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□『ホリエモン』生まれた理由 [東京新聞]
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060124/mng_____tokuho__000.shtml
『ホリエモン』生まれた理由
「時代の寵児(ちょうじ)」「改革の旗手」。ライブドア社長の堀江貴文容疑者(33)は、ユニークなキャラクターとあっと驚かせる経営手法で、こうもてはやされてきた。一連の“錬金術”が明らかになるにつれ、それが「虚像」だったことが、白日の下にさらされつつある。だが、その姿は誰がつくり上げたのか。虚像「ホリエモン」が生まれたワケは−。
「怪しげな企業」。テレビ東京の菅谷定彦社長は十九日の定例会見で、こうライブドアを評した。同社長は「実態は金融業、証券業と知っていた。際どいことはしない方がいいとずっと思っていた」と切って捨て、返す刀で堀江社長を「バイタリティーはいいが、結局はルール違反。(大切なのは)モラルだ」と嘆いた。
もっとも、テレ東は今年一月から、番組「いい旅・夢気分」で、番組中で紹介した商品をライブドアでネット通販する提携をしており、今月四日と十一日の番組で取り上げた商品を実際にネット販売。四日放送分には堀江社長が出演した。
だが、ライブドアに証券取引法違反の疑いが浮上すると、通販提携を解消し、十六日に別の番組に出る予定だった乙部綾子広報担当の放送分を急きょ変更した。「十六日の時点で、東京地検特捜部が強制捜査をしていたので、差し控えた」と同局広報IR部は話す。
これに慌てたのは同局だけではない。テレビ朝日も乙部氏が出演する予定だった十八日放送のバラエティー番組を、過去の同番組の名場面集に差し替えた。
広報担当者は出演依頼した理由を「番組の趣旨から、出演者として適当と考えた」とした上で、放送を見合わせた理由については、こう説明した。「乙部さんは、ライブドアの広報の代表的な存在で、対外的には堀江さんとつかず離れずのイメージがある。番組はバラエティー番組で、料理を材料に楽しくおかしく、という番組。その番組の趣旨を踏まえ、この時期に、放送するのは適当でなく、視聴者に誤解を与えかねないことから差し替えた」
堀江社長らは、以前から民放各局で引っ張りだこだった。フジテレビは、ライブドアがニッポン放送株買収に乗り出す以前は、「平成教育2005予備校」の解答者に堀江社長を起用したり、二十五時間テレビでも生出演をさせた。日本テレビは「真相報道バンキシャ!」に、TBSも「全員正解あたりまえ!クイズ」に−と、各局とも、バラエティー番組を中心に頻繁に堀江社長らを使っていた。
■各局“狂騒曲”にフジ社長が苦言
報道番組まで大量に放送する各局の姿勢を昨年二月、ニッポン放送株争奪戦のさなかにあったフジテレビの村上光一社長が「あまりにも“狂騒曲”」と異例の批判をしたが、勢いは収まらなかった。TBSの番組「ブロードキャスター」によると、各局ワイドショーが昨年一年間に堀江社長を取り上げた時間は、計五十四時間六分四十八秒、年間ランクの六位になった。人物を取り上げたものでは一位の小泉劇場、三位の若貴兄弟に次ぐ。
立教大学の服部孝章教授(メディア法)は、各局が堀江社長を使った背景を「世の中が勝ち組負け組という中で、堀江氏は成功をばく進中の人というイメージがあり、視聴率がとれた。ニッポン放送株をめぐる問題も、株ゲームとしてとらえられ、立て続けにテレビに出ることで、ホリエモン劇場となった。それが話題を呼び、堀江氏の信用が上がるというスパイラルに入り、テレビと堀江氏が持ちつ持たれつの関係になった」。
「自民党自身が堀江氏を小泉改革の広告塔、総選挙の象徴的存在、ネット世代の若者を取り込む票寄せパンダとして大いに利用した」。民主党の前原誠司代表は二十三日の衆院代表質問で、こう自民党を批判した。昨年の衆院選で、出馬した堀江社長の自民党の持ち上げぶりは目についた。
公示日の昨年八月三十日に、竹中平蔵郵政民営化担当相が広島6区を訪れ、「小泉、ホリエモン、竹中で改革をやり遂げる」と演説。武部勤幹事長も投票直前に同区入りし、「堀江君はどの候補者よりも可能性を持っている。ホリエモンは私の弟です」と称賛した。
■「政府保証した」身内からも批判
小泉自民党への批判は身内からも出ている。加藤紘一元幹事長は二十二日のテレビ出演で、「『私と堀江氏と小泉首相で改革をやる』と言った責任は大きい。堀江氏を政府保証した形になった」と竹中氏らを批判した。そもそもライブドアがニッポン放送株を時間外取引で大量取得した昨年二月には、自民党内でも疑問視する発言が相次いでいた。それが選挙では「改革の旗手」になっていた。
こうした「御輿(みこし)」に乗ったホリエモンは知名度を上げた。ネット視聴率調査のネットレイティングスによると、ライブドアのサイトを訪問した人は、昨年一月の千七万八千人から総選挙直後の同九月には千四百五十四万九千人に増加した。
政治評論家の森田実氏は小泉自民党の道義的責任について、「テレビがつくり出した英雄を、党内に反対意見があったのに、票が取れるからと安易に担いだ。モラルや社会規範を忘れ、構造改革とはしゃぎすぎた。カネさえあればいいんだという生き方を国民に広めてしまった首相の責任はものすごく重い」と話す。
一方で、実態がよくわからない企業の株価を上げたのは個人投資家といわれる。ライブドアの株価は、株式分割で一気に上がった。特に二〇〇四年二月に実施した百分割が論議を呼んだ。〇三年十一月に百分割を公表すると、一千億円程度だった株の時価総額が、〇四年一月にはピークの約九千三百億円に達した。
■専門家から疑問 上場廃止予言も
ただ、こうした堀江流経営は、専門家の間では以前から問題視されていた。フォレスト・コンサルタンツの山根治主任コンサルタントは、自身のホームページで昨年三月に「ホリエモンの錬金術」と題したコーナーを開設し、「有価証券報告書を私なりの方法で分析した限りでは、粉飾の疑いが極めて濃厚」と指摘。同年七月まで二十回の連載でライブドアの資料を分析、「上場廃止が現実問題として検討されるに至るでしょう」と予言していた。
企業法務に詳しい永沢徹弁護士は「株式分割などによる急成長を可能にしたのは企業価値より、株価の上下に関心のあった個人投資家だった」と指摘する。実際、有価証券報告書(昨年九月末時点)によると、ライブドア株の約56%は個人が所有していた。さらに「ライブドアはIT関連企業の中では、機関投資家の持ち株比率が非常に低かった。収益のほとんどを投資に依存していて、機関投資家は事業内容に納得していなかったからだ」という。
虚像をつくりあげる間、それに異を唱える声があったのにかき消されてしまった。月刊誌「創」編集長の篠田博之氏は、堀江社長の虚像ができた背景をこう解説する。「数字(視聴率)が取れるからとメディアの側も無自覚に堀江氏に乗っかり、そのことが株価にも影響を及ぼし、ビジネスに利用された。ふたを開けてみれば『共犯関係』になっていた。政治の側も同様に利用された。本来なら自覚しなければいけなかったことで、そこは深く考え、反省しなければならない」