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JMM [Japan Mail Media]  「五年の歳月」 『from 911/USAレポート』 冷泉彰彦 
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投稿者 愚民党 日時 2006 年 9 月 18 日 04:46:04: ogcGl0q1DMbpk
 

                             2006年9月16日発行
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JMM [Japan Mail Media]                No.392 Saturday Edition
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                        http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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  ■ 『from 911/USAレポート』第268回
    「五年の歳月」

 ■ 冷泉彰彦   :作家(米国ニュージャージー州在住)

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 ■ 『from 911/USAレポート』第268回
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「五年の歳月」

 今年の「911」の行事は昨年や一昨年に比べて位置づけが大きくなりました。日
本の仏教の間で三回忌や七回忌が大事にされるように、アメリカでも「五周年」を一
つの区切りとするというのが主な理由ですが、昨年のようにハリケーン被災というよ
うな「直前の問題」がなかったという要素も大きかったように思います。

 では、今年の「911」は「純粋な追悼」だったのでしょうか。とんでもありませ
ん。他でもない中間選挙を前にして、多くの政治家には「反テロ」の問題で世論の点
数を稼ごうという思惑があり、彼等の言動はそうした思惑に直結したのは明白です。
例えば、2年前の2004年の「911」も大統領選挙を控えた政治の季節のまった
だ中ではありました。ですが、この年の時点では、政治的思惑を見せてしまった方が
「負け」になる、そんなムードがある種の節度となっていたように思います。

 今年の場合は5年が経過したことで、そうした節度は弱くなっています。むしろ、
一連の「反テロ」の原点として政治の判断が求められており、911を政治とは切り
離せなくなっているのでしょう。イラク問題が泥沼化する中、「イラク戦争と反テロ
戦争の評価」は重要な争点となっていますから、政治家としては「911」の五周年
に当たっての自分の言動が世論に与える印象に敏感にならざるを得ないというわけで
す。

 ブッシュ大統領が「被災現場3ヶ所の慰霊訪問」という大掛かりな行動に出たのに
は、そんな背景があります。まず、9月10日の日曜日、NYダウンタウンの旧貿易
センタービル跡地を訪れた大統領夫妻は、翌日の慰霊祭に向けて用意された人工の池
に花束を浮かべて追悼をしました。一夜明けた11日の当日には、朝のNYの慰霊祭
に際しては近くの消防署での黙祷の式に参列、午後にはペンシルベニアの「ユナイ
テッド93」機墜落現場で、更にはペンタゴンでも式に臨むという形となりました。

 大統領の行動は慰霊祭参列だけではありません。その日を前にして、TVの三大
ネットワークからのインタビューを各局ともかなり長時間受けています。NBCの
マット・ラウアーとはホワイトハウスの一室で、お互いに立って鼻先を突き合わしな
がら白熱の舌戦を繰り広げていますし、ABCのチャールズ・ギブソンとは専用機
「エアフォース・ワン」機上でのインタビュー、そしてCBSの場合は就任したばか
りのイブニングニュース初の女性メインアンカー、ケイティ・コリックが相手でした。
更に911当日の晩には、同じく三大ネットワークと、ケーブルニュース局を通じて、
17分にわたるTV演説を行っています。

 演説の内容は過去5年間の「反テロ」と「イラク開戦の正当化」を一本調子で訴え
るもので、新味は全くありませんでした。新しい内容はない一方で、語気はむしろ強
まっており「イラクから撤兵したらそれで済むというわけではありません。連中は
追ってくるに決まっています。ですから、我々の安全はバグダッドの市街戦の帰趨に
かかっているのです」という強引なレトリックで、イラク派兵の継続と本土の安全を
結びつけていました。この部分などは、例えばNBCのティム・ラサートあたりから
は「説得力に乏しい」と酷評されています。

