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私は以下の文章の内容に昭和という時代の本質があると見た。↓
インターナショナルMELT
第一研究会第4回 「アメリカ労働党とニューディール」
1999.10.文責:すなが けんぞう
【レジュメ】
1938年。恐慌の中で激化した産業別労働組合運動(CIO)の運動の発展の中で、アメリカ社会主義労働者党(SWP)は、その労働者の先端部分との結合を図ろうと闘争する。この時トロツキーは、過渡的綱領の適応を提起し、その不可欠な一部として労働党の形成と工場の労働者管理・労働者民兵創設のスローガンをアメリカ労働者階級に提起すべきと主張した。
このトロツキーの提起に対し、SWPの少なからぬ部分が反対を表明し、トロツキーとの間に激しい論争が生じた。反対者の論拠は「CIOの先端の労働党を作ろうとした部分は民主党のニューディール派に吸収されつつあり労働党のスローガンは急速に意味を失っている」というものであり、労働者民兵のスローガンは「ファシズムの脅威が現実には存在しないことにより現実味がない」というものであった。
これに対するトロツキーの反論は、「現実にはなくとも情勢の基本的性格がそれを要求している」というものであり、「遠からずアメリカにもファシズムの危機がおとずれそこで必ず独立した労働党の形成と労働者民兵の創設が問題となる」というものであった。
この論争はCIOが民主党ニューディール派に吸収されていき、SWPの孤立が深まり、資本主義の新しい改革の可能性を認めた一派が分裂して行く形で終わり、トロツキーの展望が崩れ敗北した形で終わった。
このトロツキーの展望の崩壊は第二次世界大戦前の世界の彼の分析のおいて唯一その展望が崩れた例である。この論争をふりかえり、トロツキーがこの問題にどのように取り組みどのような論拠でそれを主張し、そして敗北したのかを再確認することで、彼の主張の背後にある資本主義分析の問題点を明らかにしたい。
@反対意見:シャハトマンはトロツキーに真っ向から反対している。
・私は今日労働者の間で労働党を求める感情がそんなに強いとは思わない。労働党を求める感情が生まれたとしても、その大部分は、ルーズベルトの方に吸収されてしまっている。 ・・・いずれにせよ1930年を1924年と比較すれば、労働党を求める運動は現在かろうじて存在するに過ぎない。(著作集38−39下P202)
・生産の労働者管理というスローガンや労働者民兵というもう一つの過渡的スローガンを前面に押し立てるべきだとのあなたの見解は正しくないとおもうが、資本家階級の簿記の監査というスローガンは,現在の時期により適しており,人気をえることができるでしょう。他の二つのスローガンは,確かに過渡的スローガンであるとは言え、権力の獲得の準備に近づいた終点のためのスローガンです。過渡期は長い道程と短い道程を含む。道程のそれぞれの段階ごとに,固有のスローガンが必要です。(々、P210)
・労働者民兵という組織を求める感情を引き起こすようなファシズムの危機は米国にはまだ存在していない。労働者民兵の組織は権力獲得のための準備を前提とします。これはアメリカではまだ日程に上っていない(々、P208)
また、ダンも同じ状況を指摘している。
・スターリニストは進歩派や知識人の広範な層と一体になって、労働党を民主党やリベラル派の候補者との一層緊密なブロック政策の方に振り向けようとしている。・・・しかし民主党とのより緊密なブロックを阻止する点ではわれわれはぜんぜん成功してはいない。(々、P200)
A賛成意見:これに対して労働党のスローガンに賛成するキャノンは、以下のように述べる
・スターリニストは人民戦線の最初の時期にはアメリカ人民戦線として労働者党を組織せよというスローガンを掲げていた。現在ではそれは儀式的な行為でしかない。・・・CIOは政治的に組織されており、自分たちの党を求める大衆の感情はきわめて強い。(々、204)
両者の論争は、つまるところはアメリカの労働者の先端的な運動の中に、労働党を求める強い大衆の要求があるのかないのかに帰結し、労働者の要求に重きを置くキャノンとその要求を民主党との結合・人民戦線へと導こうとしている共産党の動きに重きを置こうとするシャハトマンという対立の構造となっていた。
Bこの両者の論争に対してトロツキーはどう答えたか?
