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(06年を読む 世界と日本経済:2)ドル安で赤字調整
米成長率と失業率の推移
取材に応じるフェルドスタイン氏=米ボストン郊外で、クレイ・カムーシュ氏写す
◆ハーバード大教授 マーチン・フェルドスタイン氏
●米国 危険あるが成長の鍵
――米経済の堅調ぶりは今年も続くのでしょうか。
「リスクはあるが、成長率は3・0〜3・5%となる可能性が高い。米企業はIT(情報技術)革命の恩恵を最も受けていて、生産性向上が経済成長に貢献している。何より、米国では他国より社内の配置転換も合法的な解雇もしやすい。それが生産性の向上をもたらしている。解雇は必ずしも悲劇ではない」
――原油高も大きくは響きませんでした。
「原油高と低金利という直接関係ないものが同時期に重なったおかげで経済は傷つかなかった。燃料費上昇で家計は圧迫されたものの、低金利によって安い住宅ローンへの借り換えができ、支出に回せる資金が生み出せたからだ」
――とはいえ、住宅ブームには、陰りがみえていますね。
「日本の80年代のバブル期とはまったく違い、地価自体が大きく上がったわけではない。ブームが若干冷めることはあるだろうが、米経済を弱めるまでには至らない」
●GM影響なし
――市場では、ゼネラル・モーターズ(GM)の経営危機がもっぱらの話題です。米国経済に与える影響は。
「GMやフォードの問題の根幹は商品力ではなく、年金、医療費などの待遇を定めた労使協定で、業界特有の問題だ。交渉で人件費削減を打ち出しているが、まだ不十分だ」
「他業界は、自動車業界と違って労組の組織率が低く、競争力のある低賃金が維持できている。だからこそ、米国は年に9千億ドル分の輸出をしている。政府がGMや労組に手助けして、他業界より高い賃金を維持しますとは言えない」
●円安は不思議
――ワゴナーGM会長は、日本企業に有利だとして、円安ドル高を非難しています。
「日本政府は04年春に明確な為替介入をやめている。日本が貿易黒字を抱えながら、なぜここまで円が弱くなるのかは不思議だ。日本では投資会社などの勧めで個人が高い金利のドルに短期投資をしていると聞く。だが、この投資は(為替相場の変動で)不幸な終わり方をすると思う」
――今年は、円高ドル安になるということですか。
「そうなるだろう。為替相場を動かす基礎的な条件は経常収支で、米国は国内総生産(GDP)の6・5%にのぼる赤字を抱える。ドル安が赤字の唯一の調整方法だ。どの程度の下落が妥当かはわからないが、円とドルの3%程度の金利差よりは大きい。80年代にはもっと小幅の貿易赤字でドルは4割下落した」
――でも、ドル安となれば、米国への資金流入が細りませんか。
「米国債を買っている日本、中国などの外国政府が(ドル安に伴って)購入をやめたときに、どう経済運営をするかだ。急激なインフレとドル下落の恐れがあり、これは今年の明らかなリスクのひとつだ。対応は市場の反応次第で、為替相場や長期金利の動きと政策の複雑な相互作用になる」
――難しい時期の米連邦準備制度理事会(FRB)議長の交代は、波乱要因になりますか。
「人が代わると、『次の危機に対応できるだろうか』と不透明感が生じるのは避けられない。グリーンスパン氏の就任直後だって株価は大きく下落した。実績で信任を得てきたのだ」
――日本については。
「ようやく日本経済は離陸段階に入った。プラスのインフレ率も持続するようになるだろう。だが、経済成長がより確固としたものとなるまで、増税は好ましくない。金融政策は引き締めて問題があれば再び緩和でき、財政政策より柔軟だ」(ニューヨーク=渡辺知二)
◆マーチン・フェルドスタイン氏 66歳。米ハーバード大卒。82〜84年にレーガン政権で大統領経済諮問委員長を務めた。現在は全米経済研究所(NBER)所長を兼務。連邦準備制度理事会(FRB)次期議長の有力候補の一人だった。
http://www.asahi.com/paper/business.html