 大統領の「五周年」戦略は非常に単純でした。この演説ばかりでなく、一連のイン
タビューでもそうですし、先週の「CIA秘密基地におけるテロ容疑者の超法規的拘
留」を認める発言も、そして10日の日曜日に話題を呼んだチェイニー副大統領のT
Vロングインタビューもそうですが、「既定路線を一切変更しない」ことを強く打ち
出し、「五周年」の厳粛な雰囲気を追い風に、自身の「反テロ」路線の支持を得よう
というのです。

 このホワイトハウスのPR戦略はかなり徹底したものでした。例えば、ABCを追
われて「ディスカバリー・チャンネル」というケーブル局に発言の場を得た、ベテラ
ン・ジャーナリストのテッド・コペルに対して司法省とホワイトハウスは詳しい取材
に応じています。テーマは「反テロ戦争、テロ容疑者への拷問」の合法性に関してで、
ゴンザレス、アッシュクロフト二代の司法長官の下で「合法解釈」の「組み立て」に
注力した実務官僚の生々しい発言が放映されたのです。

 ですが、その内容も「現路線の正当化」を徹底したものでした。大統領が911の
直後に、これは「戦争だ」と断言したのを受けて、事務方は「国家以外の集団に対す
る国家の戦争」を正当化する理論武装をしたのだと言います。また、グアンタナモに
おけるテロ容疑者の超法規的収容、更には国内における捜査令状のない盗聴行為など
も、「危険への防御」という「事実」が「もはや古くなった表面的な法体系に優先す
る」という論理で正当化されるというのです。

 この司法省官僚の姿勢、そしてTVインタビューでのブッシュ大統領の姿勢は一貫
しています。例えばマット・ラウアーは「テロ容疑者への水責め」は合法なのかを、
ブッシュ大統領の鼻先5センチに顔を近づけて迫りました(先ほどお話した「立った
まま」のインタビューです)。

ラウアー:モハメド被告に対する水責めというのは本当ですか?
大統領 :証言を得るための「テクニック」についてはお答えできません。
ラウアー:では仮に「水責め」があったとしたら、それは合法なんですか。水責めと
     いうのは溺死の恐怖を与えて証言へ誘導するものでしょう。これは拷問で
     すよ。
大統領 :テクニックの話にはお答えできないが、全て合法の範囲です。だが、理解
     して欲しいのは仮にテロ計画が本当にあるとしたら、可能な手段は全て動
     員して情報を引き出さなくてはならないということなんです。
ラウアー:待ってくださいよ。仮にそのテクニックが(この部分では、大統領が「テ
     クニックの話には乗らない」と遮ると、ラウアーは「個々のテクニックの
     話じゃありません」と押し返す問答がありました)合法なら、どうしてC
     IAの秘密基地や、グアンタナモが必要なんですか?
大統領 :それはですね。(と落ち着いたトーンで親密さを強調して)あなたや、あ
     なたの家族を守るために必要なんですよ。今は戦争なんです。戦争におい
     ては、一番確かな情報は戦場で捕まえた人間の口から情報を引き出すこと
     なんですよ。

 違法か合法かと聞かれれば「合法です」と言う。その一方で「安全のためには何で
もしなくてはならない」とも言う。手段の合法性を問おうとすると「手段は秘密だか
ら話せない」と言う。大統領も司法省も全く同じパターンなのです。

 最近の、とりわけブッシュ政権が「カトリーナ」で支持率を下げて、民主党に政治
的攻勢を許して以来、政権と民主党の間では、こうした「反テロ対策における非合法
性」の論争が激しくなっています。この論争に関しては、最高裁を含むワシントンで
は大統領側が劣勢となっています。そこで、今回の「911」を契機に、世論に対し
て改めて「自分たちは強硬論で一貫している」と訴え「民主党はテロリストを擁護し
ており、アメリカ市民の安全の敵である」というプロパガンダを浸透させようという
のでしょう。

