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(回答先: 例えば、住友銀行 名古屋支店長 射殺事件 投稿者 hou 日時 2006 年 1 月 20 日 01:24:27)
http://bizns.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/search/wcs-bun.cgi?ID=144577&FORM=biztechnews
マイカル破綻でみずほグループ内の亀裂が露呈
2001年 9月26日
「一体何が起きたんだ」――。その瞬間、第一勧業銀行首脳陣の表情は凍りついた。首脳陣に届いたのは、「四方修社長解任、民事再生法適用申請」という第1報。マイカル処理に当たって同行の描いていたシナリオが、もろくも崩れ去った瞬間でもあった。
第一勧銀サイドはもともと、8月14日に実施した570億円の緊急融資を「事実上の最終融資」(同行幹部)と位置づけていた。マイカルは3000億円を超える社債を発行しているが、約500億円を調達するために昨年8月に発行した社債には制限条項がいくつかついていた。この中には「純資産の20%以上をほかの債務の担保には入れない」という担保制限もあるため、これ以上の有担保融資は、この制限条項に抵触することになる。
純資産の維持を求める条項があったことも事態を難しくした。マイカルが最も必要としていたのはもちろん現金である。だが、地価が下落する中で、店舗や土地などの売却に踏み切れば、この純資産条項も守れない。過去の大量の社債発行があだとなり、にっちもさっちもいかない状況に陥っていた。
マイカルの経営状態を考えれば、無担保融資に応じられないのは明らか。「次の資金需要が発生する9月中旬までに、外資との提携など信頼性のある再建計画が立てられなければ、最悪、法的整理しかない」(幹部)というのが同行の立場だった。
実際、マイカルの経営は最悪のシナリオをたどる。営業成績は上向かず、巷間噂された米ウォルマート・ストアーズとの提携話も一向に前に進む気配がない。当初ウォルマートとの間では一部店舗の売却で話が進んでいたが、価格面でなかなかまとまらなかった。焦るマイカル側が交渉過程で資本参加を含めた包括提携を求めたこともあり、交渉は一層難航した。冷静に考えれば、1兆円を超える負債を抱える企業に資本参加するリスクを米企業が冒すはずがない。それだけマイカルは追いつめられていたとも言える。
予想外の民事再生法にショック
9月に入り、当初400億円程度を予想していた新たな資金需要は五百数十億円に達することが確実視されるようになった。債権放棄を軸とする私的整理に踏み切ろうにも、3000億円を超える社債がある以上、たとえ債権放棄したとしてもその後の再建はおぼつかない。この段階になって、第一勧銀首脳陣の考えは完全に法的整理に傾き始める。それも、マイカルの経営陣が再建にそのまま当たることができる民事再生法ではなく、裁判所の管轄下で第三者の管財人が再建を指揮する会社更生法による法的処理である。
それを後押しする動きもあった。マイカルが民事再生法を申請する4日ほど前、第一勧銀の杉田力之頭取は頭取室で同行の特別顧問である2人の弁護士と向かい合っていた。特別顧問は、1997年に起きた総会屋事件をきっかけとして新設されたポスト。当時の金融監督庁(現金融庁)からの業務改善命令に基づいて、コンプライアンス(法令順守)状況についての助言機能を持つ。
そのうちの1人、阿部昭吾弁護士は「内容については言えない」と口を閉ざすが、第一勧銀関係者の話を総合すると、マイカルに対する今後の融資について「担保が確実に取れる」「再建計画が明確である」などの条件を提示した模様だ。
さらに、会談内容については明らかにしない阿部弁護士だが、「会社更生法によって公正で透明性の高い処理が実施されるならば、その後の資金繰りについては第一勧銀が融資しても問題はないと、個人的には結論づけていた」と明かす。「個人的」とはいうものの、実際にはこうした意向を第一勧銀側が知らないとは考えにくい。第一勧銀にとって、会社更生法による法的整理とその後の金融面での支援がマイカル処理の唯一無二の方策だったに違いない。
