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[希望のトポス]映画『博士の愛した数式』に見る「清明な日本の風景」
信州、上田地方の春の風景が美しく温かい。そのスクリーンからまるで本物の微風が吹いてくるようだ。80分しか記憶が続かない天才数学者(博士)と清楚なシングルマザー・杏子(深津絵里)、そしてその息子(齋藤隆成)との心温まるコミュニケーションの物語。“わずか80分の温かいコミュニケーション”の記憶。しかし、翌日にはその記憶が博士(寺尾 聰)の脳裏からすっかりデフォルトされてしてしまう・・・交通事故の後遺症である短期記憶障害に苦しむ博士・・・吉岡秀隆の語りと回想シーンが物語を静かに紡ぎだしてゆく。
初めは、シングルマザーの家政婦・杏子にとって困難の連続。それでも少しずつ博士とのコミュニケーションが可能となるにつれて、彼女は博士の語る「素数、友愛数、虚数、オイラーの公式」などの数や数式に秘められた神秘的な美しさに魅了されていく。やがて、10歳の息子が一人で留守番していると知った博士は、息子も連れてくるよう杏子に約束させる。そして博士は息子がやって来ると彼を√(ルート)と名づける。
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『阿弥陀堂だより』、『雨あがる』などの監督・小泉堯史による「第1回本屋さん大賞1位」を受賞した小川 洋子の作品の映画『博士の愛した数式』を鑑賞しました。数学をテーマにしながら堅苦しさや難解なところは、まったくありません。しかも、決して多弁な映画ではなく、どちらかというと“優しい眼差しと寡黙さ”がコミュニケーションの主役を演じています。
小川 洋子の原作にちりばめられている“清明、魂、いつくしむ、敬う・・・”などの言葉が見事な“日本の風景の映像美”にデフォルメされ、加古 隆の流麗な音楽が情感を盛り上げています。
ここ数ヶ月の間に鑑賞した映画、『蝉しぐれ』(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051129/p1)、『単騎、千里を走る』(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060217)にも通じる“日本の原風景”の映画化です。是非、鑑賞をお勧めしたい作品です。
<『博士の愛した数式』の公式ホームページ>
http://hakase-movie.com/
・・・加古 隆の美しいテーマ音楽を聴くことができます。
(参考URL)http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/
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