 では、大統領夫妻の「グラウンドゼロ献花」は、どうして「その前日」の9月10
日に行われたのでしょうか。それは、慰霊祭を主催しているNY市当局が「式典の政
治利用」を批判されるのを恐れたからでした。ここまでお話したように「911と政
治の結びつき」について、封印が解けてしまった事態を受けて、それでも、いやそれ
だからこそ、「当日の慰霊祭」に大統領が登場するのはあくまで「困る」ということ
のようです。2004年の慰霊祭にはチェイニー副大統領の参加申し入れを拒んだと
いう前例もありました。

 結果的に、ブッシュ大統領夫妻は「その時間」には「グラウンドゼロ」にほど近い、
フォートピット消防署の前で、被災した消防車の焦げたドアの横に立って黙祷に参加
するという異例な事態となりました。その大統領は、8時46分の北棟での衝突時刻
の黙祷から、9時3分の南棟での衝突時刻の黙祷まで、その色あせた消防車のドアの
横で、身じろぎ一つせずに立ち尽くしていました。もっとも、その夫妻の様子を律義
に放映していたのは、FOX(地上波)とケーブルのFOXニュースだけでしたが。

 一方で、ホワイトハウスでも8時46分の黙祷があったのですが、閣僚と主要な職
員が庭に集まる中、チェイニー副大統領とリン夫人、そして何故か英国のマーガレッ
ト・サッチャー元首相が一緒でした。ただ、こちらは一回だけの黙祷でさっさと終
わってしまいましたが、それはサッチャー女史の健康状態を気遣ってということを口
実にしているようにも見えました。副大統領自身も顔色が悪く精彩を欠く印象でした。

 さっさと終わったといえば、NYの各ローカル局が3時間半にわたる犠牲者の氏名
読み上げを例によってぶっ通しで放映していた一方で、NY以外の「全国編成」では
三大ネットワークともに特番は1時間程度で打ち切って、ABCのフィラデルフィア
などは10時からはソープオペラを流していました。こうしたあたりには、NYと他
の地域の意識の差と5年の歳月を感じずにはいられません。

 さて、その犠牲者氏名の読み上げですが、直後の2002年はジュリアーニ前市長
以下の要人が担当し、その後は、遺児や犠牲者の親などが順にやっていました。今年
は五周年ということで、初めて「犠牲者の配偶者、パートナー、および極めて近い関
係の人」が順に二人組になり、それぞれが10名程度の読み上げをした後に、自分の
パートナーへのメッセージを読むということになったのです。

 冒頭お話した「五周年」という重さを表現することと、配偶者たちもそろそろ気持
ちの整理がついて公衆の面前で話すこともできるという判断だったのでしょう。事情
としてはそうなのですが、結果的にこの演出は、実にエモーショナルなものになりま
した。何人かの人は、自分のパートナーへのメッセージを読むところで泣き崩れてし
まい、もう一人に抱きかかえられるようなシーンがありました。映画『ワールド・ト
レードセンター』(オリバー・ストーン監督)でも、同様のシーンがありましたが、
本物の涙を見てしまうと、やはりあれは虚構だということが思い起こされました。

 音楽もクラシックとジャズなどから注意深く選ばれており、4回の黙祷の後には厳
粛なメロディーになり、少しずつ明るくしていって、次の黙祷があると再び厳粛に戻
すという演出です。私には、10時過ぎだったでしょうか、ベートーベンの弦楽四重
奏(作品130)から『カバティーナ』が取り上げられていましたが、これには心を
かき乱されました。長いこと強い音楽だと思っていたのですが、この楽章は気持が支
えられないほどの悲愁に満ちたエレジーだと知らされました。

 反対に、10時半ごろには、ウィントン・マルサリスのトランペットによる『オー
バー・ザ・グローリーランド』という曲の演奏があり、こちらには逆に慰められた思
いでした。ブルームバーグNY市長、パタキNY州知事、コーザインNJ(ニュー
ジャージー)州知事などのスピーチも政治色がなく簡潔なものでしたし、全体的には
静かな良い追悼式でした。ですが、いくらNYが悲しみを新たにしていても、現場を
離れれば朝の10時からソープオペラを見ている人が大勢いるわけで、いくら「91
1五周年」といっても、人々の受け止め方は違います。また、追悼式が厳かであれば
あるほど、政治の場での対立は醜悪なものとして浮かび上がります。

