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□ホリエモン的功罪とは [東京新聞]
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060125/mng_____tokuho__000.shtml
ホリエモン的功罪とは
「人の心はお金で買える」と言い切ったライブドア前社長、堀江貴文容疑者の証券取引法違反事件は拝金主義の流れにくぎを刺した。溜飲(りゅういん)を下げる声が上がる一方で、「堀江流」には時代の申し子と評されてきた面もあったはず。その功罪とは。
堀江前社長のインターネット上のブログ(日記風サイト)には、一般の人から書き込みが相次いでいる。
「罪は罪。だけど必ずまた戻ってきて下さい。(ライブドアの)株券はそれまで持ってます」「いつの時代でも同じ。新しい動きには批判や嫌悪の矛先は向くもんです」
東京地検は「証券取引の公正を害する重大な法律違反が証拠で明らかになった」(伊藤鉄男次席検事)として事件の解明を進めるが、二十三日の逮捕後も一般からのエールは減らない。
ライブドアをめぐっては、有識者からも粉飾決算などの違法行為と、株式分割のような適法行為をごちゃまぜにした論評がなされている。専門家たちはホリエモンの“功罪”をどう見ているのか。
■2リーグ制廃止 阻止する役割も
悪質商法や消費者トラブルに詳しい紀藤正樹弁護士は同氏を「空(から)」と形容する。
「IT(情報技術)企業を経営しながら、ネットに必ずしも詳しくないという印象を会った際に受けた。その知識のなさが既成の社会ルールに風穴をあける強みにもなった」と分析。
その一つが近鉄球団の買収提案だ。「堀江氏が買収を提案しなければ、二リーグ制は廃止されていたはずで、堀江氏は歴史的な役割を果たした」と、堀江前社長の突破力を評する。
著書に「株式投資これだけ心得帖(ちょう)」もある個人向け投資顧問会社ビー・アール・ビー・インベストメントの東保裕之(とうぼゆうじ)代表は「まだ起訴されたわけではないので」と、言葉を選びつつ「株式分割は、少額で投資できるようにと、東京証券取引所も推進したもので、それ自体は悪いことではない。ただ(証券)業界の人間なら三分割、五分割、せいぜい十分割と考えるところを、ライブドアは百分割というとんでもないことをやった」と、堀江前社長の素人ならではの発想に舌を巻く。「みんなが驚いている間に株価が上がる、ということにかけて一種の天才だったのでは」
■株式分割の手法 結果的には改善
ところで、「株式分割のからくり」は、ある株の百分割を公表した後、実際に株を取引できるまでの“品薄”状態を巧みに利用して、株価を高騰させる仕組みだった。現在は、品薄状態を防止するため、分割した直後から売買できるように改められた。
こうした経緯を踏まえ、東保氏は「株式分割で株価を上げて幻惑する手法が定着していたが、結果的にライブドアのおかげで改善された。今回の事件の影響で、監査法人に対する世間の要求水準も上がるのでは」と、逆説的にホリエモンの“功”を語る。
経済評論家の奥村宏氏は「相手企業の株を買い占め、乗っ取るのは悪いことでもなんでもなく、乗っ取られるのがいやならば、企業は上場廃止すればいい。古いエスタブリッシュメントの経営者らはホリエモンに脅威を感じたが、若者からは共感を得た。既成の枠を壊した点がカッコつきの“功”だ」と話す。
さらに、明治学院大学の川上和久教授(メディア論)は堀江前社長を「犯罪は犯罪として糾弾されなければならないが、それと区別して堀江氏が社会にもたらしたプラス面も考えるべきだ」と指摘。その一つが、「ライブドアという無名の企業を若者のあこがれの的にしたこと」だ。
■全面否定すれば萎縮を生むだけ
川上氏は「メディアにニュース価値を売り込む才能は小泉首相に通じるものがある。大学受験生の間で、経済学部が法学部よりも人気が出たのも堀江氏の功績だし、若者のベンチャー意欲を引き出した。堀江氏のやってきたことを全面的にバッシングしたら、世の中が萎縮(いしゅく)してしまう」と指摘する。
堀江前社長が、ニッポン放送株の買収を通じて乗り出したテレビメディアとの攻防の功罪はどうか。
「放送レポート」の岩崎貞明編集長は「テレビ局だって金もうけに走っている。フジテレビ首脳が『自分たちは報道機関だ。公共性がある』と言ったとき、視聴者から『くだらない番組をやっているくせに、公共性が分かっているのか』とのメールを受けたという同社関係者もいる」とのエピソードを紹介した上で、「寡占市場で新規参入企業を拒んできた経営者ら」(岩崎氏)が、堀江前社長から、放送の公共性とは何かという大命題を突きつけられたと見る。
また、岩崎氏は「ライブドアは市民ジャーナリストの記事をインターネットで紹介し、事件当事者が自分で書いた記事も掲載された」と話す。たしかに「大手メディアが報じてくれない話でも、ライブドアは報道してくれた」(難民救済の関係者)という声もある。
一方、前出の奥村氏は、堀江前社長の負の遺産も裏返しで強調する。
「株式分割で過剰な投機を招き(株価をつり上げておき)株式交換で相手を乗っ取る」と分析し、「ネット取引で一日に何度も回転売買するギャンブラーが増え、証券市場が賭博場と化さなければ、ホリエモンの手法は通用しなかった。以前なら、旧大蔵省が値幅制限しただろう。規制緩和と称して投機が促進されている。株の投機化を放置している国は、ほかにない。証券・金融行政のあり方が問われている」と話した。
■崇高な理念装い文化には無関心
ニッポン放送・フジテレビとの騒動でも、ネットとテレビの融合という「崇高な理念」をぶち上げておきながら手を引き、結果的に巨額のもうけをあげたと指摘し、「一九六〇、七〇年代に横行した(標的企業に高値で株の買い取りを迫る)グリーンメーラーと変わりない」と断じる。
プロ野球への参入表明にも疑問を投げ掛ける見方がある。
スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は「堀江氏がプロ野球参入を言い出したのは、スポーツがもつ文化的な価値に関心があったからではなく、金もうけの手段としてだけだった」と切り捨てる。
そのうえで「球界が十二チームで成り立っていくのかどうかが問われていたのに、問題は何一つ解決されず先送りされた。堀江氏を救世主として持ち上げた選手会は猛省しないといけない」と苦言を呈す。
野球解説者の江本孟紀氏も「堀江氏がプロ野球参入を表明したのは、近鉄が球団を売却せず、オリックスと合併することが決まった後だった。本気で球団経営を考えていたわけではなく、初めから会社の宣伝を狙ったものだった」と批判的だ。
前出の紀藤氏は、堀江前社長の「空」は同時に弱みでもあったと指摘する。「いいアイデアが転がり込んできたとき、無条件に取り入れてしまう。ドラえもんのポケットのように何でも取り出せる。それが一方で風穴をあけたが、他方で犯罪とモラルの見分けすらつかなくなってしまったのではないか」