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(06年を読む 世界と日本経済:1)中国 市場化の質問う時
低迷を続けた日本が、昨年は復活の兆しをみせるなど世界経済は久々に活況を呈しているようにみえる。06年はどこに向かうのか。識者らに聞く。第1回は「財経」編集長の胡舒立氏。
●政府の関与まだ多い
――高度成長を続ける中国の経済規模は、05年のGDP(国内総生産)が2兆ドルを超え、フランスを抜いて世界5位になるとみられます。昇竜の勢いは、06年も続くのでしょうか。
「数字はともかく、比較的安定した高成長が続くだろう。経済の構造上の問題は認識しているが、まだ臨界点には達していない。改革開放以来、積み重ねてきた経済の基盤と大きな市場の潜在力があるからだ」
――とはいえ、成長に伴う負の側面も聞こえてきます。最大の問題は何でしょうか。
「政府の市場への関与がまだ多いことだ。一般的な商品については市場メカニズムで価格が形成されるようになったが、資本、土地、労働力といった生産の要素(基礎部分)については市場機能が十分ではない」
――具体的には。
「まず、土地だ。とりわけ、農地から建設用地に変えようとする場合、政府は自らが決めた価格で農地を買い取り、不動産開発会社に売る。中間利益は政府のもので、農民は価格交渉できない。売買価格が適正かどうかは誰にも分からないし、農民は適切な利益を得られない。土地市場が形成されていないことが、農民が都市化の過程で豊かさを享受できない一因でもある」
●日本との類似
――金融でも問題がありますね。
「政府と金融機関の距離が近すぎて、地方で経済効率を無視した投資が実施される場合がある。また政府が株式市場に様々な手段でテコ入れしようとし、健全な市場の形成を妨げている」
――官がさまざまな規制を通して市場に「介入」した昔の日本と似ていますね。
「その通り。30年前の日本に酷似している。『大きな政府』が引き起こす弊害が問題だ」
――中国政府が外資導入による銀行改革に着手したのは、自ら是正に乗り出したということでしょうか。
「そう思う。これまで政府の一部門として運営されてきた中国の銀行が、外資導入と上場で株主の利益を最上位においた経営に転換できるかどうか。この改革は、試金石といえるだろう。不良債権の再発防止も、そこにかかっている」
――06年は重要な年となりそうですね。
「経済の市場化が一定程度までたどりついた今、質が問われるようになった。透明度が高く、法律に基づいた公正で効率の良い市場経済に進めるかどうか。今年は十字路に立っていると思う」
――「市場経済」だけで、貧富の格差の是正など社会問題に対応できるのでしょうか。
「出稼ぎ労働者など弱者に社会保障を提供するとともに、より少ない資源の投入で生産を促すような成長方式へ転換しようとしている。これは、良い市場経済の道といっていいのではないか。この実現には、経済規模の成長で地方官僚の業績を測るやり方を放棄することが重要だと思う」
●人民元「解凍」
――人民元は、05年7月の改革で市場の需給に基づいた値決めに踏み出しました。本格的な国際通貨になりますか。
「我々も改革を報じる雑誌の見出しをずいぶんと議論した。最初は人民元の『縄をほどく』としようとしたが、それではすぐに大きく動き出す印象を与えるので、『解凍』とした。固まっていた氷がじわじわと解け始めたような段階で、再び凍り付いたようにドルに固定されたりはしないが、経済の実情に応じた速度をとるだろう」
「長い間、固定相場を続けてきたので、金融機関や企業が変動に慣れるためのトレーニングの時間が必要。市場経済化を進めるなかで、通貨の柔軟性は自分たちの経済に有利に働くことにだんだんと気づくはずだ」
――05年春の反日デモの時には「日本製品ボイコット」の声が全国に響き渡りました。日中経済関係をどうみますか。
「希望と現実は同一ではない。地域経済の両軸として、補完性を生かした両国の経済協力は中国や地域の発展に役立つ。一方で、両国間にはそれを阻害する多くの政治的問題が横たわる。政治関係が改善するまでは、希望あふれる状況は期待できないが、政治と同様には悪くなってしまうこともないだろう」(北京=吉岡桂子)
◇ ◇
◆胡舒立氏(フー・シューリー) 中国人民大新聞学部卒、米スタンフォード大で発展経済学を学ぶ。82年工人日報入社以来、新聞や雑誌で記者を務め、98年の「財経」創刊を指揮し、編集長に。事実に迫る報道姿勢に定評がある。
http://www.asahi.com/paper/business.html