 その911の晩、人もまばらになった「グラウンドゼロ」からは、MSNBCの
キャスター、キース・オルバーマンが8分間にわたって、自分の感想をTVの画面に
ぶつけていましたが、それは正に政治利用への怒りでした。「私は事件で4人の友人
を失いました。2人は激突した飛行機に乗り合わせており、後の2人はビルの中でし
た。私はこの場所に来るたびに、4人の身体を空気の中に感じるのです。でも、私の
背後にある巨大な空洞は何なのでしょう。事件から5年経って、まだ失われたものの
再建ができないのは何故でしょう。これでは、戦わずしてテロリストが勝利している
ようなものです」

 というふうなエモーショナルな言葉から始まって、「大統領、私はあなたが許せな
い。大統領の身でこの事件を党利党略に使うのは絶対に許せないんです」と厳しい語
調で責め立てていました。内容的には、具体的な提案がある訳ではないのですが、そ
の歯切れの良さは大きな反響を呼んでいます。

 では、具体的に民主・共和両党の党勢はどうなのでしょう。「五周年」の翌日にな
る12日の火曜日はいくつかの州で中間選挙の候補を決める予備選がありました。そ
の結果、ロードアイランド州では共和党の候補として、党内きっての反ブッシュ議員
であるリンカン・チェイフィー議員が保守派候補との接戦の末、共和党候補の座を守
りました。また、NY州の民主党では、二期目を目指すヒラリー・クリントンが、反
戦派の労組系候補に対して圧勝しています。

 では、両党共に中間派的な人間が前面に出てきたのでしょうか。であれば、具体的
な政策も前へ進もうというものです。ですが、実際はそう単純ではないようです。選
挙予測の神様と言われる、NBCのティム・ラサートが13日に解説していたところ
では、両党のムードは最悪だというのです。まず民主党はイラク問題で分裂していて、
三分の一は議会による戦費カットで強引に撤兵という案、三分の一は駐留継続、三分
の一はその中間という渾沌状態なのだそうです。共和党も分裂状態で、ブッシュと心
中が半数、半数は反ブッシュというムード。チェイフィー議員のような「極左」を
「選挙に勝てれば」という理由で共和党の全国委員会が押したのは象徴的だというこ
とでした。

 ラサートが強引に予測したところでは、上院は共和が辛うじて維持するが、下院は
民主が多数を占めるというのです。ただ民主が大勝するかは全く予想できないそうで、
具体案のないことで総崩れもあるし、ブッシュがズルズル支持を失うこともある、こ
れからの50日間には何が起きるか分からない、ということでした。

 14日になりますと、CIA秘密収容所問題や、現在は超法規的に拘束しているテ
ロ容疑者向けの特別法廷設置へ向けて「法案整備」の動きの中で、大統領と議会が衝
突しています。捕虜虐待を禁止したジュネーブ条約(戦時国際法)に「具体的な解釈」
を与えて「プロフェッショナルが必要な尋問を合法的に行えるように」法律を整備す
るというのが大統領提案なのですが、これに議会共和党が真っ向から噛みついた格好
になっています。

 また異例なことなのですが、前国務長官、元統合参謀本部議長のコリン・パウエル
が「退役陸軍大将としての書簡」を公表し、この大統領案に反対を表明しています。
「私は反テロ戦争の倫理的背景が諸外国の疑念を招くことを恐れる。また、戦争捕虜
への尋問行為の正当化はアメリカがジュネーブ協定を軽視しているという印象を与え、
将来我が国の軍人が敵国の捕虜となった場合に生命の危険を増す可能性がある」とい
う筋の通った意見書なのですが、ホワイトハウスのスノウ報道官は「(パウエル氏は)
何か勘違いをしているのではないか」と黙殺の構えです。議会の方では、ジョン・マ
ケイン議員(共和)が、ベトナム戦争の際に捕虜となった経験から、パウエル氏以上
の激しい姿勢でブッシュ大統領を非難しています。

