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2003/3/9:ナトリウムとは?
「天文年鑑」はもう一回分遅らせます。
これを取り上げるのは、少し前に「もんじゅ」の判決が出されたためです。
私の専門に近い「原子力」ですが、核分裂炉(ひいては高速増殖炉)の理屈や意味については今後の楽しみとして、事故に繋がった「ナトリウム」を取り上げたいと思います。
ナトリウムは普遍的に存在する物質で、地殻における存在比はクラーク数2.63で上位(6位)にあります。
私たちの生活にも深く関わっている成分で、とりあえず「塩(塩化ナトリウム)」が挙がってきますが、この他にもナトリウム塩は多数存在します。ナトリウム(正しくはナトリウムイオン)が多すぎるのは体によくありませんが、欠乏は生命の危機を招く大事なものでもあります。
さて、「もんじゅ」のナトリウムは、ここに挙げたナトリウム塩とは趣を異にします。
元素は、それのみで存在する場合もありますが(気体の水素、液体の水銀、固体の炭素や銅など)、電子をやりとりしたイオンの状態をとることが多くなります。この他、化合物としても存在しますが、電子をやりとりしていることを考えるなら元素のみ(この状態を「単体」といいます)ではなくイオンの一種と考えなければなりません。
この基準で考えるなら、身近なナトリウムは全てイオンに当たります。
ところが、「もんじゅ」のナトリウムは「単体」なのです。
ナトリウムの単体(すなわち元素)としての性質は、普段のイオンからは想像もできないものです。
ナトリウムは軽金属に当たります。通称「アルカリ金属」のひとつです。
元素状態が保たれていると、金属ということで電気も通します。この「元素状態が保たれていると」が曲者です。
金属状態のナトリウムは、石油中で保存されます。おかしなことをするものですが、これはやむを得ない理由があります。
水と空気に曝せないのです。
空気(正しくは酸素)と触れ合うと、激しく反応して酸化物を生じます。
4Na + O2 → 2Na2O (一般的な反応式)
言葉で「激しく」と書くと解りませんが、かなりの燃焼を伴います。
水と触れ合うと、爆発的に反応して水酸化ナトリウムを生成します。
2Na + 2H2O → 2NaOH + H2↑
この反応は気体生成を伴うこともあり、条件によって爆発的に進行します。冗談ではなく爆発させることも可能です。
また、生成物が危険でもあります。水酸化ナトリウムの高濃度溶液は、化学の知識がないと取り扱えません。水素は常に爆発の危険を伴います。
(詳しい情報はこちらをご覧になるといいと思います)
そろそろ賢明な諸氏は(化学の知識がなくとも)理解されていることと思いますが、ナトリウムが漏れるということは、湿った空気(つまり水と酸素が豊富な雰囲気)に曝されるということです。下が鉄板であろうとなかろうと、危険なものには変わりありません。
無論、考えもなしにナトリウムが使用されているわけではなく、液体ナトリウムという熱担体の優位性が大きいことは忘れてはいけません。
ここからは、偉い人たちの判断になります。
何かを犠牲にしなくてはいけません。
お金をかけて防止策を充実するか。
熱効率に目を瞑るか。
プルトニウムをこの用途に使うのを諦めるか。
ナトリウムの話からプルトニウムへいくのはなんか違うので詳しいことは言いませんが、プルトニウム239(原発でできるもの)は核エネルギーはよいのですが、他の用途には使えそうもないものです(核兵器という答えはなしで・・・)。
そこで出てきたのが混合燃料にする方法で、普通の燃料棒に混ぜてしまいます。これは普通の原発で使用できます。
さてここで、未来のことも考えます。未来のエネルギーって何でしょうか?
夢物語の反物質から、技術は今でも存在する太陽電池まで、候補は多数にあります。
一般生活のレベル以外のことを考えると(それなら太陽電池でも将来実用に耐えるでしょう)、エネルギー密度の大きいエネルギーは限られます。前回の話ではないですが、宇宙を見据えるなら尚更です。
そうなると、原子核のエネルギーを用いるものが優勢になります。核分裂、核融合、反粒子による対消滅の順にエネルギーは増大します。科学は少しずつ、そうした技術を目指しています。
けれども、これらを地上でやってもいいのでしょうか?
