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近づく量的緩和解除
政府は慎重 日銀と「対話」不可欠
消費者物価指数の前年同月比伸び率がプラスに転じたことで、日銀の金融政策は量的緩和解除に向けた大きな転換点に近づいた。日銀は解除の条件の一つに、「消費者物価指数の前年同月比伸び率が安定的にゼロ%以上になる」ことを挙げているからだ。ただ、政府内にはデフレへの後戻り懸念から解除に慎重な姿勢も根強い。双方の意見が一致しないまま金融政策が変更されれば、経済の混乱も予想され、日銀と政府の「対話」の重要度は今後、一段と重みを増すことになる。(小雲規生、渡辺浩生)
日銀が量的緩和政策を採用したのは平成十三年三月。十五年十月には消費者物価指数の前年同月比伸び率が基調としてゼロ%以上になることなど、三つの条件が達成されるまで量的緩和政策を継続すると示した。
今回、消費者物価指数の伸び率がプラスになったことは、日銀にとっては量的緩和政策解除に近づいたという意味を持つ。福井俊彦・日銀総裁は今月二十二日の講演で、「量的緩和政策という異例の政策運営枠組みは、来年度にかけて変更を迎える可能性が高まっている」と強調した。
≪埋まらぬ溝≫
しかし、政府はこうした日銀の姿勢に懸念を隠さない。竹中平蔵総務・郵政民営化担当相は二十七日の会見で「緩やかなデフレは続いている」と発言。「中央銀行は明確な政策目標を示すべきだ」として、政府と中央銀行が協調して目指すべき物価上昇率の範囲を公表するインフレターゲット政策の導入を示唆した。
日銀内では「市場に示した約束を守らなければ、日銀への信頼が落ちて市場を制御できなくなる」として、条件が満たされれば量的緩和政策を解除するという意向が極めて強く、その一方で、インフレターゲットについては、「機動的な金融政策運営のためには、具体的な政策目標を示すことはふさわしくない」との意見が根強い。
政府内には「(政府と日銀が)静かに意見交換しながら物事を進めていくことが大事」(与謝野馨金融・経済財政担当相)という声もあるが、両者の間の溝は埋まらないままだ。
≪冷や水にも≫
過去、金融政策をめぐる日銀と政府の意見の不一致は幾度もあった。政府の圧力と日銀の独走が政策転換のタイミングを誤り、結果的に国民経済に厳しい負担を強いてきた歴史もある。
プラザ合意後の急激な円高を受け、日銀が昭和六十一年一月から一年で五回も公定歩合を引き下げた背景には、米国による内需拡大要求と財政再建を重視する旧大蔵省の圧力があった。日銀は利上げに遅れ、不動産や株価の急騰という資産インフレ、いわゆるバブルを助長した。
こうした反省から、平成十年に日銀の独立性を認める改正日銀法が施行され、十二年八月、当時の速水優総裁はデフレ進行を懸念する政府の大反対を押し切ってゼロ金利の解除を断行したが、直後の米国ITバブル崩壊で日本の景気は失速。日銀と政府の足並みの乱れによる経済運営の失敗として印象付けられた。
福井総裁は十五年三月の就任後、政府の構造改革路線と歩調を合わせて量的緩和を拡大、景気回復を支えてきた。しかし、政府と日銀の足並みの乱れは回復基調に水を差しかねず、双方の政策運営にかかわる「対話」が不可欠になっている。
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【用語解説】量的緩和
日銀が平成13年3月に導入した異例の金融政策。金利水準ではなく、金融機関が自由に使える手元資金の量である日銀当座預金の残高を金融調整の目標にする。短期金利がゼロとなっても、さらに資金を供給し一層の金融緩和が可能になる。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/28pol002.htm