 というように、「五周年」が終わると同時に、政争は激しさを増しています。この
政争の行方ですが、MSNBCの「ハードボール」という政治討論番組の中で、ホス
トのクリス・マシューズが、ワシントン支局長のローラ・オドネルと対談をしながら
言っていたのですが、2ヶ月弱に迫った中間選挙では史上空前の「ネガティブ・キャ
ンペーン」が飛び交いそうだというのです。「これだけ対立が激しいと、もう基礎票
は絶対に動かない」のだそうで、そうなると理論的に中傷が効果を発揮するのだ、そ
んな理屈だそうです。

 例えば、ロードアイランドの予備選でチェイフィー候補が共和党全国委員会の支援
を得て勝っていますが、これは「要するにこの州では、反ブッシュでないと勝てない。
とにかく上院の過半数を死守するためには共和党としてはなりふり構わない」という
ことだったそうですが、具体的には共和党内部で「反ブッシュ、反保守派」の、ネガ
ティブキャンペーンが張られたのだそうです。

 そして、この動きは11月へ向けて全国に広がりそうだというのです。保守派から
リベラルには「アイツはテロリストの味方」という罵声が、逆に保守派候補には「イ
ラクでの米兵がまた殺された。これはテロ対策とは無関係な死だ。それでもブッシュ
を支持するのか」というような見る人間にイヤな気持ちを起こさせるTVコマーシャ
ルがタレ流されるのだというからやり切れません。

 女性記者のオドネルは「小さいお子さんのいる家庭は、当分11月まではTVはい
つもDVDを流すしかなさそうですね」と呆れ顔でした。いずれにしても、ブッシュ
の政策は余りに硬直化してそのまま立ち往生しそうな気配でありながら、民主党や共
和党内の反主流派の側からは、具体的で有効な政策提案は出ていないのです。そうし
たお粗末な状態のままで、政争だけがエスカレートする、そんな事態が進行している
と言って良いのでしょう。

 どんな政争でも決着がつけば実務は回るという考え方もあります。ですが、今回の
問題は、民主共和の両党ともに、臆病で孤立主義的な心情におもねるだけで、改めて
他国を理解し、他国と話し合い、和解と繁栄を模索しようというのではないのです。
民主党はいまだに「対テロ」と称して港湾貨物の全件検査を主張していますが、これ
も恐怖心を労働機会の拡大という利権と結びつけようという後ろ向きの思惑が見え隠
れしています。

 その一方で、フォード自動車などはほとんど自壊のプロセスに入っており、株式の
非公開化を進めながら労組系の労働者を全て切り捨てて、9つの工場を閉鎖、時間給
中心で工場が回るようにするというムチャな合理化を今週発表しています。テロ問題
と自動車産業では構造に違いがありますが、独善が自滅を招く回路に入っていること
は共通です。フォードの場合、新たな付加価値を創造できなくなったことへの反省は
そこにはありません。言い換えれば、消費者へのメッセージが発信できなくなってい
ることに気づいていないのです。

 つまりは一種の「アメリカ病」とでも言うべき事態が進行しているのでしょう。か
つてアメリカが世界に向けて発信していたメッセージ、つまり自由と民主主義が繁栄
をもたらすというメッセージが発信できなくなっているのです。パウエル氏の提言の
持つ意味は、テロ容疑者の処遇問題を越えて、アメリカが世界と改めてどう関わるか
を問うているのでしょう。スノウ報道官は、そのインパクトを理解しているからこそ
回答から逃げたのではないでしょうか。キース・オルバーマンが言うように、五年の
歳月を経て「911」は巨大な空洞を残しました。ですが、その空洞はアメリカ自身
が作ったものなのかもしれません。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大
学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わった
か』『メジャーリーグの愛され方』。訳書に『チャター』がある。
最新刊『「関係の空気」「場の空気」』(講談社現代新書)
<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498444/jmm05-22>
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【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】   <http://ryumurakami.jmm.co.jp/>
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