それが一瞬にして崩れ去ったのだから、第一勧銀のショックは大きい。今後のマイカルから運転資金融資の要請があった場合の対応を聞かれた第一勧銀幹部は、一様に「全く白紙。再建計画次第だろう」と答えるしかなかった。
動揺を隠せない第一勧銀だが、みずほフィナンシャルグループの他の2行、日本興業銀行や富士銀行関係者の視線は冷ややかだ。あるみずほ幹部のコメントがそれを象徴する。
「第一勧銀はマイカルとどういうつき合いをしてきたんだ。(社長解任という事態を見ると)第一勧銀はマイカルの情報を全く把握していなかったわけだ。ここまで甘いとは。結局は旧第一銀行出身者と旧日本勧業銀行出身者の対立構造が、マイカル問題で表面化したということだろう」――。
このコメントを理解するには少し解説が必要だろう。実は、マイカルはもともと、旧勧業銀行の取引先。そして杉田頭取は旧勧業銀行出身者である。これに対して「旧第一銀行出身の役員陣はマイカル支援に対して終始消極的で、杉田頭取もコントロールできなかった」と、第一勧銀以外のみずほ関係者の多くは証言する。
マイカルの経営が悪化の一途をたどる過程で、みずほ関係者の焦燥感は募る。第一勧銀からの情報が他の2行に全く入ってこない状況が続く中、興銀と富士銀は金融庁や一部政治家に処理を急ぐように働きかける動きにも出た。だが、第一勧銀の動きは鈍い。みずほ内部では「派閥争いの影響」との見方が強まるばかりだった。
無論、第一勧銀首脳陣は「そんなことが今時あるはずがない」と、こうした見方を言下に否定する。だが、マイカル側からも同じような見方が出ている。以下はあるマイカルの役員の述懐である。「今から考えると、今年春に(1000億円の)コミットメントラインを設定できていれば、信用不安は起きなかったかもしれない。ところが、3月には杉田頭取が体調を崩して入院してしまった。そこから旧第一銀行系の力が強くなって、結局はコミットメントラインもご破算になった」
足並みそろわず足の引っ張り合い
大手銀行が4大メガバンクに集約されようという現在、いまだに旧第一銀行系と旧勧業銀行系の対立とは時代錯誤も甚だしいが、事実だとすれば、存亡の危機に立たされた97年の総会屋事件を経ても、第一勧銀の体質は変わり切れなかったことになる。
突然のクーデターで社長が解任されたマイカルでも、外様の四方前社長と生え抜きの山下幸三新社長の間に亀裂があった。マイカルを支える立場にあった第一勧銀も旧第一、旧勧業という対立をいまだに抱えていたとすれば、マイカルの破綻は2つの「二重構造」が内部崩壊を招いた結果と言えなくもない。
今回のマイカルの破綻劇は、負債総額1兆円を超える大型倒産というだけではなく、みずほグループ内の亀裂を露呈させたという点で深刻の度が増している。
総資産で世界最大規模の銀行内が不信感に満ちたものであるとすれば、ただでさえ機能不全に陥っている金融機能再生の障害になりかねない。しかもわずか半年後の来年4月には、3行は組織上は完全に一体化し、法人取引銀行、リテール(小口金融)銀行に再編される予定なのである。
みずほグループの他の2行が今回のマイカル問題の処理に関して第一勧銀を批判するのは簡単だ。だが振り返ってみれば、1年前のそごう破綻で露呈したのも、メーンバンクである興銀のそごうに対する影響力のなさだった。いわば五十歩百歩である。にもかかわらず、みずほ内部の相互批判は収まることがない。
9月16日、「マイカル処理に関して、みずほ内部から第一勧銀の派閥抗争の話が出ているが」と質されたある第一勧銀の首脳はこう言って他の2行への不信感を隠さなかった。
「第一勧銀は過去の合併に伴う不協和音に悩まされたので、みずほではそうしたことがないようにと頑張っているのに、実践が伴わない。まずはトップから実践すべきなのに…。誰が言っているかは大体分かっている。これからの体制で優位に立とうという意図だね。本当に怖いよ」(田村 俊一)