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http://www.nikkei.co.jp/ks/desk/20051230b18cu000_30.html
木村貴デスク
「ライブ8」を覚えていらっしゃるでしょうか。今年の夏、ロンドン、東京など世界各地で同じ日にロックコンサートを開き、アフリカ支援を呼びかけたイベントです。米タイム誌の「今年の顔」にも選ばれたボノさんがボーカルを務める「U2」や、ポール・マッカートニーさんなどが出演し、多数の観客を集めました。
同じ時期、欧州では農業補助金制度の見直しを巡り、英国と独仏などとがさや当てをしていました。こちらもアフリカに関係ある話です。農業国でもある独仏などが国内の農家を保護しているために、競争力の弱いアフリカの小規模農家が圧迫されている、と英国が主張しているからです。ブラウン英財務相は農業補助金を批判して「先進国の偽善」とまで言ったそうです。
独仏にはそれなりの言い分があるのでしょうし、英国に政治的な思惑もあることでしょう。しかし少なくとも経済的な理屈のうえでは、英政府の主張は間違っていません。英国の著名な経済学者であるリカードの説いた比較優位の原理にしたがえば、工業を得意とする欧州は農業補助金を撤廃し、農業を得意とするアフリカの農作物を輸入する方が、欧州・アフリカ双方の国民全体にとって経済的にプラスになるはずです。
欧州に限らず、理屈のうえでは、アフリカを貧困から救いたければ先進国政府は農業補助金だけでなく自由貿易を阻害する各種の保護制度を廃止した方がよいし、国民もその決断を支持すべきでしょう。自由化の影響で生活に困る人が出た場合は、社会保障などで救済し、自由化そのものをやめるべきではないでしょう。
これはいわゆる「グローバリゼーション」の考え方です。一部の人々にはすこぶる評判が悪いのですが、少なくとも選択肢の一つとしてきちんと議論すべきだと思います。「ライブ8」に参加した人たちは賛成してくれるでしょうか。
さて、本日の紙面では2005年の世界株価騰落率ランキングを掲載しました。原油高の恩恵を受けた中東諸国やロシアなど資源国が上昇率上位を独占し、米国や中国が下位になりましたが、中東以外のアフリカの国は、南アフリカを除いてそもそもランキングに登場すらしません。金融の最も基本的なインフラである株式市場が存在しないか、存在してもきわめて未発達だからです。
来年はまだ無理でしょうが、アフリカ諸国が自由貿易の下で経済力をつけ、農業だけでなく工業も発達し、ランキング上位を占める年がやって来てもらいたいものです。