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遺伝子組み換えは種子支配の道具
http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column/050512.htm
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モンサントが最大の種苗企業に
多国籍バイオ企業は各社とも戦略的に種苗企業の買収を続けています。バイオ巨人企業のモンサント社(米国)は穀物メジャーのカーギルの種子部門買収をはじめ、積極的に種子企業の買収に取り組んできました。そして05年1月に野菜・果物の種苗最大手のセミニス社を買収しました。
セミニスは3500以上の種子を販売し、特にトマトやキュウリで大きなシェアを持つ会社です。モンサント社はこの買収で種苗分野でも最大手になりました。
バイオ企業がそれまで目立たない分野だった種子事業の買収に力をいれるようになったのは、遺伝子組み換え技術によって生物に特許をかけることができるようになったことと関係があります。特許種子からの利益のみならず、種子に関連する農業資材(農薬、肥料、機械など)も企業の指導に基づき販売されます。モンサント社は遺伝子組み換えの特許種子を盾に、自家採取はもとより花粉交雑でも特許侵害として農家から賠償金を取り立てビジネスにしています。
いまや種子は農家の自給的種子から商品としての種子に取って代わられていっています。われわれの食べものの源である種子が商品化され、ごく一握りの企業に牛耳られることに危機感を抱かざるを得ません。
画一化に向かう種子
人類は長い時間をかけて野生種を順化して多用な種を食用として獲得してきました。
食用に供してきたものは12000種あるといわれます。しかしその後自給的作物から商業栽培に変わるなかで利用される種の数は次第に少なくなり、大規模に栽培されたのは300種にすぎません。さらに現在ではわずか20種(!)によって世界の食糧需要の90%が賄われているといいます(鵜飼保雄東京大学農学生命科学研究科教授)。
それらの重要な作物の多くはイネ科と豆科のたった二つの科にのみ属しているのです。食用作物はいまや極端な画一化へ向かっているのです。
新品種を作るのに必要な遺伝子資源はそれぞれの栽培地に適応した在来品種によるものですが、いまやそれが失われつつあります。作物の商品化による農業の機械化、大規模化が品種の画一化に向かわせたのです。食糧増産のための農業近代化の道が皮肉なことにいまや品種の激減を招き、人類の生存を脅かしつつあることにいま目を向ける必要があります。
ハイブリッド
1930年代トウモロコシで実用化されたのがハイブリッド技術です。掛け合わせた両系統の優性を引き出す技術ですが、その効果は一代雑種に限られるため、農家は毎年種子を購入しなければなりません。
種子はそれまで自給的(公的機関からの配布や自家採種)だったのが、ハイブリッド技術によって購入生産資材へと転換させることに成功したのです。トウモロコシはいまや95%以上がハイブリッドです。ハイブリッド品種の普及によって大手種苗企業が成長してきたといえます。日本を含む先進諸国では、いまでは種子は毎年買う購入資材となっています。
企業にとってハイブリッド化が困難なコメ、ダイズ、ムギは遺伝子組み換え技術の特許で押さえたいというのが最終目的でしょう。イネゲノムの解析競争はそれを表しています。
緑の革命
1960年代、欧米の主導でアジアで行なわれた緑の革命は、それまでの自給的作物栽培から輸出用の商品作物栽培へ移行させ、大規模化、機械化、灌漑施設農業を持ち込むことになったのです。緑の革命で多収量品種に収斂した作付けによってそれまであった在来品種300種が消えたといわれています。新しい多収量品種の投入とともに農薬・肥料・農業機械等の生産資材をセットで売り込むことが可能となり、アグリビジネスが繁栄することになりました。遺伝子組み換え種子も緑の革命で利益を得てきた企業の発想に通じるものです。
種子開発者権利保護強化の流れ
これまで大概の国々では大事な主食用作物であるトウモロコシやコムギ、バレイショ、コメなどは公的機関による育種が中心でした。しかし1961年に締結された「植物新品種保護に関する国際条約(UPOV)」によって育種者の権利を保護する制度が確立し、民間企業の品種開発投資が活発になりました。
日本ではコメ・ムギ、マメなどの基幹作物は民間の参入を規制し、公的機関で種子開発を行なってきました。しかし、86年の主要農作物種子法改正により民間企業の参入が認められることになりました。
これまで公的機関に限定してコメの育種などを守ってきたのは国民の命に関わる作物は商品化すべきものではないというまっとうな考えがあったからだと思います。なんでもかんでも規制緩和、企業化の流れですが、守るべきものを守る政府でなければ未来に対しても責任を果たせません。
民間企業が開発したコメが商品として知的所有権や特許で強力にガードしたものになっていく方向は農民から種子を取り上げ、お仕着せの種だけとなり、在来品種の多様な豊かさや存続を損なっていくことになります。
生物特許の考え方は、種のみならず、その遺伝子、細胞にまで特許をかけるという方向です。このことは今後品種改良を行なう場合に必要な遺伝子資源に制約が加わるということでもあるのです。
種は全人類の共有資源
こうした情勢の一方、多品目少量生産で自給をめざし、その延長線上で消費者との提携を築くという有機農業生産者たちがいます。その基本は地産地消、地域循環です。その土地の環境に適応した在来品種の種子を育て、自家採種し農家同士で交換し、ジーンバンク(種子銀行)を作って保存したりと、農家の手に種子を取り戻す運動が有機生産者の間で広がりをみせています。
遺伝子組み換え技術の問題性は、つまるところ種子や生物に知的所有権や生物特許を主張し、私物化するということにあると私は思います。種子の支配は食の支配です。つまり私たちのいのちを左右する力を企業が握るということ。そういう未来を誰が望むでしょうか。
環境の変化に対応して人類が必要とする品種を選抜してきた種取り。種は企業ではなく、農民の手に残すべきです。種は全人類共有の財産なのですから。
種苗交換については日本有機農業研究会種苗部会を参照ください。
(2005/05/12)
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