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米産輸入牛 日本側『水際の壁』は?
「万全の安全体制」のはずじゃなかったか。BSE(牛海綿状脳症)対応で日米が厳しい検査を行う約束を交わし昨年12月解禁された米国産牛肉の輸入。成田空港で発見された3つもの危険部位は関係者に衝撃を与え、再び全面禁止措置が取られた。米国の不手際が取りざたされているが、おひざ元、日本の“安全の壁”はどうなっている?
”全箱開封は無理”
<成田は係官10人”24時間”体制><鳥インフルエンザも悩みの種>
「まったく青天のへきれきだった」
今回の脊柱(せきちゅう)を含む米国産牛肉の輸入元である老舗外資系商社の幹部は二十五日、こう困惑げに語った。
同社は輸入停止前には一度も米国産牛肉を輸入したことがなく、今回初めて試験的に輸入したという。幹部は「後にも先にもこの一回。それで危険部位が発見された。農林水産省に報告し当方に落ち度はなかったとされた」と強調する。
脊柱を発見したのは、成田空港内にある農水省動物検疫所成田支所。担当者は「全体のスタッフは約七十人いるが、外国からの肉、骨などの輸入畜産物の検疫担当は十人。この人数で事実上の二十四時間空港としてカーゴ(貨物機)で次から次に入る荷物をさばかねばならない」と説明する。
一般的な輸入肉の検疫方法は「アトランダムに抜き取り検査しているわけではない。例えばハム、ロースなどのグループから一カートンを抜く。詳細は防犯上、明らかにできない」。
日本側の検疫体制については「今回は通常の検査システムで引っかかったが、体制が現場で十分かどうかと聞かれても、足りてるとも足りてないとも言い難い」と複雑な胸中を明かす。
動物検疫所の「畜産物の輸入検査要領」によれば、輸入されてくる物品の0・5%相当量を無作為抽出して検査することになっている。この数字の根拠は「これまでの長い畜産物検査の蓄積からくる経験則」(農水省動物衛生課)という。
ただ、農水省は、輸入再開にあたり、米国産牛肉だけは、この基準にこだわらない検査指針を作った。具体的には肉の部位ごとに必ず一つの箱を開けて検査するという仕組みだ。今回発見された輸入牛肉にしても、四十一箱が十三部位に分かれていたため十三箱開ける予定だった。この場合検査率は31%に上る。
■コンテナ一つに多い場合は800箱
動物検疫所横浜本所(横浜市)の担当者は「禁輸措置以前のように一つの部位を大量輸入する業者は少なく、さまざまな部位を少量輸入するケースが多い。どの部位が日本で売れるか試しながら輸入している感じだ。確実に0・5%よりずっと高い率で開けている」と分析する。
動物検疫所をパスした米国産牛は次に厚生労働省の各検疫所で検査を受ける。ここの場合、検査率は数量によって異なる。五十箱以下ならば十二箱、五十一以上百五十以下ならば三十二箱といった具合だ。
とはいえ、水際の検疫が抽出検査である以上、危険部位を含む牛肉が検査をすり抜けている可能性はゼロではない。100%の安全を追求するとなると、すべての米国産牛を検査する「全箱検査」しかない。
農水省の石原葵(まもる)事務次官は記者会見で「全箱検査は物理的に無理」と答えながら、「今の検査のあり方をより改善する道がないのか検討しなければならない」との意向を示した。
前出の動物衛生課の担当者は「例えば船に数百個のコンテナが積載され、一つには多い場合約八百個の箱が入る。全部開けて調べる場所などない。冷静に考えれば全箱検査はありえない」とした上でこう訴える。
「米国産牛肉だけで仕事をしているわけではなく、鳥インフルエンザ感染防止のための検疫など重要な業務がたくさんある。すでにてんてこまいの状況でネコの手も借りたいのに…」
”透ける日本軽視”
<米側平謝り…本音は「過剰反応」?>
米国側は今回の特定危険部位混入問題について、政府、業界団体とも平謝りの姿勢だ。
米農務省は二十四日、ワシントンで全米約四十の食肉業者を集め再発防止策を話し合った。業界側は「業界全体の重大な失敗で言い訳できない」と全面的に謝罪。ジョハンズ農務長官も混入を見逃した業者や検査官が「輸出条件に習熟する時間があまりなかった」と指摘。「ミスを繰り返してはならない」と輸出条件の順守を重ねて要請した。
米国の牛肉生産や輸出業者でつくる米国食肉輸出連合会の東京事務所は「二年間、業界は輸出再開に向け努力してきた。日本の輸入条件の認識がなかったという初歩的なミスは異例のこと。考えてもみなかった」と今回の特殊性を強調する。
米国政府は再発防止のため、検査官チームの日本派遣や、米国内施設の抜き打ち検査などの緊急措置を発表。早期の牛肉輸出再開に向けて躍起になっている。
一方で「日本側が過剰反応している」という本音も見え隠れする。この問題の日米事務レベル協議のために来日したペン米農務次官は二十四日の記者会見で「信頼回復へ日本の主婦にメッセージを」と問われ「車を運転してスーパーに行き事故に遭う確率の方が、牛肉を食べて病気にかかるよりも高い」と発言した。
今回混入していた脊柱は、肉眼ですぐ分かるものだった。米国側の検査がずさんだったのは「米国ではみな食べているから大丈夫という意識が根底にあったからだ」と指摘するのは、米国の牛肉生産に詳しい宮崎昭・放送大学京都学習センター所長(畜産学)だ。
宮崎氏は「米国の食肉処理場の衛生レベルはかなり高い。欧州連合(EU)から同様の輸出条件を求められたら、こんなミスはしないだろう。日本やアジアの市場を軽く見ているのではないか。米国の業者から『小さな会社の小さなミスだ』という発言が出ている限り改善は望めない。米国側に日本の消費者の意向を十分に理解させる必要がある」と厳しい見方を示す。
■「米の全施設に検査官派遣を」
その上で、日本政府には米国側の意識改革を促す努力を求める。「農水省、厚労省は、対日輸出を認められた米国の約四十施設すべてに検査官を派遣し指導すべきだ。そうしなければ、末端にまで輸出条件を理解させられない」
青山学院大の福岡伸一教授(分子生物学)は「政府が食品安全委員会に再諮問し、システム全体を見直さなければ、同様のケースが出てくるのでは」と危ぐする。「危険部位をすべて取り除くことは現実的に難しい。日本では事実上、全頭検査を続けているのだから、米国にも同様の措置を求めるのが筋」と訴える。
日本の検疫体制についても、こう指摘する。「検査員を増やすなどの場当たり的な対策では改善は難しい。米国が全頭検査など抜本対策を実施しないのなら、日本は米国産牛肉の全箱を開封して検査すべきだ」
輸入再開から一カ月余りで米国産牛肉が届かなくなり再び大きな打撃を受けている吉野家の担当者はこう嘆く。「さあ行こう、と一歩踏み出した瞬間に待ったがかかりがっかり。実際に何が起き、何が問題なのかをはっきりさせてほしい」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060126/mng_____tokuho__000.shtml
(新聞から一部引用追加)
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