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インドネシア研究者 ハエさえも鳥インフルエンザを運ぶ ウィルスを最低25世代継承
農業情報研究所(WAPIC)
07.1.25
インドネシアでヒトのH5N1鳥インフルエンザ感染が相次いでいるが、ウィルスの存続と拡散を防ぐためと称して、ジャカルタ・シティー当局が家庭の庭先で飼われる大量の鶏・アヒル・ウズラなどの殺戮を始めた(City begins mass culling ,The Jakarta Post,1.22)。しかし、これは住民の反発を買うだけで、ウィルス封じ込めの目的は決して達成できないだろう。
国連食糧農業機関(FAO)も、庭先養禽を禁止すれば農民は経済的理由で鳥を隠し、ワクチン接種や鳥の移動統制にも参加しなくなるだけだと警告している(New bird flu outbreaks require strong vigilance,1.23)。それだけではない。先日も感染した猫が市中をうろついていると伝えたように、今や鳥だけでなく、あらゆる動物が鳥インフルエンザ・ウィルスの運び屋になっている(インドネシア大都市の100匹以上の迷い猫がH5N1鳥インフルエンザに感染,07.1.16)。
ジャカルタ・ポスト紙によると、ガジャマダ大学の獣医学者・Wasito教授は、政府が鳥ばかりを問題にするために、大衆が他の動物もウィルスを運ぶという事実に気づかない結果になっていると警告している。教授は、猫、犬、そしてハエさえもウィルスを運ぶ、「例えば、我々がここで行っている一つの研究は、ハエが鳥インフルエンザ・ウィルスを拡散させる可能性を確認した」と言う(Scientist warns of bird flu in flies,The Jakarta Post,1.24)。
国の様々な地域から集めたハエについての研究で、鳥インフルエンザ・ウィルスがハエの消化・呼吸管だけでなく、卵も含むその他の組織にも発見された。この鳥インフルエンザが低病原性か高病原性かはわからないが、低病原性ウィルスは通常は消化・呼吸管を攻撃するだけという。さらにウィルスは鳥インフルエンザ勃発中の地域のハエだけではなく、かつて勃発した地域のハエにも発見された。発見されなかったのは、かつて鳥インフルエンザ勃発がまったくなかった地域のハエだけだった。研究は勃発2年後に行ったものであるから、これは、少なくともこの間、ハエの世代にして25世代の間、ウィルスが受け継がれていることを意味するという。
彼は、”サイレント”の鳥インフルエンザが発見されているとも警告する。研究は、このタイプのウィルスがH5N1陽性の鳥に抗体を生産させないことを発見した。鳥は正常で、健康に見え、ウィルスに感染していることを示すいかなる症候も見せない。まったく健康に見えるから養鶏農民はワクチンを接種、それで鳥を死に追い込んでしまうこともある。従って、彼は大量のワクチン接種もやめるべきことも示唆する。
これでは、どうしたらH5N1ウィルスを根絶できるのか、鳥やヒトへの感染を防げるのか、我々は途方に暮れるしかないように見える。わが国で今年勃発したH5N1鳥インフルエンザの運び屋としては渡り鳥が有力候補に浮上したようだが、野鳥に注目しているだけでは鶏の感染を防ぎきれないかもしれないのはインドネシアと同様ではないだろうか。世界中を移動するだろうウィルスに感染したハエの卵の侵入など、野鳥との接触を回避するためにいかに鶏舎を密閉したとしても防げるはずがない。放し飼いや開放系養鶏の禁止など、そもそも科学的根拠もない的外れな感染防止策なのかもしれない。
教授は、コミュニティーを健康的全な生活方法、適正な農業方法、動物を近隣で飼う正しい方法に導くプログラムに触れ、”良好なバイオセキュリティーの社会化(Socializing)が鳥インフルエンザ勃発に対処するずっと有効な方法だ”と言う。庭先の鳥をすべて処分するなど、まさにその正反対だろう。今やウィルスへの暴露は避けようがない。そうなっても病気にならないか、簡単には死なない丈夫な鶏を育てる、それを可能にするような健全な社会と農業を作る、それが鳥インフルエンザ克服の最短の道ということであろう。
関連ニュース
Debora Mackenzie,Deadly H5N1 may be brewing in cats,NewScientrist..com,1.24
http://www.newscientist.com/article/mg19325883.800-deadly-h5n1-may-be-brewing-in-cats.html
http://journeytoforever.org/jp/foodfirst/report/hunger/12myths.html
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