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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/06041501.htm
06.4.15
米国ウィスコンシン-マディソン大学の研究者が、鹿の慢性消耗病(CWD)を引き起こすと考えられている異常プリオン蛋白質が感染性を失うことなく土壌中の一定の金属に固着することを発見した。
CWDは狂牛病、羊のスクレイピー、人間のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などと同類の伝達性海綿状脳症(TSE)の一種で、60年代に米国のコロラドとワイオミングで発見され、現在は米国14州とカナダ2州に広がっている。それは鹿だけでなく、他種の動物・ムース(ヘラジカ)にも広がっている。しかし、それがどのようにして鹿の間で、あるいは他種の動物にまで伝達するのかは分かっていない。
感染動物の組織を食べることで感染が広がるとされる狂牛病と異なり、恐らくは、感染動物の死体や排泄物から放出される異常プリオン蛋白質が環境中に残存、これを通じて感染が広がるものと考えられてきた。しかし、確証はない。
他の可能性が否定されるわけではないが、新たな発見は、一定のミネラルを含む土壌が環境に放出される異常プリオン蛋白質の”貯蔵所”となっており、動物ー鹿だけでなく、牛、羊なども含めてーが必要とするミネラルを摂るために食べるこのような土壌を通して伝達する可能性を示唆する。研究者は、これらの動物は毎日数百グラムの土を消費することができるという。
Christopher Johnson et al,Prions Adhere to Soil Minerals and Remain Infectious,PLoS Pathogens,April 2006,2-4
http://www.plos.org/press/plpa-02-04-pedersen.pdf
研究者は様々な実験手続を使い、土壌中に普通に見られる三つのミネラルー石英、カオリナイト( 高陵石)、モンモリロン石(膨張粘土)ーに対する異常プリオン蛋白質の親和性を測定した。その結果、感染性異常プリオン蛋白質が土壌中に見られる粘土タイプのモンモリロン石に固着することが分かった。異常プリオン蛋白質を粘土から除去することが極めて困難であることも分かった。粘土に固着した異常プリオン蛋白質を洗浄剤液でボイルしたときにだけ、粘土から離れたという。
さらに、異常プリオン蛋白質が土壌中で感染性を保つかどうかを調べるために、異常プリオン蛋白質が固着した粘土を実験動物に注入したところ、動物はTSEの症状を示し始めた。この結果は、粘土ミネラルとの相互作用は異常プリオン蛋白質の感染性をほとんど減らさないことを示すという。
研究者は、この実験は感染性が残ることを示したが、もっと自然の中での当を得た暴露ルートを検討する必要がある、現在、経口感染性を調べる実験が進行中だ、また土壌中で感染性がどれほどの間残るかを調べることも計画していると言う。
この発見で実際のCWD伝達ルートが確認されたわけではないが、土壌を通しての鹿の間での伝達があり得ることは確認された。とすれば、他種の動物へのTSE伝達ルートでもあり得ることになる。このルートでの狂牛病伝播もあるかもしれない。感染した鹿などが広大な養牛牧場で死んだまま放置されたり、排泄をする可能性は十分にある。農場で埋められることが多い死亡牛や病気の牛が感染していることもあり得る。この場合にも、感染性を失っていない異常プリオン蛋白質を含む土壌を牛が摂取する恐れがある。最も、CWDが牛に伝達するという確証はないが。また肉骨粉の完全排除後に生まれた牛の狂牛病の英国での調査は牛が感染牛の排泄物による土壌汚染で感染した可能性も疑ったが、その可能性は小さいとされてもいる(英国:再燃するBSEの脅威―肉骨粉禁止後生まれの感染が急増,03.11.25http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/03112501.htm)。
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