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野口英昭は誰に殺されたのか − LD株と純金ファミリー証券
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野口英昭の衝撃の死によって、事件は一気に毒々しい雰囲気が充満するものになった。捜査の行方をを気軽に予測分析しながらライブドア問題の思想的意味を考察するつもりだったが、見ている世界が急に陰惨な様相を呈して、気分が重苦しく憂鬱になってきた。これまで堀江というのは書く題材として楽しい存在だった。株にせよ、野球にせよ、選挙にせよ、堀江貴文は敵ながら憎めない性格があり、キャラクターとしての堀江貴文の人気を認めざるを得ないところがあった。不信の中での容認があった。だが、今度の「自殺」事件で私の見方は一変して、軽快な気分で堀江貴文と相対することができない。野口英昭の死を自殺だと確信する人間は一人もいないだろう。明らかに誰かの手で殺されている。証取法違反だとか、脱税だとかのレベルの話ではない。人の命が奪われたのだ。野口英昭は四日前の週明け月曜日の朝に会社に出勤したとき、まさかニ日後の水曜日に自分が死体になっているとは想像もしていなかっただろう。強制捜査で人生が暗転した一日前の火曜日ですら、まさか一日後に自分が死んでいるとは思わなかっただろう。
否、死ぬ一時間前ですら、まさか自分がそんな運命になるとは予想していなかっただろう。野口英昭は生きるために沖縄に逃げたのであり、死ぬために逃げたのではない。自殺する動機がない。検察はブツ読みの最中で、野口英昭が呼び出されて取調べを受けるのはこれからだった。暫く身を隠していてくれとか、海外に高飛びしてくれと言われたのだろう。野口英昭が行方不明になれば、関係者は「偽計取引は全部あいつがやりました」と口裏を合わせることができる。台湾への逃亡を手引きする人間が来るから那覇のホテルで接触してくれと言われて、それを信じて家族にも無言で羽田から飛行機に飛び乗ったのだ。警察は航空券購入のルートを洗うべきだ。莫大な報酬を約束されて、泥を被って海外逃亡する道を選んだのだ。待ち合わせ場所に現れた人物が、カネとパスポートを渡すかわりに包丁を突き刺したという結末だろう。テレビのドラマのような話である。沖縄県警は安易に死体を火葬せず、死因を疑って司法解剖するべきだ。手首だけでなく腹部にも刺し傷があるのだから、利き腕と傷の角度に矛盾はないか調べるべきである。
正直に言って、耐震偽装事件で海に飛び込んで「自殺」した設計士については、私はそれほど関心がない。分かりすぎる話であり、特にそこに腑に落ちない感覚を持たないのだ。国会の証人喚問中継での小嶋進の態度が全てで、不動産業界というのは暴力団の支配する世界の一部だと認識しているし、バブルの時の地上げも見てきた。不動産事業はカタギの人間がする商売ではない。だが今度の野口英昭の「自殺」については、簡単に素通りして「よくあることだ」で済ませられない。「これは殺人事件だ」と声を張り上げないわけにはいかないのである。普通に考えれば、どう考えても他殺の可能性が高いし、もしそれが殺人であったとするなら、テレビでホリエモンのキャラクターを演じている現実と、今度の凄惨な事件とはあまりに感覚的なギャップが大きすぎて、その間の分裂を納得的に埋めようがない。狼狽しながら、二つの矛盾する現実を何とか一つの像に結ぼうと心が葛藤するのである。真実が知りたい。自殺はあり得ない。とすれば他殺しかない。とすれば誰が野口英昭の殺害を指令したのか。プロに「仕事」を依頼した犯人は誰なのか。
その設問に真面目に自答しようとすると心が凍りつく思いがする。なぜなら、自然に考えて、野口英昭を殺そうとする動機を最も強く持つ人間は堀江貴文だからだ。それは信じられない。警察の捜査で野口英昭の死が「他殺」になる事態はないだろう。できれば、沖縄タイムスか、朝日新聞か、週刊文春か、誰でもいいからジャーナリズムの野心と意志を持った人間が出て、事件を掘り起こし、取材を重ねて真実を暴き出すことを期待したい。現在は単に疑惑の段階であり、誰かを殺人容疑者視することはできないが、この報道を聞きながら考えたことは、結局のところ堀江貴文とその仲間は、闇の世界と日常接触のある汚い株屋集団で、彼らが売っていたライブドア株という商品は、豊田商事の永野一男が高齢者を騙して売っていた「純金ファミリー証券」と同じだということだ。豊田商事事件の被害額は2千億円。会長の永野一男が刺殺。ライブドア事件の被害額は5千億円程度だろうか。殺されたのは今のところ一人。純金ファミリー証券の商売は最初から詐欺だったが、ライブドア株の商売は詐欺ではなく合法だった。だが本質的な構造は同じだ。
ライブドアや楽天をIT企業だと呼ぶのは抵抗がある。本当にIT企業の現場で製品を開発している従業員にとっては不愉快で迷惑な話だろうし、株屋をIT事業者と呼ぶのは間違った話なのだ。新自由主義のイデオロギーが為せる粉飾と欺瞞である。堀江貴文はハードの設計もできないし、ソフト開発の技術も持っていない。そのような知識や素養を最初から持たずに「新興IT企業」の経営者になった。孫正義は身体の半分以上は株屋だが、ソフトウェアを取り扱う知識と経験は持っている。二十年前はソフトの卸屋で、小さなソフトハウスが開発したPC用のソフト製品にブランドを付けてパッケージ流通させるのが商売だった。堀江貴文はホームページ製作業者から始めたと言うのだが、堀江貴文がネットの技術やウェブの将来を語ったのを聞いたことは一度もない。堀江貴文が持っていた専門知識は株の知識であり、本当なら証券会社で営業をやっているべき男である。ライブドアの唯一の商品である発行株式は、野村証券のファンドとか山一証券の投資信託とかと同じペーパー商品であり、ライブドアの事業経営の中身は企業買収と株価操作だけだった。
野口英昭の自宅は目黒区内の新築の車庫付き一戸建てだった。記者会見で出たM&Aマネジメント社長の角田幸治が奇妙に薄笑いしていたのが恐ろしかった。検察に向かって笑って見せているようだった。角田幸治も、泣きの演技を見せた澤田秀雄も、全てを知っている。そう思った。
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