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(「12」ハタラク:1)10年後のために、今
データでみる12歳
「紗綾(さあや)ちゃーん、こっち、うさちゃんVサインでお願い」
カメラを構えた中年の男性が声を上げると、紗綾(12)はステージで向き直り、両手のVサインを頭上に掲げてほほえんだ。
東京・秋葉原。
DVD発売記念のイベントには30〜40代の男性が長い列を作った。女の子3人組のグループ「スウィートキッス」の一員だ。
「ありがとうございました」。ファン一人ひとりの手を握って、見送る。名古屋、東京と2日間で4カ所の仕事をこなした。
楽屋に戻ると、1日で100人以上と握手した手のひらをウエットティッシュでふきとり、両手で腰をさすった。
4歳から地元・福岡のダンススクールに通い、2年前、オーディションでスカウトされた。
初仕事は一昨年秋、バリ島での撮影だった。着いたホテルで、スタイリストがベッドにいろんな衣装を並べた。ビキニの水着に着替えると、カメラマンから言われた。「胸おっきいね」。恥ずかしくて泣きたくなった。
水着姿がネットに流れ、DVDは1万5千枚以上売れた。自分の思いとは別の場所での大騒ぎに戸惑い、傷ついた。
なりたいのはアキバのアイドルじゃなく、「田舎のおばあちゃんまで、だれでも知っている女優さん」。仲間由紀恵にあこがれる。
顔を知ってもらうためにはグラビアの仕事も必要なんだと言い聞かせて、「ステージやカメラの前では、キャラを変える」。クールで気が強い紗綾のままならファンの人たちに失礼だと思うから。
「プロ意識を持てって、社長にいつも言われてます」
147センチ。身長はもっとほしいけど、足が太くなるのはいや。お菓子はほとんど食べない。学校の給食を半分だけで済ませることもある。洗顔フォームやローションはエステサロン用のものを使う。
でも、いますぐ大活躍したいとは思わない。いろんな仕事を経験しながら、「20歳ぐらいで女優として有名になれればいい」。
昨年秋、同級生の女の子に突然、「あんた、グラビアでやってくの?」と聞かれた。「違う」と言いたかったけど、知らんぷりして家路を急いだ。
学校では仕事のことは話さない。「普段通りの、フツーの小学生でいる」。広まってみんなにいろいろ聞かれたら面倒くさい。
朝4時起きで始発便に乗り、羽田発の最終便でとんぼ返りする週末。上昇する旅客機のシートに小さな体を沈めては、つかの間の眠りに落ちていく。
一番気が休まるのは、自宅で寝そべってゲームをしたり、弟と遊んだりして過ごすときだ。
4月からは中学生。仕事と学校の両立は今よりずっと大変になる。所属事務所から、東京の中学に来ないかと勧められた。その方が目標に近づけるとは思う。
だけど、東京は空気が悪いし、人が多すぎて落ち着かない。何より、「いまはまだ、家族と離れて暮らすのは寂しい」。
村上龍氏のベストセラー「13歳のハローワーク」は、全国約8千の小中学校などが教材に使う。昨年立ち上がった同書公式サイトの代田昭久編集長によると、読者の年代別では10代が最多の38%を占める。その中でも12歳以下の小学生が一番多い。「将来の仕事選びに早くから敏感な子どもたちが増えている」
名古屋大付属中1年の上田健人君は将来の夢を、「トヨタのチーフエンジニア」と決めている。
幼い頃から車が好きだった。でも、F1やスポーツカーには興味がない。ひかれるのは大衆車。地元のトヨタ、なかでもカローラがお気に入りだ。「だって、2001年まで33年連続で国内販売台数1位だったんですよ」
準備は、12歳の時から。トヨタの新卒採用者は例年、名大が多い。少しでも近づくため、受験をして付属中に入った。
昨年11月、学校で好きな職業人にインタビューする授業があった。上田君は、迷わずトヨタの吉田健常務に会いに行った。00年にカローラがフルモデルチェンジした当時、チーフエンジニアだった人だ。自分もそうなるために何をすればいいのか。1時間半、常務を質問攻めにした。
翌日、友達に「トヨタとのパイプを太くしたな」と言われた。就職活動のように映ったみたいだ。
夢から逆算すると、次のハードルは5年後の名大受験。土日も通信教育を受けるなど勉強漬けの日々だ。本音を言うと、もう少しゆっくり生きたい。
「でも、いま遊んで行きたい会社に行けないよりは、早めに手を打った方がいい」
http://www.asahi.com/paper/national.html