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鳥インフルエンザ 命『処分場』 500枚の記録
違法ワクチン使用疑惑、養鶏場への公的支援、行政による検査の不手際−。昨年六月から茨城県を揺るがす鳥インフルエンザ問題は、行政や業者の対応に注目が集まりがちだ。その一方、末端の現場では約二百五十万羽もの鶏が殺処分されてきた。水戸市の写真家小貫則夫さん(59)は、報道機関を“シャットアウト”した養鶏場に入り、殺処分の実態を取材した。置き去りにされた現場でレンズがとらえたのは、戦場での大量虐殺を思わせる光景だった。
ゴーグル、マスク、防護服の完全装備。夏の取材は汗が噴き出す。同じような白い防護服の作業員が周囲に並ぶ。マスク越しではっきり分からないが、緊張は伝わってくる。打ち合わせが終わると、大きめのプラスチックのバケツくらいの容器の中に数羽の鶏を押し込み、二酸化炭素を噴射して窒息死させる“作業”が始まる。
養鶏場の独特のにおいを感じながら、カメラマンとしての感性の赴くままにシャッターを切る。聞こえるのは、鶏の甲高い鳴き声、作業員が容器を運ぶ音、その中に鶏を入れる音、そしてシャッター音。作業員の声は、ほとんど聞こえない。
八月から十二月まで四回にわたる取材で撮影した写真は、計約五百コマ。殺処分する前に徐々に餌を減らされた鶏が、険しい目をしてファインダーを見つめている。脚をつかんできた作業員の手に食いつく場面もある。容器のふたを開けた瞬間、二酸化炭素の充満した中から飛び出し、間もなく息絶えた鶏を写したコマもあった。
「人間のエゴによる虐殺です」。現場の光景は、戦時中の大量虐殺とダブって見えた。茨城を代表する事件で話題性もあるということで撮影を決行した現場では、多くの命が人間の都合で失われていた。鶏の目は、人間の目のように、それぞれ表情を持っていた。
撮影を続けていると、作業員が「もう、いいだろう!」と声を荒らげる場面もあった。鶏を殺す罪悪感からか、いらだちがたまっているようだった。その一方で、作業員らのために県が用意した昼食の冷めた弁当に、鶏肉の卵とじが入っていた日もあった。意図的なのか、それとも無意識だったのか−。県庁の建物の中で仕事をする職員との距離を感じたという。
今回、一連の鳥インフルエンザ問題が発覚した中で、感染によって死亡した鶏は確認されていない。それでも、国は感染拡大を避けるため、感染歴があるとみられる鳥も殺処分する方針をとっている。同県内では既に三十五以上の養鶏場で約二百五十万羽が処分された。
県はこうした状況を随時公表しているが、その発表のほとんどは、A4の紙一枚に記されているだけ。第三者の目が届かない末端の現場でどのような事態が起きているのか、発表文からは推し量ることさえできない。
行政側は、感染拡大を懸念して報道機関による施設内での撮影を実質的に禁止している。今回、小貫さんが現場に入ることができたのは、これまでに国際交流の企画など、県の事業に協力し、県とのパイプを築いてきた成果だ。関係者を通じて撮影を強く希望し、実現にこぎ着けた。
「現場に行き、その様子を収める。それは写真家の使命ではないかと感じた」
取材で小貫さんが受けた衝撃は、県や国など行政側の対応についての報道に終始した報道機関にも向かう。報道は、役目を果たしているのか? “冷めた鶏肉弁当を出す側”と同化していないか?
写真に込められたもう一つの主題のように感じられる。
文・布施谷航
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20060218/mng_____thatu___000.shtml
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