・いまわれわれは資本主義の衰退期に、ますます混乱し激化する危機の時代に、そして差し迫る戦争の時代にいるのです。戦争の中で労働者は直ぐに学び取ります。われわれが待機し、見守り、それから宣伝を始めるというのであれば、そのときわれわれは前衛ではなく、後衛です。10年以内にアメリカの労働者が権力を握ることは可能でしょうか。もしあなたがこうたずねたら、私は然り、まったくありうることだと答えます。CIOの爆発は資本主義の基礎が掘り崩されたことを示しています。(々、P211)
・CIOが出現した理由は何かというと、それはアメリカ資本主義の崩壊にあります。 (中略)合衆国においては資本主義の衰退の開始は産業別労働組合を生み出しただけでしたが、それは資本主義の衰退の新たな開始にちょうど間に合って舞台に登場したのです。より正しく言えば、1929〜33年の最初の危機が組合を押し上げCIOへ結束させたと いえるのです。しかし、やっと結成されたCIOは、1937年〜38年の持続的かつ深刻な第二の危機に間に合ったのです。(中略)今や本当の組合が組織されているからには(中略)資本主義衰退の基礎の上では組合は政治活動へと向かわざるを得ないのです。(々、P217)
・過渡的要求の綱領全体についてかって言ったことを私はここでも語りましょう。問題は大衆の雰囲気ではなく、客観的情勢であり、われわれの任務は心理学ではなく、客観的事実によって決定される任務を大衆の遅れた雰囲気にぶつけることです。同様なことが、この労働党についての特殊な問題にもまさにあてはまります。(々、P218)
トロツキーは、CIO運動の発展の先に、労働者の独立した政党の結成、資本主義の衰退の状況の中で、その利害を守り、闘争を発展させ、労働者の戦いを革命へと発展させていく可能性のある政策(=過渡的綱領)を遂行する労働党の結成。この労働党が資本主義の救済を試みたルーズベルト率いる民主党の左側に建設される可能性を展望していた。そしてその根拠は、「客観的情勢」つまり資本主義の衰退期にあるというトロツキーの認識であった。ここについてトロツキーは次のように詳しく述べている。
・アメリカ合衆国の資本主義の強靭さを見て、われわれのある部分は、私自身も含め破壊的内部矛盾に対するアメリカ資本主義の抵抗力はより強く、一定の期間それはヨーロッパ資本主義の衰退を利用し,自身の衰退の前に繁栄の一時期を経過するのではないかと考えました。どの程度の期間それが続くのでしょうか。10年ないし30年と言えたでしょう。ところで、私個人は、現在の鋭い恐怖ないし一連の恐怖が次の一時期に始まり、ますます深刻化するだろうとは思っていなかったのです。そんなわけで8年前にアメリカの同士と討論したとき、私は非常に慎重だったのです。(中略)1930年に労働党の必要性を強調することは完全に衒学的で抽象的で不自然であり、そうした抽象的スローガンはわが党自身にとって有害であるとしたのです。(中略)そしてさらに新しい危機が繰り返されました。つまり、5倍から10倍も深い影響を伴った深刻な新しい危機が続いたのです。(中略)アメリカ資本主義は非常に強力であるが、しかしその矛盾は、資本主義それ自体よりも強力です。衰退の速度はアメリカ式の速度に到達し、このことがAFLでなくCIOと言う新しい組合にそって新しい勢力を作り出したのです。(中略)われわれは、客観的情勢がわれわれの以前の予測とまったく食い違ったため、路線を変更しなければならないのです。(々、P220)
つまりトロツキーは「ヨーロッパとアメリカ」た題する講演でアメリカ資本主義のヨーロッパ資本主義とは違った新しい力の源泉を分析しその新たな発展の可能性を認めた。その認識をいまや変更しなければならないと彼は述べているわけである。その客観的根拠は何か。1930年と1938年との間におきた情勢の急速な変化とは、第一次世界大戦後の混乱を終息し一定の安定を得たかに見えたヨーロッパ資本主義が1929年のアメリカに発する恐慌により崩壊しドイツでもファシズムが勝利しやがてはファシズムが全ヨーロッパを覆う可能性の強い状況。そしてヨーロッパの支配権を巡って再びイギリスとドイツとの間で戦争が勃発しそれはやがてアメリカをも巻き込み第二次世界大戦に突入すると言う情勢の急変であった。
いまや旧資本主義ヨーロッパの危機の構造は新資本主義アメリカをも巻き込み、資本主義の衰退の新たな段階が始まったとトロツキーは認識していたわけである。
Cトロツキーのアメリカ資本主義認識
進行しつつあるニューディールについてのトロツキーの認識にも同様な性格が見て取れる。
・歴史的にその破滅を運命付けられた資本主義を救済する二つの方法、つまりファシズムとニューディールが、今日そのすべてをあらわにして、世界の舞台で相互に争いつつある。ファシズムはプロレタリアートの階級闘争の機先を制するために、労働者諸組織の破壊、社会改良の絶滅、民主的諸権利の完全な否定をその綱領の基礎においている。ファシスト国家は、国家と人種ー腐朽していく資本主義がこのあつかましい名目をつけて現れるーを救うという名目の下に、労働者の地位の下落や中間階級の窮乏化を公式に合法化している。
ニューディール政策は、労働貴族と農民貴族に餌を与えることにより、帝国主義的民主主義を救おうとしており、だいたい非常に裕福な国家にのみ可能な政策であり、したがってこの意味で優れてアメリカ的政策である。アメリカ政府は独占資本家たちに対して、賃金引き上げ、労働日の短縮をやり、かくして国民の購買力を増大させ生産を拡大させるように勧告し、この製作の費用の一部を独占資本家に肩代わりさせようとしてきた。
・ニューディール自体は、過去の世代によって蓄積された膨大な富の存在によってのみ 可能であった。きわめて裕福な国家のみが、こんなぜいたくな政策に浸ることが出来るのだ。しかし、このような国家でさえ、無制限に過去の世代を犠牲にして生活していくことはできない。ニューディール政策は、その偽りの業績と国債の非常な増加のために、獰猛な資本家の反動と帝国主義の荒廃的な爆発を不可避的に生み出すのだ。言い換えれば、ニューディールとは、ファシズムの政策と同じ経路を指向しているのである。(「現代のマルクス主義」著作集1938〜39下、P253〜254)
トロツキーは明確に述べている。アメリカでさえ資本主義の衰退の趨勢には逆らえない。なぜならその世界化は、資本主義世界のすべての矛盾をアメリカ資本主義の中に、その爆発の要因として持ち込まざるを得ない。ニューディールはつまるところファシズムと同じところへ行き着き、それは新たなる世界戦争へ導く。したがってその戦争を内乱へと導く政策が必要とされるアメリカにおいて非常に小さな労働者階級に大きな影響を及ぼし得ないSWPは、労働者階級に対して労働党を作るべきことを要求し、その綱領として過渡的綱領を受け入れるように要求すべきとトロツキーは提起したのである。
以下略
インターナショナルMELT 研究ノート
http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/note/note1-5.htmより抜粋
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