私の恩師は、「原発はないに越したことはない。しかしながら現在はやむを得ず使っている」と言いました。これが専門家の意見だと考えていいでしょう。逆に言えば「止めるに値する状況にもない」と受け取れます。
私個人は、火力で代替するくらいならば、この方がまだましかと思います。この意味で、代替エネルギーの開発は急務なのだと感じます。
ちょっと逸れますが、自然利用の代替エネルギーは、本当にいいのでしょうか。
大きなエネルギーを例えば風力から取り出すようになったら、大気循環のエネルギーを無視できないほども奪ってしまわないのだろうかと思えます。現在、人類は膨大なエネルギーを使っているのですから。万一1%も奪ってしまったら、大変なことになるかも知れません。
これは太陽電池でも同様かと思います。
戻りますが、私は高速増殖炉の技術というものが「未来にありそうなことをいち早く体現しようとしたもの」と捉えています。
未来にあるべき技術力でならば、今の日本の原発程度(或いはそれ以上)に安全であるでしょう。
恐らくそのときには、金属ナトリウムは使われないか、地上ではない空間での稼動が行われるかすると考えられます。
危険な金属ナトリウムの使用は、未来の技術を現在に手繰り寄せようとした結果、理論上可能であることが実現できると信じて行われたのでしょう。
科学に興味があるものは、先へ進むことを評価してしまいます。
でも、裏付けがないとしたら・・・それは単なる実験です。「もんじゅ」は実験ですが、命に関わることをするならば、裏付けぐらいのものは必要だったのではないかと思います。
追記
私は、「もんじゅ」は立ち直らないと思います。形を変えて進むことはあるでしょうし、その可能性は少なくないです。
でも、高速増殖よりも安全で、見劣りしないエネルギー供給法が発見できるなら、未来に(一般人が使用するエネルギーとしての)原子力は不要となるのですから。
(散々けなしてしまいましたが、どこかで原子力のいいところも触れたいです)
2003/2/2:スペースシャトルの事故について
最初は「天文年鑑」という書物から話題を取り出すつもりでしたが、大事件が起こっていますので、急遽そちらを少し触れようかと思います。
それはコロンビアの空中分解です。
詳しいプロセスなどは現在わかっていませんし、これについてきちんとした言及ができる人はいないでしょう。
しかし、この時点でも予想はできるほどの情報があります。
私的に解釈すると、打ち上げ時の損傷が大き過ぎたため、再突入に耐えられなかったということに思えます。
打ち上げてしまった以上、降りてこなくてはならないわけで、修復が可能であったかは判断しかねるとして、その選択は現実には取れなかったでしょう。
では、どこで防止するべきだったかと言えば、打ち上げ時の損傷を防止する対策を十分にとることで防止するのが正しい思考法でしょう。
一般の品質管理などでも、原因を追究してそれを消し去るのは、是正処置の基礎です。
ISO規格の要求に沿って言うなら、今回は予想された(関係者は以前から承知している問題点だった)氷の付着という打ち上げ時の現象に対して、予防処置が執られていないことがこの事故を招いているということでしょう。
個人的には「防げる」事故と思われてなりません。
宇宙開発はわくわくする分野です。
多くの人の夢や希望を乗せるだけのものを秘めています。
これから人類が本気で宇宙に出ようと考えるなら、これに万倍する犠牲は避けられないように思えます。
それで、人類はどうするでしょうか・・・。
私は、それでも進むと思います。
でも、それなら・・・人類はそうした挑戦者たるにふさわしい世界にいなくてはならないでしょう。
今の当事者はアメリカです。
でもこの国は、他にしなければならない余計なこと(国家の維持には直接関係のないこと・・・戦争など)を抱えています。
挑戦者たるには、精神的に(もちろん、かつ技術的に)もっと成熟した社会を持たなければならないと、事故後の報道を見ると感じます。
個人的なことを言いますと、宇宙を舞台にしたSFなどはとても面白がって読めるのですが、今の人類にこうした作品群の世界を生きるのはまだ早いと思わずにはいられません。
私が生きている間(一応50年後くらいまで)に、人類は宇宙をその手にすることができるでしょうか?
これはなかなか、答えが出ない命題ではないかと思うのです。
参考用リンク:NASA日本語公式サイト
http://www.spacelan.ne.jp/~yyoshimoto/science.htm#2
素朴な疑問。どうして爆発エネルギーばかりを研究するのか。そして第二に、どうしてそんなに満州に進出したがるのか。やはり、岩崎か?
電荷が0に近くなると、効率的に電流を流せる。つまり、冷却させながら(絶対温度4度)でないと宇宙への道は閉ざされたままだと思う。
リード線を編み出してるんだから、水素を電磁気にして、対流させるようなエンジン開発するというのは?いやはや面白い。
つまり、ボディを冷却させて、内部との温度摩擦から生じた水素とロケットが一体となる。対流型の雷装置は完成させてるんだから、あと一息だ!
爆発させないように、常にボディを氷点下にさせてなきゃダメですけどね。この場合。
水素って発酵するとエタノール(アルコール)になるんですかね。
やっぱ、税金入れてる以上、説明責任は必要だと思いますけどね。
国債使っていたら、国民の資産なんですよね!!
オウム回収してください。(笑)
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