるBさんに、発作が起きたとしても不思議ではなかった。話しを聞くだけでなく、水分補給や汗を拭くなどの対応を早くすべきだったのだ。何事もなかったから本当に良かったが、つくづく精神面のケアと身体面のケアが密接な関係にあることを知った。

介護は関係が肝

 この間、本当に様々な方と出会い、色々なことがあった。介護ヘルパーは生活援助でサービスする場合も、ただ単にもくもくと掃除や洗濯をすればいいわけではない。利用者さんとのコミュニケーションがとても大切だ。おしゃべり好きの人は、こちらが掃除機をかけていようが話し掛けてくるので、何度も止めながら合間合間に会話したりするので、結構エネルギーがいる。2時間のサービスの場合は終わるとどっと疲れる。

 それでも、いっしょに過ごす時間は楽しいものだ。かなり重度の認知症で、5分10分前のこともすぐ忘れてしまうおばあさんが、すでに亡くなった旦那さんのことを「うちの旦那は舌が肥えてて味付けにうるさかったから、自分でしてもらった」と話してくれた。マンションに1人住まいの女性は、今でいう出来ちゃった婚で、子供が生まれてすぐ旦那は他の女の元へ去り、その子を旦那の実家に預け、ずっと1人で生きてきた。幼児の時に養子に行き肉親を知らずに育ったが、本当の親を知りたいと思ったことはないと話す穏やかなおばあさん。

 3年ほど前に妻に先立たれ、昨年、胃癌のため全摘出手術を受けた84歳のおじいさんから、就寝前に「生きていくっていうのはしんどいなあ」としみじみ話されたこともある。何て返答したらいいのか、言葉につまった。

 もしかしたら、人生はしんどいことの方が多いのかもしれない。それでも人はユーモアや笑いを失わない、したたかさを持ち合わせているような気がする。ある夫婦のところには、週1回2時間の掃除と調理に行くのだが、途中何度も、「すまんなあ。こんなにようしてもろて」「もういいから、休まさんな」と言われ、こちらが恐縮してしまうほどだ。柔らかな物腰の奥さんに、「わたしらにようしてくれるのと同じくらい旦那さんにもようしてやらなあかんよ。ふふふ」と言われ、私の方は「ははは」と笑ってごまかした。お年寄りは周りの人をよく観察していらっしゃる。

 最近読んだ本の中で、次のような言葉に出会った。「介護は介護力ではない。介護の本質は介護関係だ」。人は必ず年を取る。自分の老いをどう受けとめていくのか、両親や祖父母の介護をどうするか、年取った夫(妻)とどう向き合っていくのかを、真剣に考えていくことが必要だ。

 今年4月に介護制度が改正される。その1つに、要支援と要介護1の方の家事援助サービス見直しがあるという。財政面からの検討も大事だが、利用者が求めているニーズに、よりよく答えていける制度にしていかなければならないと思う。    

(ホームヘルパー)


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(2006年2月5日発行 『SENKI』 1202号6面から)

http://www.bund.org/culture/20060205-2.htm

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