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2006-1-7「しんぶん赤旗」〔国民運動〕7面
厚生労働省の今後の労働時間制度に関する研究会は、一定の条件を満たしたホワイトカラー労働者を労働墓準法の労働時間規制から除外する新たな制度づくりを柱とする報告書素案をまとめました。
●対象者は
新しい制度を適用された労働者は、休日・深夜を含む労働時間規制の外におかれ、残業代も払われません。素案は、この制度の対象となる労働者の要件を次のように提案しています。
@職務要件。
▽職務遂行の手法や出退勤時刻などの労働時間の配分について、使用者の指示を受けず、自分で決められること。
▽労働時間の長短ではなく、成果や能カで賃金が決定されていること。
A本人要件。
▽一定以上の年収が確保されていること。
▽本人が同意していること。
B健康確保要件。
素案は、これらの要件を満たす労働者として、企業における中堅の幹部候補者で管理監督者の手前に位置する人や、設計部門のプロジェクトチームのリーダーを例示しています。
●判例無視
これらの要件で、もっとも重要なのは、労働時間を自分で決められるということです。
素案の例示で出てくる管理監督者とは、労働基準法四一条で労働時間規制の適用を除外されている人です。どういう人が該当するか。旧労働省の労働墓準局通達は、@経営者と一体的な立場にあるA出退社などについて厳格な制限を受けないB地位にふさわしい処遇―の三つの要件を示しています。
会社に管理監督者とされたが、それには当たらないとして割増賃金の支払いを求めた裁判の判例がいくつかあります。
駅助役(国鉄荒尾駅事件)、取締役工場長(橘屋事件)、調査補=支店長代理=(静岡銀行事件)、レストラン店長(レストラン・ビュツフェ事件)などが管理監督者に当たらないと判断されています。判断の基準として重視されたのが通達のAの要件です。
管理監督者とされた人でさえ労働時間を自分で決められるような働き方をしていないとした判例にてらせば、素案の労働時間の要件を満たす労働者はほとんどいません。労働墓準法を変えてまで新しい制度をつくる意味はありません。
●財界の要望
それでも新制度導入にこだわるのは、労働者を長時間働かせ、残業代は払いたくないという財界・大企業の強い要望があるからです。
日本経団連のホワイトカラー・エグゼンプションの提言は、年収四百万円以上の労働者ならだれでも対象者になるとしています。それにくらべると、素案は厳しい要件を課しているように見えます。しかし、素案には「ざる法」ともいえる抜け道があります。
それは、具体的な職務要件や年収要件は法律によらずに、「労使協議に基づく合意や年収要件は法律によらずに、「労使協議に墓づく合意により決定し、又は緩和することを認め、…各企業ごとの実態に応じた対象者の範囲の画定を可能とする」としていることです。これでは企業のやりたい放題です。
素案が経団連の提言を念頭においていることは、「管理監督者の手前に位置する」というあいまいないい方で企業の選択の幅を広げたり、「一定以上の年収」が「通常の労働時間管理の下で働いている労働者の年収額を下回らない」程度としていることをみても明らかです。
研究会は一月中にも報告をまとめる予定です。次の段階である労働政策審議会では研究会の報告を「たたき台」とせず、遇労死を生む異常な長時間労働やサービス残業を根絶する政策について、改めて審議すべきです。