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美術市場における複製の歴史的意味  【DESIGN IT! w/LOVE】
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投稿者 愚民党 日時 2006 年 6 月 01 日 06:02:23: ogcGl0q1DMbpk
 

(回答先: 東郷青児賞の作品も酷似・芸術選奨の和田氏 [日経/共同] 【すべてスギ氏の了を得ている】 投稿者 white 日時 2006 年 5 月 31 日 17:12:38)

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2006年01月13日
美術市場における複製の歴史的意味
 
先ほどのエントリー「Web2.0時代の複製と著作権」を補足する為に、美術カタログを美術品の描写の歴史を見てみたいと思う。
参考にするのは、『美術カタログ論 記録・記憶・言説』(島本浣著)だ。

島本氏によれば美術カタログの歴史は17世紀にまで遡ることができる。美術カタログとは、競売カタログ、美術館の展示品カタログ、展覧会カタログ、そして画家のカタログ・レゾネ(作品総目録)などの呼称である。このうち、競売カタログと展覧会カタログを除いては、19世紀後半までカタログの名が書籍の表題につけられることはなかったという。

カタログの起源とも言えるのは、王族や貴族などの所有財の記録としての財産目録である。17世紀になり、相続者が故人の財産を売りに出すようになった時、財産目録は印刷されるようになり、目録はカタログになったという。
目録が単に数えられるものであったのに対して、カタログはある秩序によって分類することで、集積された財を表象する。つまり、カタログによる表象によって財は売り物になるのだ。

美術品が売り物として取り引きされるのは、フランスで競売カタログが飛躍的に発展した18世紀にぴたりと一致する。つまり、基本的に一点物である美術品が売り物になるためには、それを表象するカタログが複数部印刷されることで市場に美術品の表象を伝播する必要があったわけで、美術品競売という美術マーケットはまさにマーケティングツールである競売カタログと同時に発展したのだ。

しかしながら、誤解してはならないのは、18世紀のカタログに今の美術カタログのような作品の写真が掲載されていたわけではなかったということだ。それは今想像するような意味では、美術品を複製した図版によるものではない。
当時のカタログでは、絵画の主題を単にテキストによって表象していたのだ。さらに言えば、当時の美術作品にはタイトルもなかったという。美術作品を表象するものは、作品タイトルでも、複製図版でもなく、ただ単に主題を伝える文章だったのだ。
それはまだプレ複製技術時代のことだったのだ。

複製図版が美術カタログに挿入されるのが目立つようになるのはようやく19世紀後半になってからだという。つまり、それは印象派などの絵画が生まれたのをきっかけにした現代美術の時代と一致するし、ヴァルター・ベンヤミンが『複製技術時代の芸術』を書いた1930年代ともそう離れてはいない。ようするに複製技術時代の芸術が生まれたのと美術品の複製図版による表象が一般化するのは同時であるのだ。

それ以前は、絵の複製図版が制作されることはあっても、美術カタログとは別に画集や版画作品として独立した形で出版されていたらしい。それは複製図版自体が単にオリジナルの複製としてではなく、別のものとして捉えられていた傾向があるのではないかと思う。

島本氏はこのように記述する。


「複製」と呼んでしまうために、少し誤解されてしまうところがあるのだが、18世紀において複製版画は原画の単純な「写し」ではない。フランスの版画史の碩学ジャン・アデマールは複製ではなく「翻訳版画」と呼ぶが、こちらの方が18世紀の複製版画の意味合いを伝えてくれる。つまり、そのまま写したのではなく版による解釈ということである。

『美術カタログ論 記録・記憶・言説』より

ようするに、それは解釈であり、コピーではない。
だとすると、オリジナル/コピーなどの議論が展開されるようになるのも、美術カタログが複製図版をオリジナルの絵画を表象するものとして使用しはじめた19世紀後半からだと考えてよいのではないか。
また、別の見方をするなら、それは財の主体が王族や貴族から、完全に国家や資本家に移った時期であり、そこではじめて財に関する権利を守るための概念として、オリジナル/コピーの分類が必要になったのだといえる。
そして、それは単にオリジナルの権利を守るだけでなく、複製の価値を限りなく「無料」にすることでその流通範囲を広げ、オリジナルのマーケットそのものを広げる役割を担わせたのだ。大量生産の商品をマス広告によって展開するマス・マーケティングの手法など、単にそのバリエーションにすぎない。

こうした歴史を踏まえることなく、単に自明のことであるかのように、オリジナル/コピーの論争や著作権に関する議論を行っても仕方がないだろう。
18世紀後半から19世紀にかけて国家や資本家による経済が作られると同時に生まれた枠組みの範囲で、消費者の力が強くなりつつある現在から将来に向けての枠組みを論じてもまともな答えなど出るはずはないのだから。

繰り返すが、Web2.0にかけている議論、視点とはそういうものだと思う。

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